そうだったのか!地球温暖化とその対策(12)
~温暖化対策についてのシミュレーション~
平成29年度3月に環境省の中央環境審議会地球環境部会より長期低炭素ビジョンが発表されました。
環境省ホームページ 長期低炭素ビジョンの取りまとめについて
2015年11月に採択されたパリ協定(そうだったのか温暖化(8)参照)の発効に伴い、世界各国で具体的な温暖化対策への取り組みが進み始めました。日本もパリ協定を批准しており、気候変動リスク対策のため今世紀全体を見据えた長期的な方針の作成が必要となりました。日本がなすべき役割を明らかにし、目指すべき姿を示すことを目的として、この長期低炭素ビジョンが策定されました。
この長期低炭素ビジョンの中でキーワードとなる部分をシリーズで解説しています。
前回は2℃という目標について説明いたしました。今回は、2℃に抑えるためにはどうしたらよいのかを考えるための、「温暖化対策についてのシミュレーション」について説明いたします。
シナリオ分析
IPCCの調査報告書では温暖化ガス排出量と温暖化の度合いについてのシミュレーションが行われ、ケース別にシナリオと呼ばれております。
【1】対策の実施度合と二酸化炭素「濃度」
以下の図は対策実施度合ごとの二酸化炭素濃度の予測です。
(各シナリオやRCP等については、そうだったのか(7)を参照ください。)
赤:RCP8.5は今のまま何もしなかった場合のシナリオ
紫:RCP2.6は2℃目標を達成する対策を実施した場合のシナリオ
黄・緑:RCP6.0とRCP4.5はその中間のシナリオ
図1 シナリオ別二酸化炭素濃度の予測
Jones, Robertson, Arore, Friendlingstein, Shevliakova, Bopp, Brovkin, Hajima, Kato, Kawamiya, Lindsay, Reick, Roelamdt.Segschneider, and Tjiputra, 2013:21st Century compatible CO2 emissions and airborne fraction simulated by CMIP5 Earth System models under 4 Representative Concentration Pathways.J.Climate. doi:10,1175/JCLI –D-12-0054.1in press. 2013空1900年以降を抜粋、和約
【出典】『日本の気候変動とその影響(2012版)』文部科学省、気象庁、環境省(2013年3月)
なお、2015年の二酸化炭素濃度は402.3ppmで、毎年2~3ppm上昇しています。
図2 地球全体の平均二酸化炭素濃度について
参照 環境省 長期低炭素ビジョン参考資料集
【2】対策の実施度合と二酸化炭素「排出量」
シナリオ分析によるシュミレーションをもう少し見ていきましょう。以下のグラフはシナリオ別の年間二酸化炭素排出量です。
図3 シナリオ別年間二酸化炭素排出量の推計
【出典】環境省ホームページ:IPCC 第5次評価報告書 政策決定者向け要約
青色のRCP2.6のシナリオでは、以下の事が示されています。
- 近年の二酸化炭素排出量は約40〜50Gt/年
- 2020年が年間排出量のピーク(50Gt/年未満)
- 2020年以降は減少に転じる
- 2050年には、2010年の半分
- 2100年には、年間排出量は数Gt(現状の1/10程度)
2020年を年間排出のピークにするためには、2020年までに具体的な対策が始まる必要があり、
2050年に、2010年比で半減させるためには、現在のエネルギー利用とは大きく異なった社会構造にする必要があります。さらに2100年には、年間排出量はほぼ0もしくはそれ以下にしなければならず、エネルギーを化石燃料に頼らない社会構造に転換しなければいけません。
UNFCCC(国連気候変動枠組条約)において、このRCP2.6のシナリオに基づいて、批准国は2020年までに長期的な削減目標、計画を作成するように義務付けられました。これを約束草案といいます。この約束草案で提出された削減目標、削減計画に基づいて、毎年の報告と5年毎の計画の見直しが義務付けられています。
次回は日本の削減目標について説明いたします。
この記事は
バイオディーゼル岡山株式会社
三戸 が担当しました