実務者のための土壌汚染対策法基礎 その13
自然由来の土壌汚染 その2
6. 自然由来の土壌汚染にかかる法規制
平成23年に改正土壌汚染対策法が施行され、自然由来の土壌汚染も土壌汚染対策法の規制対象となりました。これは、たとえ自然由来の汚染であっても、健康被害の防止の観点からは、汚染の状態は人為的汚染と区別する理由がないためです。
ただし、自然由来の土壌汚染は、前回(その12 自然由来の土壌汚染 その1)でご説明したように「比較的低濃度」で「対象地周辺も同様の地質が広がっている」点から、土壌汚染状況調査や措置、搬出等において人為的汚染地とは区別されます。
① 土壌汚染状況調査
地歴調査等により、当該地の汚染が自然由来であると考えられるとき、土壌汚染状況調査は「自然由来汚染調査」の内容に基づいて行います。
自然由来汚染調査の試料採取の単位区画は、30mの格子(900m2)で調査対象地を区切り、その最も離れた2地点で行います(図1)。
自然由来盛土等の汚染の場合は、盛土部分を30mの格子(900m2)で区切り、格子の中心点で試料採取を行います(図2)。ただし、土壌の汚染状態が均一であるとみなすことができる場合は、いずれか一つの30m格子内を試料採取場所とすることができます。
このように、自然由来の土壌汚染の場合は、敷地内に同質の土壌が分布していると考えられることから、人為的汚染の調査と比べて採取地点数が少なくなっています。
図1:試料採取等区画の選定と試料採取地点の設定
出典:土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン 環境省 水・大気環境局 土壌環境課
図2:自然由来盛土等の試料採取等区画の選定と試料採取地点の設定
出典:土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン 環境省 水・大気環境局 土壌環境課
② 区域指定
土壌汚染状況調査により特定有害物質の基準超過があきらかとなれば、自然由来の土壌汚染であってもその土地は指定区域となります。ただし、形質変更時届出区域のうち「自然由来特例区域」となり、人為的汚染の場合の一般管理区域よりも、工事や汚染土壌搬出に関する規制が緩和されています。
③ 土地の形質変更を伴う工事
自然由来特例区域では、形質変更を伴う工事を行うにあたり、汚染土壌がその土地の帯水層に接しても構わないという特例があります(ただし下位帯水層については汚染拡散を招かない施行方法の基準に基づく施行が望ましいとされます)。
これは、もともとその土地で同様の汚染が広がっているため、土地の形質変更を伴う工事で汚染土壌が帯水層に触れたとしても、新たな帯水層の汚染を生じさせるものではないと考えられるためと、第二溶出量基準を超えるような高濃度の汚染がないためです。
出典:土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン 環境省 水・大気環境局 土壌環境課
④ 汚染土壌の搬出
自然由来等形質変更時要届出区域から搬出される汚染土壌(自然由来等土壌)は汚染土壌処理施設への搬出のほか、自然由来等土壌利用施設への搬出が可能です。
自然由来等土壌利用施設とは
- 自然由来等土壌を土木構造の盛土の材料その他の材料として利用する施設
具体的には、- 道路法に規定する道路
- 港湾法に規定する港湾施設(臨港交通施設)である港湾道路
- 自然由来等土壌の公有水面埋立法による公有水面の埋め立てを行うための施設
ただし、「各々の区域の地質が同質であること」などの条件があります。
これは自然由来特例区域から発生する基準不適合土壌は、特定有害物質の濃度が低く、特定の地層に分布していると考えられることを踏まえ、適正な管理の下で資源として有効利用する観点で定められたものです。
【参考】
環境省ホームページ
土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン
改正土壌汚染対策法について(平成31年4月)
大阪府ホームページ
自然由来による土壌汚染の判定方法
公益財団法人日本環境協会ホームページ
平成29年度土壌汚染対策技術セミナー
法に基づくガイドラインの解説(調査編後半)
土地の形質の変更及びその留意事項
この記事は エコジャーナルサポーター
コンサルタント、ライターとして活動中
B&Gコンサルティング
藤巻 が担当しました