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EU新循環経済行動計画のポイント その18
市民、地域、都市のための循環型職業創出

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
持続可能な消費と生産領域
主任研究員
粟生木 千佳(あおき ちか)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)

2016年から2017年にかけて、「EUのCE(Circular Economy)政策」について、お伺いしたIGES(Institute for Global Environmental Strategies)の主任研究員 粟生木 千佳 様に、2020年3月11日に発表されたEU新循環経済行動計画(Circular economy action plan(europa.eu))についてお伺いします。

【その18】市民、地域、都市のための循環型職業創出

前回は4.4 EUからの廃棄物輸出対策についてお伺いしました。
今回は、「5. 市民、地域、都市のための循環型職業創出」についてお伺いします。
雇用についてのチャプターがあるところがCEらしくて、楽しみにしています。
よろしくお願いします。

背景

  • 2012~2018年の間に循環経済関連の雇用は5%増加、400万人となった

廃棄物枠組み指令が2008年に改正され、家庭系廃棄物のリサイクル目標値が設定されたり、2011年に資源効率性の高い欧州に向かうロードマップが公表され、という今までのCEに関する取り組みによって雇用が増えた、という事だと思うのですが、EUの2020年の人口は4億4,732万人で日本の約3.6倍ですので日本よりも人口が多いとはいえ、400万人も増えたんですか。

日本語が分かりづらくすみません、400万人増えたのではなく、400万人に到達したということです(UK含む数字)。統計上は4,114,000人(2018年)となっています。2012年と比較しての増加分はおおよそ約32万人ですね。その数値自体は、こちらから、欧州統計局のデータベースをたどっていただけるとわかるかと思います。

Eurostatホームぺージ
MONITORING FRAMEWORK

CE政策によってCE関連の雇用が増えたというところの因果関係までは明示されていないのではっきりしたことは言えませんが、この数字自体は、リサイクル・修理・再使用に係る産業がカバーされている数字です。つまり、比較的下流側の循環産業に係る人の数が増えたということかと思います。ですので、シェアリングや再製造や従来の製造業の中で循環経済に入りうる事業など広い意味での循環経済をとらえたとしたらもう少し数が増加するのかどうかというところが個人的には気になっています。

方針と施策

  • 技能支援と雇用創出、循環経済への移行を支援
  • 技能アジェンダ(Skills Agenda)アップデート、大規模マルチステークホルダーパートナーシップの技能パクト(Pact for Skills)の設立、欧州社会ファンドプラスを通じた社会イノベーション
  • 地域レべル投資支援のためのEUファイナンス強化
    結束政策(Chosion policy)ファンド
    Just Transition Mechanism(欧州グリーンディール投資計画とInvestEUの一環)
  • EU都市イニシアチブ、インテリジェントシティーチャレンジイニシアチブ、サーキュラー都市・地域イニシアチブの提案と実施
    グリーンシティアコードでのCE主流化
  • 欧州循環経済ステイクホルダープラットフォームの継続

技能アジェンダ(Skills Agenda)アップデート、大規模マルチステークホルダーパートナーシップの技能パクト(Pact for Skills)の設立、欧州社会ファンドプラスを通じた社会イノベーション
については、わからない言葉ばかりなので、それぞれ教えて下さい。

はい、まず
欧州技能アジェンダは、個人や企業がより多くの優れた技能を身につけ、それを活用できるようにするための5カ年計画のことです。

European Commissionホームぺージ
Employment, Social Affairs & Inclusion

パクトというのは、「協定」の事なんですね。

そうです。技能パクトは、「欧州における技能開発のための共通の関与モデル」とのことなのですが、要は官民合わせて欧州市民のスキルアップのための取組を進めていくもののようです。

「公平で強靭な復興を支援し、グリーンとデジタルへの移行、EU産業・中小企業戦略の野望を実現するために、欧州委員会は、官民の組織が力を合わせ、欧州の人々のスキルアップと再スキルアップのための具体的な行動をとることを呼びかけている。」としています。

具体的には、ネットワーキングの機会の提供やセミナーの開催などを通じた知見の提供、ファイナンス等各種ガイダンスの提供などが進められるようです。

European Commissionホームぺージ
Pact for Skills

欧州社会ファンドプラスは、欧州連合(EU)が人材に投資するための主要な手段で、2021年から2027年までの期間に約993億ユーロの予算をもって、EUの雇用・社会・教育・技能政策(これらの分野の構造改革を含む)に貢献するとされています

European Commissionホームぺージ
European Social Fund Plus (ESF+)

技能支援と雇用創出、循環経済への移行を支援
は、今まで以上に?雇用創出を促進するという事なのだと思いますが、「技能支援」というのは、人の技能を支援するのですか?

