DOWAエコジャーナル

本サイトは、DOWAエコシステム株式会社が運営・管理する、環境対策に関する情報提供サイトです。毎月1回、メールマガジンの発行と情報を更新しています。

文字サイズ

法規と条例記事一覧 ▶︎

実務者のための土壌汚染対策法基礎 その4
平成29年の法改正について

4. 平成29年の法改正について

ここでは、平成29年に公布、平成30年と平成31年に段階施行された平成29年の法改正について説明します。

4-1. 背景

平成22年の改正土壌汚染対策法施行以降、「土壌汚染状況調査」と「土壌汚染対策措置」の実施状況は以下の通りでした。

①法第3条対象のほとんどが一時調査猶予

土壌汚法に基づく状況調査は、法改正により自主調査の申請と一定規模以上の土地の形質変更時の調査により件数が大幅に増加しました。(図1参照)


図1:土壌汚染状況調査 結果報告件数

(出典)環境省「土壌汚染対策法の施行状況と改正法のポイント」(平成30年12月)

法第3条による有害物質使用特定施設の廃止時の土壌汚染状況調査は、廃止件数の約2割にとどまり、ほとんどが一時免除(調査猶予)となっています。また、改正で新たに規定された法第14条の自主調査による申請件数は、全体の調査件数の約5割を占めており、一定の効果があったことがうかがえます。(表1参照)

表1:土壌汚染状況調査件数の内訳

②指定区域の大幅な増加

要措置区域等の「指定区域」指定件数は法改正後大きく増加し、平成21年度以降の累計指定件数は3,210件となっています。(要措置区域は約2割、形質変更時要届出区域は約8割。図2参照)


図2:区域の指定・解除件数の推移

(出典)環境省「土壌汚染対策法の施行状況と改正法のポイント」(平成30年12月)

また、区域指定された後に汚染の除去等の措置を行い、指定が解除された区域の割合は法改正後に減少しています。(表2参照)法改正前は解除の割合が53.6%、改正後は要措置区域が61.5%、形質変更時要届出区域が38.0%となっています。対策が必要な要措置区域では解除割合が増加し、対策が不要な形質変更時要届出区域では解除割合が低下しており、法改正により過剰な対策が抑制され、法による適正な管理が進んだことを示しています。

表2:区域の指定・解除件数の推移

要措置区域で行われた対策も、掘削除去の割合がやや減少しました。(平成18年度85.5%→平成22年~28年度77.6%)

4-2. 平成29年法改正のポイント

~土壌汚染状況調査に関する改正~

改正前 改正後
<法第3条関係>
有害物質使用特定施設の廃止時であっても、工場が操業中等の理由があれば、土壌汚染状況調査が一時免除される。
調査が一時免除されている土地であっても、土地の形質変更を行う場合は、事前に届出をさせ土壌汚染状況調査を行うものとする。
(900m2未満の軽易な工事は対象外)
(平成31年施行内容)
<法第4条関係>
土地の形質の変更時は、土地所有者等による届出→都道府県等による汚染のおそれの判断→調査命令発出→調査結果の報告→工事着手という流れであった。(手続きに時間を要する)
土地の形質変更の届出時に、実施した土壌汚染状況調査結果を報告することができるものとする。その場合、調査に不備がなければ調査命令は出されない。

<ポイント>

  • 形質変更がある場合は、土壌調査が一時猶予される土地においても一時猶予中の土地の土壌汚染状況を把握できるようになった
  • 土地の形質変更時の手続きの簡素化

上記の改正により、土壌汚染の可能性が高いにも関わらず汚染状況の把握が難しかった、調査が一時猶予される土地についても情報を把握することができるようになりました。また、土地の形質変更時の届け出や調査、都道府県等による汚染の確認プロセスが効率化され、迅速で正確な汚染のおそれの判断ができるようになり、土地の所有者等にとっても工事計画が立てやすくなりました。

~汚染の除去等の措置に関する改正~

改正前 改正後
措置に関する内容の届出・確認なし
  • 要措置区域内の措置内容の計画について、都道府県知事等が提出命令を行う。
  • 提出された措置計画の内容が技術的基準に適合しない場合には、都道府県知事等より変更命令を行う。
    (平成31年施行内容)

<ポイント>

  • 要措置区域における措置内容の計画提出義務
  • 都道府県等が措置計画の是正命令を行える

上記の改正により、要措置区域において実施する措置の内容が適正かどうかを、都道府県等が確認することができるようになりました。

~自然由来等の汚染の場合のリスクに応じた規制に関する改正~

改正前 改正後
人為的な汚染も自然由来等の汚染も区別なし
  • 健康被害のおそれがない(一般住民等への汚染の摂取経路がない)土地の形質変更の場合は、予め施工方法等の方針の確認を都道府県知事に受ければ、年1回程度の事後届出でよいものとする。(工事ごとに事前届出の必要がない)
  • 自然由来等による土壌汚染の場合は、都道府県知事へ届け出れば、同一の自然由来等による土壌汚染がある他の区域へ土壌を移動することを可能とする。
    (平成31年施行内容)

<ポイント>

  • 健康被害のおそれがない自然由来等の汚染地での規制緩和
  • 自然由来等の汚染土壌の同一汚染地への仮置き可能に

上記の改正により、自然由来等による土壌汚染かつ健康被害のおそれがない土地で、届出の手続きが合理化され、土地の有効活用等がスムーズに進められるようになりました。

【参考資料】

環境省ホームページ
改正土壌汚染対策法について 平成31年
土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告示、通知)
中央環境審議会「今後の土壌汚染対策の在り方について(第一次答申)」平成28年12月12日
中央環境審議会「今後の土壌汚染対策の在り方について(第二次答申)」平成30年4月3日


この記事は エコジャーナルサポーター
コンサルタント、ライターとして活動中
 B&Gコンサルティング
藤巻 が担当しました

※ご意見・ご感想・ご質問はこちらのリンク先からお送りください。
ご氏名やメールアドレスを公表する事はありません。

▲このページの先頭へ

ページの先頭に戻ります