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そうだったのか!地球温暖化とその対策(6)
~京都議定書−2~

今回も先回に引き続き京都議定書に関して紹介いたします。

【1】京都議定書(KP:Kyoto Protocol)までの歩み

先回ご紹介しましたが、京都議定書では第一約束期間(2008年~2012年)における数値目標を定めたことが最大の特徴です。その約束期間の各国の達成状況はどうだったのでしょうか?

表1 主要国の第一約束期間(2008年~2012年)の排出目標値・基準排出量・目標と結果
国・地域 第一約束期間(2008年~2012年)
基準年(1990年)
排出量(億tCO2換算)
排出削減目標
(%)
結果(%)
(見込み)
備考
日本12.6-6%-8.4%達成を表明
EU(27か国)42.7-8%-12.2達成を表明
ドイツ12.3-21%-23.6%達成を表明
フランス5.60※1EUの内数
イギリス7.8-12.5※1EUの内数
ギリシア1.125%※1EUの内数
ルクセンブルク0.1-28%※1EUの内数
ポルトガル0.627%※1EUの内数
デンマーク0.7-21%※1EUの内数
ロシア33.20※1 
アイスランド0.03-10%※1 
ノルウェー0.51%※1 
スイス0.5-8%※1 
ウクライナ9.20%※1 
オーストラリア5.58%※1 
カナダ0.6-6%+24%(※3)離脱
アメリカ61.7+9%(※3)批准拒否
中国(※2)22.8+251%(※3)削減義務なし
インド(※2)5.8+200%(※3)削減義務なし

出典:国立環境研究所 温室効果ガスインベントリオフィス
http://www-gio.nies.go.jp/aboutghg/data/2013/kp_commitment_130605_graph.pdf

※1 2012年の実績値のIPCCへの報告は、2014年4月15日が期限である。各国のデータは提出され、まさに今集計されていると推測されます。しかしさらに審査チームによる審査があるため、第一約束期間の全体の結果公表は1年以上先になります。
※2 中国、インドはエネルギー起源CO2のみを記載、また削減義務はありません。
※3 参考として2011年のエネルギー起源CO2排出量のみの値

日本やEU(ドイツは個別に)は、その結果を発表しています。日本は、-8.4%と目標の-6%を達成したと公表しています(詳細は後述)。EUは-8%の目標に対して12.2%と大きく達成しており、個別に発表したドイツは-21%という大きな目標に対して-23.6%と大幅削減を達成しています。

他の国はどうでしょうか?表1を見てわかる通り、目標設定には各国に差があり、削減義務のある国で-28%~+27%と幅のある目標設定(ともにEUの加盟国)がなされています。

また、図1に各国の目標値と公表されている2008年~2011年までの4年間の達成状況を示します。


図1:京都議定書達成目標値と達成状況

出典:国立環境研究所 温室効果ガスインベントリオフィス
http://www-gio.nies.go.jp/aboutghg/data/2013/kp_commitment_130605_graph.pdf

※この図の数値には、森林吸収と海外でのクレジット取得によるGHG削減効果が含まれていません。
※第一約束期間2008年~2012年に対して、この図の値は2008年から2011年の結果です。
※この表は各国の排出量の増減の割合であり、GHG排出の総量ではないので、この図の数値を合計しても地球全体の削減割合にはなりません。
※各国の2008~2011年の4年分の排出量データやクレジットの取得状況については、UNFCCCのウェブサイト(英文)からデータを確認できます。
http://unfccc.int/di/FlexibleCADQueries.do
http://unfccc.int/ghg_data/kp_data_unfccc/compilation_and_accounting_reports/items/4358.php

表1・図1から他の締約国における達成状況は様々だということがわかります。目標に対する成果が表れている国々も多いですが、多量排出国であるアメリカ(批准していない)や離脱したカナダは「増加」しており、中国やインド等の多量排出国も加えると、地球全体として、温室効果ガス削減への影響は大きなものとは言えない状況です。

■日本の達成状況

続いて日本の達成状況について解説いたします。
まず温室効果ガス排出量の計算は、基本的には、以下のような計算式になります。


図2 日本における京都議定書の目標達成状況(第一約束期間2008年~2012年)
出典:環境省ホームページに加筆
http://www.cger.nies.go.jp/cgernews/201401/278001.html
http://www.env.go.jp/press/upload/24788.pdf

日本の基準年である1990年のCO2排出量は12億6,100万トン

→6%削減(目標値)は、11億8600万トン

5年間の平均排出量①は 基準年比 +1.4%(12億7,800万トン)
5年間の平均森林等吸収量②は 基準年比 -3.9%(4,870万トン)
5年間の平均京都メカニズムクレジット③は 基準年比 −5.9%(約7,400万トン)
5年間の平均排出量は 基準年比 −8.4%

