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そうだったのか!地球温暖化とその対策(9)
~地球温暖化対策計画について~

地球温暖化対策計画は、日本における地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するために、日本政府が「地球温暖化対策推進法」に基づいて策定した「我が国唯一の地球温暖化に関する総合計画」です。
2015年7月に地球温暖化対策推進本部で決定した2030年度の温室効果ガス削減目標「約束草案」及び2015年12月のCOP21におけるパリ協定の採択を受けて2016年5月に閣議決定されました。

【1】地球温暖化対策計画決定までの経緯と動向

西暦 地球温暖化対策に関する動向
1992 UNCED 気候変動枠組条約の採択
1997 COP3 京都議定書の採択
1998 日本 「地球温暖化対策推進法」を制定
2009 COP15
コペンハーゲン合意
2020年までの温室効果ガス削減目標登録「1990年比25%減」
2010 COP16
カンクン合意
世界全体の温度上昇を工業化前2℃以下に抑えるために、大幅な温室効果ガスの削減が必要と各国が同意
2012 日本 第4次環境基本計画
2050年までの温室効果ガス削減長期目標を宣言「1990年比80%減」
2013 日本 地球温暖化対策推進法を改定し、これまでの「京都議定書目標達成計画」に代わり、「地球温暖化対策計画」を策定することとし、「当面の地球温暖化対策に関する方針」
COP19までに2020年までの削減目標(25%目標)をゼロベースで見直しを表明
COP21 日本は2020年までの温室効果ガス削減目標「2005年比3.8%減」を表明
2015 G7エルマウ・サミット 日本は、2050年までに2010年比で40%から70%の温室効果ガス削減を表明
COP21
パリ協定
日本は2030年度の削減目標「2013年比で26%減」を表明(日本の約束草案を提出)

UNCED:環境と開発に関する国際連合会議
COP:気候変動枠組条約締約国会議
約束草案:COP21に先だって各国が提出した2020年以降の温暖化対策に関する目標
(日本は2015年7月17日に提出)

パリ協定:COP21で採択された地球温暖化の抑止を目指す新たな仕組み。それまでの京都議定書に代わるものとして1175か国の国と地域が署名し採択された。

概要

  • 世界の共通な目標として、産業革命以降の温度上昇を2℃に抑える(2℃目標)
  • さらに1.5℃に抑える努力についても言及
  • 今世紀中での人為的排出と吸収量のバランスを達成
  • 各国は約束草案を作成し、5年毎の見直しを実施
  • 2020年までに温暖化対策の長期戦略を策定

【2】地球温暖化対策計画の内容

(1)日本の目標

現状
日本の2014年度の温室効果ガス総排出量は、13億6400万t-CO2で、1990年度比では10.8%、2005年度比では0.8%増加しています。

中期目標(日本の約束草案)
温室効果ガスを2030年度までに2013年比で26%削減する

長期目標(COP21を受けて策定されました)
温室効果ガスを2050年までに1990年比で80%削減する。

進捗管理方法等
毎年の進捗点検を行うとともに、少なくとも3年ごとに計画の見直しを検討する。

参考 エネルギー起源温暖化ガス排出国上位(2013年)
順位 国名 排出量(エネルギー起源)百万t-CO2 割合(%)
1 中国 9437 28.7
2 アメリカ 5184 15.7
3 インド 1894 5.8
4 ロシア 1659 5.0
5 日本 1234 3.7
6 ドイツ 746 2.3
7 韓国 582 1.8
8 メキシコ 480 1.5
9 ブラジル 467 1.4
10 イギリス 459 1.4
世界合計 32920

出典:エネルギー・経済統計要覧2016年版

参考 主要国の約束草案(削減目標)比較
目標
EU 2030年までに少なくとも40%削減(1990年比)
アメリカ 2025年までに26~28%削減(2005年比)
28%削減に向けて最大限取り組む
ロシア 2030年までに25~30%削減(1990年比)
中国 2030年までにGDP当たりCO2排出量60~65%削減(2005年比)
2030年ごろに排出量のピーク
オーストラリア 2025年までに26~28%削減(2005年比)
ブラジル 2025年までに37%削減、2030年までに43%削減(2005年比)
インド 2030年までにGDP当たりCO2排出量33~35%削減(2005年比)
日本 2030年までに26%削減(2013年度比)(2005年比25.4%削減)

出典:平成28年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書 より作者抜粋

(2)日本の現状

(2)−1. 部門別の二酸化炭素排出量

部門別の二酸化炭素排出量の推移を図1に示します。産業運輸部門からの二酸化炭素排出量は省エネ化や燃料改善等によって減少傾向ですが、商業やサービス業は、業務床面積の増加や電力原単位の悪化などで、大幅な増加となっています。また、家庭部門も大幅な増加傾向がみられます。


出典:地球温暖化対策計画

(2)−2. 発生源別排出状況

温室効果ガスは、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)、パーフルオロカーボン(PFCs)、六ふっ化硫黄(SF6)、三ふっ化窒素(NF3)の総称です。

