そうだったのか!地球温暖化とその対策(4)
~温暖化に対する世界の取り組み~
今回は、地球温暖化に関する世界の取り組みについて紹介します。
【1】温暖化問題の歴史
今までに紹介したような調査や研究はどのようにして始まったのでしょうか?
これまでの温暖化問題に関する歴史をひも解いていきます。
年 | できごと |
---|---|
19世紀後半 | アーレニウス(スウェーデン)が石炭使用増加により、二酸化炭素は増加し、気温上昇を招くと報告(こんな時代から予測されていたんですね) |
20世紀 | 特に第2次世界大戦後は、様々な国や研究機関において、地球の気象変動や温暖化について研究や議論がなされる |
1970年ごろ | 1940年代から地球全体の気温低下が明らかになり、地球寒冷化説が主流となる。原因としては、太陽活動の変化や地球の自転、公転の位置関係による太陽光入射角の変化、エアロゾルの増加による太陽光反射(エアロゾル:空気中のちりであり、太陽光を反射し、また雲形成時の水滴の核となる)などいろいろな説が唱えられた。 |
1970年代後半 | 地球の気温低下が収まり、二酸化炭素を起因とする温暖化が注目される |
1985年 | フィラッハ会議(オーストリア) 温暖化の悪影響が報告される |
1988年 | トロント会議(カナダ)温室効果ガス排出削減を採択「トロント目標」の設定。 (1988年をベースに2005年までに20%削減、長期目標は50%削減) |
1988年 | 国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」を設立。以後、IPCCが気候変動に関する調査・対策等の研究の中心となる。 |
1990年 | IPCC第一次評価報告書発表:気温上昇と海面上昇の予測が報告される。 |
1990年 | 世界気候会議(ジュネーブ、スイス)にて国際条約の必要性について議論 |
1992年 | 環境と開発に関する国連会議「地球サミット」(リオデジャネイロ、ブラジル)が開催「国連気候変動枠組条約UNFCCC」に155か国が署名。日本もこの時に署名。 |
1994年 | 「国連気候変動枠組条約UNFCCC」発効。事務局はボン。 →この条約により、締約国は、温室効果ガスの実態調査とその報告が義務づけられた |
1995年 | 第1回締約国会議(Conference of Parties:COP1ベルリン)が開催(この後ほぼ毎年開催)COP3(京都)で削減目標を定めることを目指す。 |
1995年 | IPCC第二次評価報告書発表 |
1997年 | 第3回締約国会議(COP3 京都)京都議定書を採択 先進国を中心とした国々で2008年~2012年の間に1990年比で温室効果ガスを5%削減する目標を掲げた。2005年発行。 |
2001年 | IPCC第三次評価報告書発表 |
2002年 | 持続可能な開発に関する世界首脳会議 |
2007年 | 先進国首脳会議(G8サミット)にて、地球温暖化問題が最重要課題として議論 IPCC第四次評価報告書発表 |
2007年 | IPCCがノーベル平和賞を受賞 |
2009年 | 第15回締約国会議(COP15 コペンハーゲン) 地球の気温上昇を2℃以内に抑えること、2050年までの世界全体の排出量50%減、その削減のための各国の目標(2013年以降)やそのための行動等についての取り決め。 |
2013年 | 国連持続可能な開発会議(リオ+20) 1992年の地球サミットから20年が経過し、現在までの会議のフォローアップを実施 IPCC第五次評価報告書の第一作業部会が先行報告 |
2014年 | IPCC第五次評価報告書が公開予定 |
このように100年以上前から、報告のあった地球温暖化について、国際協力の下で各国において科学的知見が集約されています。それに加え温暖化の原因と疑われる気候変動や生活環境の変化を通じ、国際機関のみならず、各国においても様々な取り組みがなされています。
年表中でポイントとなる出来事をもう少し細かく紹介していきます。
【2】IPCCの設立
1988年、国連環境計画(UNEP:the United Nations Environment Program)と世界気象機関(WMO:World Meteorological Organization)が「気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)」を設立しました。
