一般廃棄物の「灰」事情 その3 溶融スラグ(エコスラグ)の活用事例
前回は、焼却灰からの貴金属回収(溶融メタル「メルマイン®」)についてご紹介しました。今回は、溶融スラグ(エコスラグ)由来の製品である「メルエース®」の活用事例についてご紹介いたします。
■溶融スラグ(エコスラグ)について
①溶融スラグとは
溶融スラグとは、1,200℃以上の高温条件下で無機物を溶融した後に冷却してガラス質または結晶質の固化物となったものを指します。
溶融スラグは原料の種類別に、
- 鉄鋼製造工程において副産物として発生する鉄鋼スラグと、
- 銅などの製錬時に発生する非鉄金属スラグ、
- 一般廃棄物や産業廃棄物を原料にしたエコスラグ
などに分類されます。
②徐冷スラグとは
溶融スラグは冷却方法によっても、「水砕スラグ」と「徐冷スラグ」の2種類に分けることができます。(徐冷スラグには空冷スラグも含みます。)
「水砕スラグ」は、溶融物を冷却水槽に直接落下させて急冷する方法で製造されるスラグです。形状は、ガラス質(非結晶)の粒状となります。
「徐冷スラグ」は、溶融物をヤードもしくは容器に受け、空気中で放冷または適度の散水による冷却で製造されるスラグを指します。形状は、結晶質の岩石状となります。
(参考)港湾・空港等整備におけるリサイクルガイドライン 国土交通省

③溶融スラグ(エコスラグ)の利用用途
2023年度に製造された廃棄物由来の溶融スラグ(エコスラグ)は、61万トン利用されています。用途内訳は、道路用骨材36%、埋戻し材・盛土材22%、コンクリート用骨材14%、地盤・土質改良材9%、最終処分場の覆土5%などです。

(出典)2023年度版 エコスラグ有効利用の現状とデータ集
一般社団法人日本産業機械工業会 エコスラグ利用普及委員会
■溶融スラグ(エコスラグ)製品「メルエース®」
①メルエース®とは

メルテック(株)(栃木県小山市)では、一般廃棄物や産業廃棄物の焼却灰及びばいじんを溶融処理し、2023年度は2.4万トンの溶融スラグ(エコスラグ)を製造しています。溶融物を大きな容器内でゆっくり冷却して製造しており、徐冷スラグに該当します。なお、この徐冷中に、比重差を用いて、溶融メタルと溶融スラグを分離させます。
冷却後に1m程度の溶融スラグ岩石を、10cm程度の大きさに破砕したものが、エコスラグ「メルエース®」です。
火成岩(マグマが冷却・固化した岩石)の(安山岩、玄武岩)に似た性質があります。
②メルエース®のポイント 強度と安全性
メルエース®は溶融炉内最高1,600℃の高温で溶融し、数日かけてゆっくりと冷却しているため、天然石(安山岩、玄武岩)と同じくらいの強度を持ちます。また、外見も天然石のような岩石状となります。
焼却灰の中に含まれることがある健康に悪影響を及ぼすダイオキシンは、高温で溶融するため完全に無害化されます。
また、カドミウムや鉛などの重金属類も溶融することでスラグ成分と重金属とを分離できるため、JIS規格の要件を満たした安全な製品として有効利用することができます。

(関連記事)生まれ変わる焼却灰(溶融スラグについて)
メルテック(株)で製造されたメルエース®は溶融メタル「メルマイン®」と同じく、栃木県リサイクル認定制度の「とちの環(わ)エコ製品」にも認定されています。
廃棄物もひと手間加えることで、金属や資材など安心して使える製品として生まれ変わることができます。
(メルエース®・メルマイン®は、商標登録製品です。)
(参考)メルテックの製品が栃木県公式チャンネルで紹介されました! – ニュースリリース | DOWAエコシステム株式会社
③メルエース®の活用事例
メルテック(株)では、2023年度において2.4万トンのメルエース®を製造し、近隣の再生砕石会社に販売し、路盤材、整地材、埋戻し材などの土木資材として、全量利用されています。

次回は、焼却灰の減量化サービスについて、ご紹介いたします。
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この記事は
エコシステムジャパン株式会社
伊藤 が担当しました