そうだったのか!地球温暖化とその対策(3)
~温室効果とは~
今回は、そもそも「温室効果とは」何かについて、説明していきます。
はじめに、地球温暖化と二酸化炭素の関係についておさらいします。
【1】温室効果ガス
温室効果があるとされ、京都議定書で定められた6種類のガスにおいて、温室効果の約3/4を占めるのは、二酸化炭素(化石燃料由来、森林減少、その他の合計)です。
(※ ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類や六フッ化硫黄はFガス類に合算)
図1 温室効果の割合(IPCC第4次報告書より作成)
【2】二酸化炭素の濃度の観測
では、この二酸化炭素濃度はどのように測定されているのでしょうか?
二酸化炭素濃度の観測は、ハワイ島のマウナロア観測所で1958年から始まり、日本では、綾里(りょうり:岩手県大船渡市)で1987年から測定されています。他にも日本では、1993年に南鳥島や1997年に与那国島で観測が開始され、計3つの観測点にて測定されています。
気象庁では、地表近くでの植物活動や人間活動から受ける影響を小さくするように、地上から約20メートルの高さから取り込まれた空気の二酸化炭素濃度を測定しています。
また南極においても二酸化炭素濃度の観測が行われており、世界気象機関等が中心となって、世界各地で観測所が整備され、観測されています。
現在では約300地点で、定点観測のみならず航空機、船舶を用いた測定が行われています。(図表2 参照)さらにこの観測精度を向上させるためにNASAや日本の人工衛星による観測も試されています。
図表2 温室効果ガス世界監視ネットワークの二酸化炭素観測地点
出典:WMO温室効果ガス年報9号(気象庁訳)
図表3では、図表2で示した観測所における二酸化炭素濃度の経年変化を示します。
図表3 二酸化炭素濃度の経年変化
出典:気象庁 気候変動レポート2012
このグラフでは、マウナロア、南極点では、1960年からの50年間でおよそ70ppmの濃度上昇が見られます。また日本の綾里においても1987年からの約25年間でおよそ40ppmの濃度上昇がみられます。
グラフがジグザグになるのは、季節変化の影響によるものです。
夏は植物の光合成が盛んになりますので、植物の呼吸によって排出される二酸化炭素より光合成によって消費する二酸化炭素の量が多くなり、大気中の二酸化炭素濃度は減少します。
逆に冬は、植物の光合成の活動が減少するため、植物の呼吸によって排出される二酸化炭素より光合成によって消費する二酸化炭素の量が少なくなり、大気中の二酸化炭素濃度が上昇します。
また、南極では、植物等の生態系の影響が少なくまた、人間の活動による二酸化炭素排出もほぼないため、このジグザグはかなり小さくなっています。
図4には、さらに過去にさかのぼり、過去1万年の二酸化炭素の濃度変化を示します。
二酸化炭素の濃度測定を行い始めたのは約60年前ですが、どうやって1万年前の濃度を測定するのでしょうか?
答えは、南極にあります。
南極やグリーンランドに万年雪や氷床がありますが、その万年雪や氷床には、その万年雪や氷床ができた当時の大気が閉じ込められています。またこれらの氷や雪には、地層のようにそれぞれの年代を示す痕跡があり、これらから万年雪や氷床ができた年代を特定します。こうして、氷中に閉じ込められた太古の大気を測定することで、過去数10万年までの大気組成について推測することが可能です。
図4 二酸化炭素濃度の経年変化(1万年)
出典:全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(IPCC第4次報告書より)
縦軸(右側)の目盛りの放射強制力とは、地球・大気に出入りするエネルギーのバランスを変化させる影響力の尺度で、気候を変化させる能力の大きさを表しています。放射強制力が高いほど、温暖化への寄与が大きくなります。
図4より、この1万年の間250~300ppm前後で安定していた二酸化炭素濃度が、産業革命(1700年代後半)以降に大幅に上昇していることがわかります。これは、狩猟や農耕を中心としていた人間の生活に工業化が起こり、石炭・石油などの化石燃料の利用が大幅に増えたためと考えられています。
このように人間の生産活動の拡大が二酸化炭素濃度に大きな変化をもたらしと言えます。
【3】温室効果のメカニズム
■太陽光のエネルギー
地球が太陽から照射されるエネルギーを地表全体にならすと、342W/m2(1時間の間に1m2で受け取るエネルギー)ですが、このうち約3割は雲や地表面で反射され、7割が地表に届き、地球を暖めます。地球が吸収するエネルギーを地表全体にならすと、235W/m2のエネルギーを受け取っている事になります。
太陽からエネルギーを受け取るだけでは、地表の温度はどんどん上昇してしまいそうですが、そのようなことにはなっていません。それは、地球は太陽からのエネルギーを受取ると同時に、235w/m2のエネルギーを赤外線として地球外に放射しているからです。このため基本的には、地球へのエネルギーの出入りはイコール=ゼロになり(入射エネルギー-放射エネルギー=0)、平均気温は一定となります。
地球が太陽から受け取っているエネルギーとは?
