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地球温暖化をどう理解するか その1
〜安定した気候が人類を支えている〜

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
理事長
浜中 裕徳(はまなか ひろのり)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
理事長挨拶:IGESが目指すもの

2015年11月~12月にパリで開催された気候変動枠組条約締約国会議(COP21)。この会議は、明確な長期目標の下で「待ったなし」の目標設定と温室効果ガスの削減実施が全ての国に求められることとなった歴史的な会議として注目されています。

今回のインタビューは、長年、日本の環境政策に携われてこられた IGES(Institute for Global Environmental Strategies)の理事長 浜中裕徳 様に「地球温暖化問題」について、お伺いしました。

日本は、世界的に温暖化への危機感を持っている人が少ないというデータがあります。温暖化について、『何となく知っているけど否定的な意見も聞くし、よく分からない。自分とは関係がない。』と思ってしまいがちなのですが、COP21で「歴史的な合意」が得られ、非常に気になっていました。よろしくお願いします。

【その1】安定した気候が人類を支えている

まず、安成哲三先生(総合地球環境学研究所長、前名古屋大学地球水循環研究センター教授)の論文から抜き出した図をご覧ください。

これは、10万年くらい前からの酸素同位体の比率です。要するに、気温変動のグラフだと思っていただいてよいと思います。
最後の氷河期(最終氷期)が7万年前から2万年前くらいまで続きました。氷河期はずっと寒いと思いがちですが、実はそうではなく、急激かつ大幅に温度が上がったり、下がったりを繰り返しています(酸素同位体比の変動幅は、温度に換算して実に10度以上とされています)。
10万年前というと、現在の人類ホモサピエンスが既に出現しており、われわれの祖先はすごく激しい気候変動の時代を過ごしながら、アフリカから世界中に広がってきたのだとわかります。

ところが、最終氷期が終わった1万年くらい前から変動が極めて安定し始めます。この図を見ても例外的に安定した気候であったことがわかります。

ちょうどその頃から農業が始まって定住がすすみ、古代文明の下で人類が栄えました。
これを地質年代で完新世(Holocene)と言っており、この図は、完新世の安定した気候の下で人類が発展してきたことを示しています。

そこで、最近の100年、この図では最後の点のような時間ですが、ここがぴょんと跳ね上がっています。気温が急激に上昇しているのです。

安定した気候の時代から激しい気候変動が始まる時代に入りつつあるのかもしれませんが、その引き金を引いているのは人類自身であり、新しい地質年代「人類世」が始まっていると言っている人もいます。

ちょっと怖いシナリオもあります。
最近の100年余りの間の温暖化は摂氏1度未満ですが、それによってツンドラ地帯の地盤がゆるみ始めています。
ツンドラ地帯の地下には凍結されている大量のメタンが眠っています。メタンは二酸化炭素の20倍以上の温室効果がありますから、これが溶け出して大量に放出が始まったら、現在の人類の技術では、この気温上昇を抑える事は不可能です。人類社会の存続すら危ういということになります。

現在のまま温暖化が進むと、NHKが2014年の国連気候サミットの際に企画した2050年の天気予報で、お天気キャスター井田寛子さんが「お彼岸なのに東京は35度、今年の夏は40度以上を記録しました」といっていました。そうなったらツンドラの氷はどうなるのかと考えるとぞっとします。

私たち人類は地球史上例外的に安定し恵まれた気候の下で発展できたのです。
いかに気候の安定が人類にとって重要かご理解いただけるのではないかと思います。

確かに、気候が安定していたから、人類の多様性が確保されたり、食料生産に余剰が生まれる事によって、文明が繁栄したのだと思います。


ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、いよいよ気候変動の要因についてお話しをお伺いしています。


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