具体的なスキルなのですが、欧州技能アジェンダのサイトに、欧州で成人の1/5がいわゆる読み書きそろばんおよびデジタルツールの使用に困難を抱えているという記述がありました。ですので、そういった基礎的な技能を進めていくということが想定されているものと思います。

ただ、グリーンとデジタルへの移行という言葉もありましたが、脱炭素もそうですが、循環経済への移行もデジタル化などを通じて産業振興として進めていくことになっています。すなわち産業構造も移行を通じて、変わっていくことが予想されます。そのため、行動計画内にも循環経済への移行の加速化に貢献するとありますので、循環産業に新たに就業することになるであろう人々の支援も念頭にあると考えられます。

地域レべル投資支援のためのEUファイナンス強化
 結束政策(Chosion policy)ファンド
 Just Transition Mechanism(欧州グリーンディール投資計画とInvestEUの一環)
地域レベル投資支援のためのとありますが、これは地域格差(地域による資源循環状況)是正が目的なのでしょうか?

参考)JETROホームページ
欧州グリーン・ディールに関する欧州委員会のコミュニケーション(2019年12月11日発表)(仮訳)
欧州連合日本政府代表部ホームページ
EUの結束政策の現状と今後の展望 2019年5月

そうですね、一言でいうとそういう理解でよいと思います。
「すべての地域が(循環経済への)移行の恩恵を受けられるよう」という表現が行動計画内でされているのですが、EU内においても、リサイクルを含む循環産業があり、循環が進んでいる国もあれば、埋立中心の国もあり、また、行動計画の文中では、島などにも言及されています。したがって、EU全体での循環レベルを底上げできるよう、循環を行う体制が整備されていない国が、そういった施設や制度を整備できるようお金を配分していくということかと思います。

EU都市イニシアチブ、インテリジェントシティーチャレンジイニシアチブ、サーキュラー都市・地域イニシアチブの提案と実施
 グリーンシティアコードでのCE主流化
都市に着目した取り組みは、日本では、「ゼロカーボンシティ」や「地域循環共生圏構築」等について取り組まれていますが、同様の取り組みなのでしょうか。

そうですね、取組の詳細も同様のものとは限りませんが、発想としては、都市をスマート化グリーン化していく上で、CE観点も取り入れ実施していくということかと思います。各都市レベルでまず循環の取組を進めていく必要があるということは世界的にも共通の認識だと思います。

特にこの場合の都市は、人や産業が集積する都市の事をさしているので、つまりは資源を消費する場所ということですので。パリやアムステルダム、ヘルシンキもうEUではないですがロンドンなどCEに関する戦略を策定している都市は多いですね。アンダルシアなど地方レベルで戦略をまとめている場合も多いです。

地域の循環経済ソリューションの実施を支援するサーキュラー都市・地域イニシアチブについては、運営オフィスの構築や実証プロジェクトの選定などが進められたようです。

European Commissionホームぺージ
Circular cities and regions initiative

欧州循環経済ステイクホルダープラットフォームの継続
こちらは既に行われているようなのでweb検索しましたが、うまくヒットさせられませんでした。概要について教えて下さい。

サイトはこちらです。
European Unionホームぺージ
European Cirrcular Economy Stakeholder Platform

見ていただければよいかと思うのですが、循環経済に関するイベントやプロジェクト、各国政策、優良事例、ファイナンス、各種機関が開発したCE関連のツールキットやガイダンス等の情報が網羅されているプラットフォームです。市民社会の議論、国、地域、セクターのネットワーク間の協力、専門知識、情報、ベストプラクティスの情報交換を促進することが目的とされています。

こちらを見れば、様々なプロジェクトやイベントが立ち上がっていること、各種ツールガイダンスなどが様々なレベルで開発されていることなどが分かります。
私も、よく閲覧しています。情報が多くて全部は把握しきれていませんが。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


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