地球からの照射エネルギーは342(W/m2)と書きましたが、太陽から地球に照射されているエネルギーは、1370(W/m2)です。
これがどうして342(W/m2)になるのでしょうか。
ここで、
小中学校の数学で習った、円の面積・球の表面を求める公式が登場します。
- 円の面積=πr2
- (半径かける半径かける3.14)(球の断面積でもあります)
- 球の表面積=4πr2
- (4かける半径かける半径かける3.14)
宇宙空間の中で、地球は太陽から照射エネルギーを受けています。地球の昼側(太陽光が当たっている半分側)だけが、太陽から照射されているエネルギーを受け取れます。
太陽からの照射エネルギー(1370(W/m2))のうち、上の図の円で示したの部分(地球の断面積)を通る光が地球の表面を暖めます。
※実際は、赤道部分にはほぼ直角に、極部分には低角度で太陽光が照射されるので、赤道部分は暑くなり、極部分はあまり暖まりません。
この地球に照射されているエネルギーを地球の表面積全体で割り返すと、地球の表面積あたり、太陽から照射されているエネルギーが求められます。
太陽から照射されているエネルギーを平均化して、地球表面全体に均等にエネルギーが照射されたとして計算すると、342(W/m2)になります。
■温室効果
温室効果が無い場合、235W/m2のエネルギーを太陽から受け取っている地球の温度は-19℃になると計算されます(気象庁ホームページ:温室効果とは)。
しかし、地球の平均気温は約14℃あります。これは、どうしてでしょうか。
これは地球が宇宙に向けて放射した赤外線を大気中の温室効果ガスや雲が吸収し、地表に再度放射することによるものです。この再放射によって、地表が受け取るエネルギーが235W/m2よりも少しだけ大きくなり、地球は少し暖かくなっています。これが温室効果であり、地球は平均気温14℃で安定することができています。
図5 温室効果の概念図
■強制放射力との関係
先ほど、地球が受け取り、また、放出しているエネルギーは235W/m2と説明しましたが、この単位であるW/m2は、1時間の間に1m2で受け取るエネルギーであり、図表4に出てきた強制放射力と同じです。図表4の右側の軸を見てみると、現在の二酸化炭素濃度では約1.6W/m2の地表への放射能力があることがわかります。
表に地表が受け取るエネルギーと地球の平均気温の関係を示しました。
地表が受けるエネルギー(W/m2) | 安定する地球の平均気温 | ||||
---|---|---|---|---|---|
太陽光 | 水蒸気 | 二酸化炭素 | その他の温室効果ガス | ||
温室効果がない場合 | 235 | 0 | 0 | 0 | -19℃ |
現在の状況 | 235 | ※ | 1.6 | 0.5 | 14℃ |
温室効果ガスが増加した場合 | 235 | ※ | 1.6< | 0.5< | 14℃< |
※水蒸気による強制放射力は、二酸化炭素より大きいと言われておりますが、その数値に関しては定かではありません。
図表6によってわかるのは、とても単純な関係式です。
二酸化炭素やその他の温室効果ガスが増えれば、それによる地球への熱の再放射量が増えるため、地球の平均気温が上がる、というものです。
地球温暖化と気候変動については、要因・要素が非常に多く、不確実性も高い分野です。
温暖化の根拠資料として挙げられている資料も難しいものが多いので、私も含め、専門外の人間には理解するのが難しい分野だと思います。
しかし、シンプルに考えれば、温室効果のあるガス濃度が増えれば、地球への熱の再放射が増え、地球の温度が上がる方向に働く事は、物理化学的の法則に従った現象であると言えるのではないでしょうか。
この記事は
バイオディーゼル岡山株式会社
三戸 が担当しました