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実務者のための土壌汚染対策法基礎 その12
自然由来の土壌汚染 その1

1. 土壌汚染の由来による種類

土壌汚染とは、土壌中や地下水中に有害物質が基準を超え存在する状態のことをいいます。(「土壌汚染」の定義は、実務者のための土壌汚染対策法基礎1を参照)
土壌汚染対策法では、土壌汚染を由来によって種類分けをして呼び方を変えています。これは、同じ有害物質による土壌汚染であっても、由来によって汚染状態の特徴が異なり、取るべき対応にも違いが出るためです。

図1:土壌汚染の由来による種類

2. 自然由来の土壌汚染とは

土壌汚染というと、工場等から有害物質の漏洩による汚染のイメージがありますが、このような「人の手による汚染」の事実がなくても、特定有害物質が基準値を超えて検出される事があります。その土地が地質的にもともと特定有害物質を含んでいる場合です。

このように、土壌汚染が人為的な原因によるものではなく、その土地の地質に由来する場合を「自然由来の土壌汚染」といいます。

土壌汚染対策法の制定当時は自然的由来による汚染は法の対象外とされていましたが、平成23年(2011年)に改正され、自然由来の土壌汚染も土壌汚染対策法の規制対象となりました。

(参考)土壌汚染対策法の施行について(平成15年2月4日 環水土第20号 環境省環境管理局水環境部長通知)

これは、たとえ自然由来の汚染であっても、健康被害の防止の観点からは、汚染の状態は人為的汚染と区別する理由がないためです。
ただし、自然由来の土壌汚染は、「比較的低濃度である事」「該当地周辺も同様の地質が広がっている」という点から、土壌汚染状況調査や措置、搬出等において人為的汚染地とは区別されます。

また、自然由来の汚染土壌で盛土や埋め戻しを行った土地も、「自然由来盛土等」による汚染がある土地として扱われます。

図2:自然由来の土壌汚染

3. 自然由来の土壌汚染が見られる場所

土壌汚染対策法で規制対象となっている特定有害物質のうち、シアン化合物を除く重金属類は自然界にもともと存在しています。重金属類は、火山による噴出物や岩石、堆積物の中に含まれることが多いため、火山噴火物の堆積層・火山岩・鉱山・海成の堆積層などが存在する土地で見られます。

4. 自然由来の土壌汚染の特徴

自然由来の土壌汚染には、人為的汚染とは異なる以下のような特徴があります。

  1. 含まれる有害物質は、砒素、鉛、ふっ素、ほう素といった重金属類等(第二種特定有害物質。シアン化合物を除く)である。
  2. 低濃度で広範囲にわたる汚染である。

一つ目の特徴である有害物質については、自然界にもともと存在する物質による汚染であることから、検出されるのは砒素、鉛、フッ素、ほう素などの重金属類等となる点です。

二つ目の特徴である汚染の状態については、自然由来の土壌汚染がもともとの地質的な広がりであるため、対象地を含む周辺地域が広く同じ汚染状態にある点です。また、汚染濃度も比較的低い点も特徴です。

その土地が自然由来の土壌汚染に該当するかどうかは、上記の特徴の他に、土地履歴・周辺の地質状況・周辺の事例などから総合的に判断されます。

5. 判定基準

  1. 自然由来の土壌汚染の判定基準
    • 検出される特定有害物質が、重金属類(第二種特定有害物質。シアン化合物を除く)
    • 汚染の状態が、土壌溶出量基準値のおよそ10倍以内、第二溶出量基準は超えない。土壌の全量分析含有量が自然由来の目安値を超えないものであること。
    • 汚染の分布が特定有害物質の使用履歴のある場所等と関連がなく、局所的でない。
  2. 自然由来盛土等による土壌汚染の判定基準
    • 調査対象地と専ら地質的に同質な状態で広がっている、自然由来の汚染のおそれがある土壌が地表から10mまでの深さより浅い位置に分布していること。
    • 次のいずれかの土壌であること。
      • 自然由来の汚染がある場所から900m未満の移動による掘削・盛土である。
      • 基準不適合の状態が同じであることが確認された土地間で移動した土壌であること

【参考】

環境省ホームページ
土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン
改正土壌汚染対策法について(平成31年4月)

大阪府ホームページ
自然由来による土壌汚染の判定方法(土壌汚染対策法)

国土交通省ホームページ
建設リサイクル推進施策 通達・基準・マニュアル
建設工事における自然由来重金属等含有岩石・土壌への対応マニュアル(暫定版) 平成22年3月


この記事は エコジャーナルサポーター
コンサルタント、ライターとして活動中
 B&Gコンサルティング
藤巻 が担当しました

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