となります。この数値を確定版としてIPCCに提出し、日本は目標達成を表明しました。

注目すべき点は、2010年以降、総排出量が増え続けている点です。原因としては、東日本大震災時の原発事故よって日本各地の原発停止に伴う火力発電の増加と説明されていますが、震災以前も排出量は上昇傾向でしたので、リーマンショックからの回復等、経済活動の活発化による影響も少なくはないと考えられます。

■世界の状況

世界全体のCO2は今どうなっているのでしょうか?
2012年の排出量の発表はまだ先ですので、2011年の世界におけるエネルギー起源のCO2の排出量のグラフを示します。


図3 世界のエネルギー起源CO2排出量(2011年)
出典:環境省ホームページ
http://www.env.go.jp/earth/cop/co2_emission_2011.pdf

分類 全排出量における割合
附属書Ⅰ締約国 約43%
京都議定書で削減義務のある国 約23%
G8 約34%
BRICS 約39%
カンクン合意でなんらかの目標・行動を表明した国 約84%

これを見て「あれ?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。京都議定書において、削減義務を有する国々の努力によって、京都議定書の目標である5%の削減を達成したとしてもCO2の総排出量を1%削減(=23%×5%)する事にしかならなりません。経済発展の著しいBRICSの合計排出量はすでにG8を超えています。

また、中国、インド、アメリカなどにおいて、排出量が増加していることもあり、世界のCO2排出量は増え続けています。京都議定書の第一約束期間のスタートである2008年、世界のエネルギー起源のCO2排出量は294億トンでした(図4)。2012年の世界のエネルギー起源のCO2排出量は313億トン(図3)ですので、4年間で6%増加しています。

なお、中国、インド、アメリカは、2008年より排出量が増えていることもあり、世界の総排出量に占める割合も増加しています。2012年の中国、インド、アメリカの3ヵ国が排出するCO2は世界の総排出量の48%と、およそ半数を占めています。


図4 世界のエネルギー起源CO2排出量(2008年)
出典:環境省ホームページ
http://www.env.go.jp/earth/cop/co2_emission_2008.pdf

図5は、主要国のエネルギー起源CO2排出量の推移のグラフです。


図5 主要国のエネルギー起源CO2排出量の推移
出典:環境省ホームページ
http://www.env.go.jp/earth/cop/co2_emission_2011.pdf

経済発展の著しいBRICSの合計排出量はG8を超えており、また中国、インドの排出量は基準年比+200%超と言われており、先進国や削減義務を持つ国による対応だけでは、成果は薄いと考える事もできます。
温暖化ガスの排出量は、経済状況や家電製品の普及などにも関わっており、従来の技術や制度のままで新興国に暮らす方々の生活水準が向上すれば、CO2の排出量も増加することとなります。

第2回目でも触れましたが、気候変動や温暖化対策には、過去のデータの解析や、将来の予測などすべての分野において、調査・研究段階である内容も多くあり、科学的に解明できないことや、科学者間で意見が異なることなど多くあります。
温暖化には大きな不確実性が残っていますが、温暖化が進行し、それによる気候変動が回復困難なレベルになる前に、科学的に不確実性が解決されていなくても「予防アプローチ」として地球規模で様々な対策を進める事は非常に大切です。

前回と今回にわたり紹介したように、京都議定書における目標達成への各国の努力が世界のCO2削減への流れを作り、さらに、COP15のコペンハーゲン会議、COP16のカンクン(メキシコ)での会議を経て、先進国、途上国がそれぞれに温暖化ガスの削減目標を定め、削減行動をすることで合意しました。
これによって、エネルギー起源CO2排出量の84%を占める国から削減目標や削減行動が提出されました。温暖化ガスの排出量を抑制しようとする多くの先進国と経済発展を優先する途上国などの間で揺れ動いていた温暖化問題ですが、ようやく世界がひとつとなって、削減に取り組むことが可能となりました。

このように京都議定書は世界を動かした歴史的な議定書であると言えます。日本は、京都議定書が締結された国でもあり、数々の温暖化ガスの抑制に取り組んでいる環境先進国として、新興国に対して積極的な支援をすることで、新興国の発展とCO2排出量増加とのデカップリングと、地球全体の温暖化リスク低減につなげる事ができます。

次号では、IPCC総会(横浜、ベルリン)についての報告をいたします。


三戸 この記事は
バイオディーゼル岡山株式会社
三戸 が担当しました

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