一般廃棄物の「灰」事情 その2 焼却灰からの貴金属回収
前回は、一般廃棄物の排出量と、埋立処分場の現状についてご紹介しました。
今回は、焼却灰からの金属リサイクル(貴金属回収)についてご紹介します。
■金の可採年数
米国地質調査所(USGS)が2023年1月31日に公表した、金の埋蔵量の調査報告書「Mineral Commodity Summaries 2023」によれば、2022年末時点での金の埋蔵量は全世界で5万2,000tとされています。
World Gold Councilのデータによれば、需要量は2022年で4,700tとされています。そのため、埋蔵量を需要量で割った可採年数(現在のペースで何年消費できるか)を計算すると11年となります。採掘された天然資源の金のみを使用する場合、金は11年で枯渇する計算になります。
埋蔵量(52,000t)÷ 需要量(4,700t)≒ 11
金は宝飾品や資産としてだけでなく、工業、医療など幅広く使用されており、枯渇しないように製造・使用していく必要がありますので、天然資源のみではなく再生資源を活用することが非常に重要です。
(参考)WORLD GOLD COUNCIL :Historical demand and supply
■再生資源(都市鉱山)からの金のリサイクル
金は採掘された天然資源だけでなく、都市鉱山(有価金属を含む家電、スマートフォン、PCなどの使用済製品)からリサイクルすることもできます。日本は金鉱石の主要な埋蔵国ではありませんが、都市鉱山として6,800t相当の金が埋蔵されているとも言われています。
金は品質劣化なく何度もリサイクルできますので、都市鉱山を有効活用して天然資源の採掘以外の方法で金を製造することは、持続可能な社会を形成するうえで重要だと考えられます。
また、金を回収できるのは家電やスマートフォン等だけではありません。家庭のごみを焼却した後の焼却灰(燃えがら)にも有価金属(金、銀、銅、プラチナ、パラジウム等)が含まれていて、焼却灰から金などを回収することもできます。
■DOWAエコシステムの取り組み ~焼却灰から金~
DOWAグループの「メルテック(株)」、「メルテックいわき(株)」では、焼却灰を溶融し、金、銀、銅、プラチナ、パラジウム等の有価金属が高濃度で濃縮された溶融メタルを製造しています。
●リサイクルの流れ
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受け入れた焼却灰は、前処理された後に高温の溶融炉(コークスベッド式高温溶融炉)に投入されます。炉内の温度は約1,600℃。焼却灰を溶岩のようにドロドロに溶かします。
その後、ドロドロに溶けた焼却灰をゆっくり冷却して、比重差を用いて金属分の多い「溶融メタル」と石材になる「溶融スラグ」に分離させます。
メルテック(株)で製造している溶融メタル「メルマイン®」と溶融スラグ「メルエース®」は、栃木県リサイクル認定制度の「とちの環(わ)エコ製品」にも認定されています。また、商標登録を取得しました。
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その後、溶融メタルはDOWAグループの小坂製錬(株)の高度な製錬技術によって、金、銀、銅などの有価金属として分離・回収されます。
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■最後に
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焼却灰は一見すると価値がなさそうにも見えますし、廃棄物として埋め立てられてもいますが、有用な金属を含むリサイクル材料でもあります。DOWAグループでは引き続き都市鉱山の製錬所として、使用済電子機器だけでなく、焼却灰のリサイクルも推進します。
次回は、溶融スラグ(メルエース®)の活用について、ご紹介します。
【関連サイト】
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
後藤 が担当しました