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土壌汚染と不動産価格評価について−その1

財団法人日本不動産研究所
環境プロジェクト室長
平 倫明 様


日本不動産研究所ホームページ
http://www.reinet.or.jp/

「その道の人に聞く」今回のインタビューは、日本不動産研究所の平倫明様にお話しをお聞きしました。 平様は、不動産の鑑定、調査研究、コンサルティングを行う財団法人日本不動産研究所で、土壌汚染が不動産価格にどのような影響を与えるかの調査研究、またその評価方法の構築に携わられています。 今回は、港区にある平様のオフィスにお邪魔し、お話しをお聞きしました。

日本不動産研究所のホームページへ http://www.reinet.or.jp/

まずは、日本不動産研究所の概要をお聞かせください。

日本不動産研究所は、旧日本勧業銀行が行っていた調査・鑑定の業務を承継する形で、昭和34年に設立され、昨年で50年を迎えました。

旧日本勧業銀行は、戦前より不動産金融を扱う特殊銀行として、不動産に関する各種調査や鑑定評価などの活動を行っていたのですが、普通銀行への転換によって、それまでの鑑定評価業務は銀行業務上で扱う必要がなくなりました。これに伴い、不動産の鑑定評価に関わる各種業務を継承していく機関の設立や、当時、国レベルでの課題であった公共用地の取得問題に伴う不動産鑑定評価制度の確立が叫ばれ、不動産の総合調査研究機関として設立されたのが日本不動産研究所です。

設立目的である「不動産に関する理論的および実証的研究の進歩発展を促進し、その普及実践化と実務の改善合理化を図る」ことを使命として、東京の本社と各道府県8支社43支所の全国ネットワークを活用して、お客様の様々なニーズに応えるべく、業務展開を図っています。

どのような業務をされていますか。

基本は、不動産鑑定評価業務が中心となる機関ですが、大きくは3つ、不動産に関わる調査・研究、鑑定評価、コンサルティング業務を行っています。

「調査・研究業務」は、設立当初からの公益活動の中心となる業務で、「不動産を科学する」ことを主眼に、自主調査・研究である各種定期調査の公表、委託に基づく調査・研究、海外不動産の調査・研究と国際交流などを行っています。
地価公示などが公表されると、マスコミに過去の地価の推移を示したグラフが使われますが、今度よく見てみてください。そのグラフの左下に「日本不動産研究所調べ」と書いてあります。これが定期調査の中でも代表的な「市街地価格指数」で、昭和11年に旧日本勧業銀行が開始した調査を継続している調査です。そのほか、田畑、山林の価格調査などをはじめ、平成に入ってからは、賃料の推移を示した「全国賃料統計」、さらには投資家の方へのアンケート調査による不動産に対する期待利回りを示した「不動産投資家調査」などを定期的に公表し、様々な方に広くご活用頂いています。

「鑑定評価業務」は、まさに全国組織の基盤となる業務で、「全国をネットワークで結ぶ機関鑑定評価」により、客観的かつ中立的で精緻な鑑定評価を遂行しています。
実は入社した時にまず先輩に質問したのが「機関鑑定ってどういう意味ですか?」でした。当然「おまえはどこに入所したんだ!?」と怒られましたね(笑)。複数の頭と目で多面的な分析・検討・チェックをすることで、より客観性を高め、個人差や恣意性を排除した信頼性の高い鑑定評価を行うこと・・・、なるほど、これが機関鑑定の意味するところか・・・。入社早々、頭をゴツンという感じでした。

「コンサルティング業務」は、この2つの業務で蓄積された知識と経験などを基礎として、都市再生、まちづくり、土地活用の支援、市場分析や評価システムの構築など、様々なニーズに対応した業務をしています。
私は、環境プロジェクト室に異動する前は、このコンサルティング業務を担う部署の一つであるコンサルタント部で、主に市場分析、有効活用、再開発に関するコンサルティング業務に従事していました。

平さんは、特定事業部(環境プロジェクト室)に所属されているのですが、特定事業部(環境プロジェクト室)とはどのような事をされているのですか?

特定事業部は、2年前の平成20年8月に設置されました。

病院に内科、外科、小児科、皮膚科といった専門診療科目があるように、時代の変遷とともに、不動産を評価することにおいても特定分野の高度な専門性が要請されようになってきました。当研究所では、こうした要請に対応し、より高度なサービス提供ができるよう、平成10年に不動産証券化の対応に特化した「証券化プロジェクト室」、その後、土壌汚染をはじめとする環境要因の対応を専門とする「環境プロジェクト室」、企業会計、CRE戦略における評価・支援などに対応する「企業資産評価評価プロジェクト室」、さらに海外不動産、各種施設用途に特化した専門チームを設置してきました。
いわば専門医が連携して患者の病気やケガの治療にあたるのと同様に、この3つの室と各専門チームを束ねて専門軸を集約した組織体とし、その専門性に基づき関連部署と連携してお客様の様々なニーズに対応することを使命としているのが、特定事業部です。

その部の中で私のいる環境プロジェクト室は、平成15年4月に設置された室で、主に土壌環境及び建物環境に関わる評価・調査・支援業務を軸として、不動産に関わる「環境」要因が、その不動産の価値にどのような影響を与えているのか(与えるのか)、理論的かつ実証的に分析していくことが「環境」に専門特化した当室の使命です。設立当初の使命はやはり土壌汚染への対応。設立同年の鑑定評価基準の改正、土壌汚染対策法の施行に合わせ、実務での対応の軸をつくることが大命題でした。

平さんはどういう経緯で現在の仕事に就かれたのですか?よろしければ略歴をお聞かせいただけますか?

私は、もともと建築学科の出身で、都市計画を専攻していました。

当然、最初の興味は上物の「建物」。「どのように街が形成されるのだろう・・・」。でも、ちょうど私が大学生の時は、まさにバブル経済期で、至る所で開発、そして開発。その一方で、地価は高騰、「土地神話」と言われ始めた頃でした。その影響でしょうか、「なぜ、それが新聞記事になるのだろう・・・」、「地価が高騰することにどのような問題が・・・」、いつしか興味が上物から地べたの「土地」になっていました。
まさか、就職した先で、地べたも地べた、「地中」で起きている問題に携わるとは、もちろん想像もしていませんでしたけど(笑)。

また、私のいた大学では、当時日本では学問として明確になっていなかった「不動産学」を指向する「企画・経営コース」があって、そこで不動産のことを学んだことも大きなきっかけとなりました。
実は、このコースの中に日本不動産研究所の職員が講師を担当していた講座あって、いろいろな話を聞いているうちに、この研究所で不動産コンサルティング業務に従事したいな、と思って門を叩いたんです。景気がまだよかったせいか、無事入社が決まって、うまくコンサルタント部への配属も決まったんですが、その時に気がつきました・・・、講師をしていたのは、当時のコンサルタント部長だったんです。

当研究所への就職が決まった後のことですが、企画・経営コースの鑑定評価基準を学ぶ講座の講師の方にこんな質問をぶつけたんですが、その回答は今までも明確に覚えています。

「不動産鑑定評価とは、不動産の適正な価格を評価することなのに、なぜ「土地神話」などと言われているのでしょうか?」
「あなたの就職先が一番それを知っていますから、あなたはまず、そこでそれを学びなさい!」
「えっ、ハイ・・・」(笑)。

土壌汚染の問題とはいつから関わられたのですか?

環境プロジェクト室が設置されたのは、平成15年4月ですが、その前身の所内プロジェクトチームに参加した平成13年、環境省から「土壌環境保全対策の制度の在り方について」の中間取りまとめが公表された、既に土壌汚染対策法の制定が明確になっていた頃からです。

平成10年、不良債権処理・不動産投資支援業務を推進するための6つのプロジェクトを所内に立ち上げ、その一つのプロジェクトの中で、「土壌汚染地評価検討プロジェクトチーム」が編成されました。私が参加したのは3期めですから後半戦、いよいよ法規制がかかる不動産市場を見据え、鑑定評価基準の改正とも併せて、より具体的な検討に入っている時でした。とは言っても、参加当初は「土壌汚染って何だ?」、まさにそこからでしたけど(笑)。

DOWAさんとのおつきあいは、室設置後、欧米の土壌汚染問題の実態を調査する一環で、ドイツ、オランダに訪欧した時の調査団※でご一緒した頃からで、我々は不動産の価値を評価する側として、DOWAさんは土壌汚染リスクを評価する側として現場の情報や技術情報を頂きながら、勉強をさせて頂いております。業務上でもコラボレートさせて頂いているところであり、大変お世話になっております。
(※実はこの調査団の一員には、前回までこのコーナーでお話をされていた日本政策投資銀行の竹ケ原さんもいらして、ドイツ赴任当時で、大変お世話になりました。)

こうしたDOWAさんをはじめとする専門機関の方々のテクニカルサポートなどによって、やっと所内でも土壌汚染に対する確かな評価の方向性を導くまでのノウハウが浸透したかな、と感じています。室設置の当初は、1時間も会議などで席を空けると、全国の支社・支所からの相談電話メモが多い時で10枚程度並んでしまう状態が続いて、まさに「てんてこ舞い」でした。最近、救命救急医を対象としたドラマをよくやっていますが、これを見ると、なんだか当時の社内対応で「てんてこ舞い」していた時を思い出します(笑)。

ここまでお読みいただきありがとうございます。 この続きは、平様インタビューの(その2)として、次号のジャーナルでのお届けを予定しています。 次回の内容は、不動産鑑定と土壌汚染の関係のについて質問をしています。

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