温室効果ガスの排出量を以下の表に示します。エネルギー起源CO2が日本全体の温室効果ガス排出量の約9割を占めていることがわかります。従って、この「エネルギー起源の二酸化炭素排出源」の対策・施策を進めることが、2030年度の削減目標の達成に大きく貢献することが分かります。

単位:百万t-CO2
2005年度
実績
2013年度
実績
2030年度
目安
2030年度
削減割合(%)
(2013年比)
エネルギー起源CO2 1,219 1,235 927 25.0
非エネルギー起源CO2 85.4 75.9 70.8 6.7
メタン 39 36 31.6 12.3
一酸化二窒素 25.5 22.5 21.1 6.1
代替フロン等4ガス 27.7 38.6 28.9 25.1

※非エネルギー起源CO2:セメント製造等において排出されるCO2
出典:環境省「日本の約束草案」より作者作成

(3)目標達成のための対策・施策

(3)−1. 国、地方公共団体、事業者及び国民の基本的役割

地球温暖化対策の推進に関して、国、地方公共団体、事業者及び国民の役割が明記されており、各主体が役割分担を認識し、目標達成のため相互に連携して相乗的な効果を発揮することが期待されています。

政策手法による温暖化対策の総合的推進
国民の問題意識を高めるための意識改革や行動喚起の推進
国際協力の推進
地方公共団体 地域の自然的社会的条件に適合した施策の実施
優良事例情報の展開
事業者 省CO2型製品の開発や廃棄物の減量等への自主的・積極的な対策の実施
製品・サービスのライフサイクルを通じた環境負荷の低減
国民 低炭素ライフスタイルへ向けた行動様式の変革や行動喚起の取り組み
地球温暖化対策に資する賢い選択を促す国民運動を推進
3R活動や緑化運動などの地球温暖化防止活動への参加

(3)−2. それぞれの削減対策

エネルギー起源CO2
産業部門・業務その他部門・家庭部門・運輸部門及びエネルギー転換部門の5部門に分けられ、各分野で期待される対策・施策が示されています。


出典:地球温暖化対策計画の概要

産業界の取り組み
経団連をはじめとする産業界は、自主行動計画等を策定し、主体的な削減に取り組んでいるので、引き続きこの自主的な取り組みを進めることとされています。
具体的な今後の取組として、自主行動計画等を策定していない業種への働きかけや、利用可能な最善の技術(BAT:Best Available Technology)や優良事例(Best practice)などの導入や、省エネ機器への導入の促進、IOT(Internet of Things)を活用した徹底的なエネルギー管理等が例示されています。

家庭部門の取り組み
2030年度目標を達成するために家庭部門は二酸化炭素排出量を40%削減することが必要とされています。
住宅の省エネ化、省エネ機器の普及(LEDやヒートポンプ、家庭用燃料電池など)、スマートメーターなどを用いた徹底的なエネルギー管理などが具体的取組として挙げられています。


出典:地球温暖化対策計画の概要


出典:地球温暖化対策計画の概要

運輸部門
次世代自動車(ハイブリッド)や電気自動車、燃料電池車やクリーンディーゼルなどの普及促進とそのための優遇・補助制度を導入する、バイオ燃料等の導入体制の整備の実施等が例示されています。

エネルギー部門
再生可能エネルギー発電の最大限の導入に向けて、以下の取組を推進するとされています。

  • 太陽光発電:
    高効率、低コスト化への技術開発
  • 風力発電:
    高効率、低コスト化への技術開発、アセス等の迅速化、系統整備。
  • 地熱発電:
    投資リスクの軽減やアセスの迅速化、自然環境や地元への配慮した開発
  • 水力発電:
    既存ダムの活用拡大、地域分散型エネルギー需給構造の基礎へ。
  • バイオマス発電:
    スケールメリットの追求、火力発電所との混焼、森林・林業の支援策
    廃棄物メタン発酵や排熱利用の推進


出典:地球温暖化対策計画の概要

また「エネルギー革新戦略」では、以下の施策の実現を努めるとされています。

  • 省エネルギーの徹底
  • 国民負担の抑制と両立した再生可能エネルギーの最大限の導入
  • 火力発電の高効率化
  • 安全性の確認された原子力発電の活用
  • 産業分野等における天然ガスシフト等各部門における燃料の多様化

非エネルギー起源CO2
非エネルギー起源CO2は、混合セメントの利用拡大、バイオマスプラスチック類の普及、廃棄物焼却量の削減などの実施により、その排出量は減少傾向にあるので、同様の施策を今後も推進するとされています。
特にバイオマスプラスチック類の普及推進が今後期待されており、国内出荷量は2013年の7万tから2030年には197万tへ拡大すると試算されています。また高炉スラグ等を用いたセメントの生産利用を拡大し、グリーン購入法においても利用を促進するとされています。

メタン
水田メタン排出削減や有機性廃棄物の直接埋め立て量削減によるメタン排出量の削減に期待するとされています。

一酸化二窒素
廃棄物・下水汚泥等の焼却施設における燃焼高度化の推進が期待されるとされています。

代替フロン等4ガス
近年ではCFC、HCFCからHFCsへの転換が進行していることから、排出量が増加傾向にあります。
今後はガスメーカーに対して、取り扱うフロン類の低GWP(地球温暖化係数)化や製造量の削減を含むフロン類以外への代替、再生といった取組みを促すとされています。
冷凍空調機器からのHFCsの排出量の約7割を占める業務用冷凍空調機器については、フロン排出抑制法の基づく施策により、回収率の向上を引き続き推進するとされています。

(3)−3. 国民の役割 ~国民運動と環境教育の推進~ とは


出典:地球温暖化対策計画の概要

国民運動とは、国民に積極的かつ自主的な行動歓喚起を促し、低炭素型製品・サービスの市場創出や拡大をはじめ、低炭素社会にふさわしい社会システムへの変革やライフスタイルイノベーションへの展開を促進させることを目的としています。地球温暖化問題への具体的な解決策を考え、行動することを喚起するために、環境教育を推進(指導者の育成、学習プログラムなど)するとされています。

具体的な取り組みとしては、

  • 関係省庁間が協力し、一丸となって、家庭、職場における以下の取り組みを促すLED,エコカーなどへの買い替えや住宅の省エネリフォーム
  • 公共交通機関の利用促進、カーシェアの推進
  • クールビズ、ウォームビス、エコドライブ、自転車利用など低炭素ライフスタイルワークスタイルの選択
  • 国民運動、環境教育のための教材やコンテンツの提供
  • 家庭エコ診断制度の推進
  • 民間事業者等と連携した省エネルギーイベントやキャンペーンの実施
  • 各種温暖化防止関連団体の連携強化
  • 環境教育の「伝え手」の募集、研修を通じて、国民の行動を促す
  • 環境教育の指導者の育成・確保
  • 地域における環境教育・学習プログラムの作成支援
  • グリーン購入の推進
  • カーボンオフセットの推進
  • エコポイントなどのインセンティブ付与の推進
  • 植樹祭などの国民参加の森林づくりと木材の利用推進
  • 食品ロスの軽減

等が挙げられています。

(3)−4. その他の施策

温室効果ガス吸収源の増加目標
森林吸収源については、健全な森林の整備や安定的な林業経営の育成、また木材及び木質バイオマス利用の推進などを通じて、2030年度において、27.8百万t-CO2の吸収量の確保が目標とされています。市町村が主体となった森林・林業施策を推進することとし、これに必要な財源確保の手段としての税制導入を検討するとされています。
森林に加え、2030年度において、農地土壌炭素吸収源対策及び都市緑化等の推進による約9.1百万t-CO2の吸収量の確保が目標とされています。

分野横断的な施策
以下の政策が挙げられています。

  • J-クレジット制度の推進による、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの活用
  • 低炭素型都市・地域づくりのための都市コンパクト化や都市エネルギーシステムの効率化
  • 水素社会の実現へ向けた課題克服や水素ステーションの計画的な整備、水素・燃料電池の利用拡大へ向けた技術開発と実証
  • 事業活動における環境配慮の促進と消費者への理解促進
  • 金融を通じて環境への配慮に適切なインセンティブを与え、グリーン経済を形成していくための取組を進める

【3】最後に

2030年度の削減目標「2013年比で26%減」を達成するためには、エネルギー起源CO2を抑制することが特に重要です。その実現へ向けて地球温暖化対策計画では、各分野で期待される取り組みや各ステークホルダーが担う役割が論及されており、皆が一体となり分野横断的に地球温暖化対策へ取り組む必要性が言及されています。

その中で、家庭部門は二酸化炭素排出量を40%削減することが求められています。産業部門に偏りがちであった今までの取り組みと比較すると、国民の取り組みに関する割合が大きくなっています。家庭部門が40%削減するためには、従来の取り組みの単なる延長では達成が困難なため、国民に積極的かつ自主的な行動を促し、低炭素社会への変革やライフスタイルイノベーションへの展開を促進させることを大きな目的としていることが今回注目すべき点であると言えます。

国民の省エネルギーを意識した自主的アプローチが大いに期待されていると同時に、事業者は環境へ配慮した事業活動を進める必要があります。またインセンティブ手法の導入などにより環境配慮型のビジネスを消費者が選択する社会構造が求められます。

2050年までの長期目標を見据えれば、イノベーションによる温暖化対策は必須です。再生可能エネルギーや水素利用などは今後の技術開発の促進が期待される分野であり、社会実装へ向けたインフラ整備も重要です。また温室効果ガスの排出・吸収量の正確なデータ管理や、科学的知見に基づく将来の気候変動予測についても強化が必要ですし、これらは地球温暖化がもたらす環境や社会・経済への影響を把握する上で役に立ちます。

詳しくは、環境省ホームページをご確認ください。

環境省ホームページ
「地球温暖化対策計画」の閣議決定について
地球温暖化対策計画の概要
平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書


三戸 この記事は
バイオディーゼル岡山株式会社
三戸 が担当しました

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