本部はジュネーヴ(スイス)にあり、内部には3つの作業部会(WG:Working Group)と1つのタスクフォース(プロジェクトチームのようなもの)が存在します。構成員は各国政府から推薦された研究者が参加しています。設立目的は、これらの研究者によって得られた研究成果・知見を定期的にまとめ、公表することで、国際的な気候変動政策の決定に利用するためです。
2007年に公表された第四次評価報告書には、130ヵ国を超える国から450名を超える代表執筆者と800名を超える執筆協力者に、2,500名を超える専門家が査読者として参加しています。
組織 | 役割 |
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第1作業部会 | 気候変動に関する科学的評価 |
第2作業部会 | 気候変動が与える影響評価 |
第3作業部会 | 気候変動抑制のための対応評価 |
国別温室効果ガスインベントリ・タスクフォース | インベントリ作成(≒各国のデータの統計)の監督 |
以後、IPCCが気候変動に関する調査・対策等の研究の中心となり、1990年にIPCC第一次評価報告書を発表し、気温上昇と海面上昇の予測など、気候変動の脅威についての報告がされました。その後も第四次評価報告書まで発表し、第五次についても、2013年に第一作業部会が先行して報告がなされました。
評価報告書 | 発表年 | 主な内容 |
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第1次評価報告書 | 1990 | 「生態系や人類に重大な影響を及ぼす気候変動の可能性」と警告 |
第2次評価報告書 | 1995 | 「気候変動は取り返しのつかない状況」と言及 |
第3次評価報告書 | 2001 | 「人間活動が過去に例をみない気温上昇の原因」また、「その緩和策の重要性と有効性」を報告 環境省ホームページ:IPCC第3次評価報告書について |
第4次評価報告書 | 2007 | 「人間社会に及ぼす被害の予測」や「温暖化への早急かつ大規模な緩和策の必要性」を報告 環境省ホームページ:IPCC第4次評価報告書について |
第5次評価報告書 | 2014 (予定) |
「気温や海面の上昇等についての具体的な予測」などを先行して報告 環境省ホームページ:IPCC第5次評価報告書について |
このようにIPCCは、世界の気候変動政策に大きな影響を与える科学的知見を提供する機関としての役割を担っています。気候変動問題においては、まだまだ明らかでない点や不確実な点が多く存在するため、予測される悪影響に対して、それを緩和する予防的アプローチの原則に基づいて活動しています。
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)
(UNFCCC:United Nations Framework Convention on Climate Change)
IPCCの第1次評価報告書から気候変動の脅威に各国が協力して取り組むための国際条約として、1992年に国連気候変動枠組条約ができました。
この条約は、温室効果ガス濃度を気候システムに対して危険性のないレベルで安定させることを目標としており、各国におけるこの目標を達成するための行動や体制、制度面等について示されています。
また締約国は、温室効果ガスの排出量や吸収量の実態調査とその報告が義務づけられています。さらに条約締約国会議(COP)を最高意思決定機関と位置付け、毎年の開催を原則としています。
現在の条約締約国は、194か国+EUで、その経済状況によって3つのグループに分類(国連気候変動枠組条約附属書I締約国、附属書II締約国と非附属書I締約国)されます。
附属書 I 締約国
条約において多くの義務をもつ国です。OECD(経済開発協力機構:Organization for Economic Co-operation and Development)加盟国を中心とする先進国と経済発展が進んでいる国(東欧諸国)が所属しており、42の国と1地域(EU)が属しています。多くの国がEUとその他のヨーロッパ諸国です。
附属書 II 締約国
発展途上国への資金や技術の援助をする義務を持ち、最も多くの責務も持つ国です。条約付属書国Iのうち、OECDにも加盟している23の国・1地域(EU)が属しています。
非付属書締約国
上記以外の国からなるグループで主に発展途上国からなります。現在は、152か国が該当します。
次号では、国連気候変動枠組条約に基づく具体的な行動等を示した京都議定書について解説していきます。
【参考資料】
この記事は
バイオディーゼル岡山株式会社
三戸 が担当しました