異常気象について考えませんか
台風の被害にあわれた方々に、心よりお見舞い申し上げます。
■はじめに
2018年は近畿・四国地方を台風21号が襲い、今年は台風15号、19号、21号が関東・中部・東北地方を襲いました。豪雨による、土砂災害・堤防の決壊・洪水が広範囲で起こり、甚大な被害を及ぼしました。
台風は例年、日本に近づくと急速に勢力が弱まります。これは、緯度が高くなると海水温が下がり、台風の勢力が弱まるためです。
しかし、被害をもたらした台風は、強い勢力を維持したまま日本に近づきました。それは、太平洋の海水温が高かく、多量の水蒸気が台風に供給されたためです。
2019年10月18日、国土交通省は地球温暖化を考慮した水害対策へ転換すると報道発表を行いました。
国土交通省ホームページ:気候変動を踏まえた治水計画へ転換~「気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会」の提言とりまとめ~
出所:国土交通省ホームページ 報道発表添付資料
人生100年時代、足元の確実な状況だけを考えるのではなく、リスク(不確実性)も含めて30年・50年先を予想して今から備える必要があるのは、個人の家計も環境問題も同じだと思います。
また、最近、統計に関するビジネス書がベストセラーになりましたが、個人の経験だけで判断するのではなく、統計的に考えないと判断を間違えることがあるというのは、何事にも言える事ではないでしょうか。
異常気象に関しては国内外を問わず、様々な研究がなされています。まずは日本語で発表されたものから、異常気象に関連のあるものを、これからシリーズで紹介していきたいと思います。
■地球温暖化が台風の活動と構造に及ぼす影響
― 強風域拡大の可能性を示唆 ―
海洋研究開発機構と、東京大学大気海洋研究所によるプレスリリースです。
<ポイント>
現在気候と将来気候シミュレーションを比較した結果、地球温暖化時に
- 地球全体で平均した台風の発生数は22.7%減少
- 強い台風の発生数は6.6%増加
- 台風に伴う降水量は11.8%増加
- 台風の強風域の半径は10.9%拡大
台風の発生数 | 強い台風の発生数 | 台風に伴う降水 (半径100km以内) |
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NICAMの結果 | 22.7%減少 | 6.6%増加 | 11.8%増加 |
先行研究のまとめ | 5~30%減少 | 0~25%増加 | 5~20%増加 |
表 地球温暖化に伴う台風の発生数、強い台風の発生数、台風に伴う降水の変化
<その理由>
気温が上昇すると、空気中に含まれる水蒸気量は増加する
- →大気中の平均的な水蒸気量が増加
- →台風に供給される水蒸気も増加 →降水量が増加する
台風の壁雲の高さが高くなる →気圧差が大きくなり強風域が拡大する
図 台風の強風域が拡大するメカニズム
出所:洋研究開発機構 謎解き解説 台風の強風域が拡大
詳しくは、海洋研究開発機構「謎解き解説ページ 地球温暖化で、台風の強風域が拡大」をご確認ください。
【目次】
次回は、国立環境研究所気象研究所・東京大学・国立環境研究所が2019年5月に発表した、「平成30年7月の記録的な猛暑に地球温暖化が与えた影響と猛暑発生の将来見通し」を紹介します。
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました