「毒物及び劇物取締法」概要 その5 表示
毒物及び劇物取締法(以下、毒劇法)は昭和25年に制定された法律です。
前回は、「漏洩防止」についてご説明しました。
今回は、「表示」についてご説明していきます。
「表示」について、毒劇法と毒劇法施行規則では以下のように記載されています。
毒物又は劇物の表示
第十二条
毒物劇物営業者及び特定毒物研究者は、毒物又は劇物の容器及び被包に、「医薬用外」の文字及び毒物については赤地に白色をもつて「毒物」の文字、劇物については白地に赤色をもつて「劇物」の文字を表示しなければならない。2 毒物劇物営業者は、その容器及び被包に、左に掲げる事項を表示しなければ、毒物又は劇物を販売し、又は授与してはならない。
一 毒物又は劇物の名称
二 毒物又は劇物の成分及びその含量
三 厚生労働省令で定める毒物又は劇物については、それぞれ厚生労働省令で定めるその解毒剤の名称
四 毒物又は劇物の取扱及び使用上特に必要と認めて、厚生労働省令で定める事項3 毒物劇物営業者及び特定毒物研究者は、毒物又は劇物を貯蔵し、又は陳列する場所に、「医薬用外」の文字及び毒物については「毒物」、劇物については「劇物」の文字を表示しなければならない。
「毒物劇物営業者及び特定毒物研究者」以外については、第22条第5項に準用について規定されていますので、毒物劇物営業者、特定毒物研究者に限らず、業務上毒物又は劇物を取り扱うすべての方が対象となることとなります。
第二十二条
5 第十一条、第十二条第一項及び第三項、第十七条並びに第十八条の規定は、毒物劇物営業者、特定毒物研究者及び第一項に規定する者以外の者であつて厚生労働省令で定める毒物又は劇物を業務上取り扱うものについて準用する。
表示に関して法で規定されているのは、以下の3点です。
- 容器への表示(第12条第1項)
- 陳列場所への表示(第12条第3項)
- 販売・授与する際の表示(第12条第2項)
対象者 | 具体的な対象 | 容器への表示 | 貯蔵・陳列場所への表示 | 販売・授与する際の表示 | |
---|---|---|---|---|---|
毒物劇物の製造、輸入、販売又は授与を行う方 | 毒物劇物営業者 | ・化学品の製造業者 ・輸入業者 ・販売店 ・小売店 |
○ | ○ | ○ |
製造、輸入、販売又は授与目的以外で、毒物劇物を業務上使用する方 | 届出を要する業務上取扱者 | ・めっき業者 ・金属熱処理業者 ・毒物劇物を大量に運送する業者 ・しろあり防除業者 |
○ | ○ | |
届出を要しない業務上取扱者 | ・試験研究機関 ・学校等教育機関 ・農家 ・運送業者 ・その他化学品を扱う業務を行う方 |
○ | ○ | ||
特定毒物を使用される方 | 特定毒物研究者、特定毒物使用者 | ・試験研究機関 ・特定の農薬を使用する農業団体の方 |
○ | ○ |
1. 容器への表示(第12条第1項)
毒物・劇物の容器に、「医薬用外」の文字と毒物については赤地に白色をもつて「毒物」の文字、劇物については白地に赤色をもつて「劇物」の文字を表示しなければいけません。
毒物
「医薬用外」と赤地に白色で「毒物」の文字
劇物
「医薬用外」と白地に赤色で「劇物」の文字
2. 陳列場所への表示(第12条第3項)
毒物・劇物を貯蔵・陳列する場所に、「医薬用外」の文字と毒物については「毒物」、劇物については「劇物」の文字を表示しなければいけません。
(イラスト)おやすみん
3. 販売・授与する際の表示(第12条第2項)
毒物劇物営業者は、容器に以下の表示をしなければ、毒物・劇物を販売・授与してはいけません。
- 1)
- 毒物又は劇物の名称
- 2)
- 毒物又は劇物の成分及びその含量
- 3)
- 厚生労働省令で定める毒物又は劇物(有機燐化合物及びこれを含有する製剤たる毒物及び劇物)については、その解毒剤の名称
毒物及び劇物取締法施行規則
(解毒剤に関する表示)
第十一条の五 法第十二条第二項第三号に規定する毒物及び劇物は、有機燐りん化合物及びこれを含有する製剤たる毒物及び劇物とし、同号に規定するその解毒剤は、二―ピリジルアルドキシムメチオダイド(別名PAM)の製剤及び硫酸アトロピンの製剤とする。 - 4)
- 毒物又は劇物の取扱及び使用上特に必要と認めて、厚生労働省令で定める事項
毒物及び劇物取締法施行規則
(取扱及び使用上特に必要な表示事項)
第十一条の六 法第十二条第二項第四号に規定する毒物又は劇物の取扱及び使用上特に必要な表示事項は、左の通りとする。
一 毒物又は劇物の製造業者又は輸入業者が、その製造し、又は輸入した毒物又は劇物を販売し、又は授与するときは、その氏名及び住所(法人にあつては、その名称及び主たる事務所の所在地)二 毒物又は劇物の製造業者又は輸入業者が、その製造し、又は輸入した塩化水素又は硫酸を含有する製剤たる劇物(住宅用の洗浄剤で液体状のものに限る。)を販売し、又は授与するときは、次に掲げる事項
イ 小児の手の届かないところに保管しなければならない旨
ロ 使用の際、手足や皮膚、特に眼にかからないように注意しなければならない旨
ハ 眼に入つた場合は、直ちに流水でよく洗い、医師の診断を受けるべき旨三 毒物及び劇物の製造業者又は輸入業者が、その製造し、又は輸入したジメチル―二・二―ジクロルビニルホスフエイト(別名DDVP)を含有する製剤(衣料用の防虫剤に限る。)を販売し、又は授与するときは次に掲げる事項
イ 小児の手の届かないところに保管しなければならない旨
ロ 使用直前に開封し、包装紙等は直ちに処分すべき旨
ハ 居間等人が常時居住する室内では使用してはならない旨
ニ 皮膚に触れた場合には、石けんを使つてよく洗うべき旨四 毒物又は劇物の販売業者が、毒物又は劇物の直接の容器又は直接の被包を開いて、毒物又は劇物を販売し、又は授与するときは、その氏名及び住所(法人にあつては、その名称及び主たる事務所の所在地)並びに毒物劇物取扱責任者の氏名
■国連GHS分類との比較
GHS:「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(Globally Harmonized System of Classification and Labeling of Chemicals)」は、化学品の危険有害性に関して世界共通の分類と表示を行い、正確な情報伝達を実現し、人の健康を確保し、環境を保護することを目的として、2003年7月に国連より勧告されたものです。
毒物や劇物について、GHSに基づく危険有害性に関する絵表示を付し、使用者に注意喚起を促すことは、人の健康被害を回避する上では、推奨されるべきこととされています。
参考に、厚生労働省によって発行された「GHS〜毒物・劇物について〜」に掲載されている比較表を以下にご紹介します。
(出典)GHS〜毒物・劇物について〜(厚生労働省)
次回は、事故時の措置についてご説明します。
【参考サイト】
−GHS対応− 化管法・安衛法・毒劇法におけるラベル表示・SDS提供制度(経済産業省)
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました