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廃棄物処理法解説 はじめの一歩(その11)~排出事業者責任(4)~
処理が適正に行われるために必要な措置とは

前回は、不適正処理・不法投棄が行われた際の「支障の除去等の措置命令」対象者について説明しました。今回は、その要件の一つである「処理が適正に行われるために必要な措置」について説明します。

【1】支障の除去の措置命令の対象者について(再確認)

不法投棄や不適正処理が行われ生活環境保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められる場合、行政から支障の除去等の措置を講ずるようにとの措置命令が出されます。

しかし、処分者等に措置命令を出しても諸事情から、処分者等のみでは支障を除去することが困難か、又は講じても十分でない場合で、かつ、廃棄物の排出事業者が適正な処理料金を負担していないとき、最後まで適正処理が行われるための必要な措置を講じていないときなど、排出事業者に支障除去等の措置を採らせることが適当である場合には、「相当な範囲」で措置命令の対象となります。(廃棄物処理法第19条の6)

詳しくは、はじめの一歩(その10)~排出事業者責任(3)~不適正処理・不法投棄が行われた際の「支障の除去等の措置命令」対象者 をご確認ください。

「適正な処理料金を負担していないとき」や「最後まで適正処理が行われるための必要な措置を講じていない場合」とありますが、そうならないために、排出事業者は何をしなければならないのでしょうか。具体的に確認していきます。

【2】適正な処理料金とは?

  • 適正な対価を負担していない場合には、処理業者が適正な処理をできないため、不法投棄や不適正処理が行われる可能性が高くなりますので、処理状況について十分な注意が必要です。
  • 適正な対価を負担していない場合とは、一般的に行われている方法で処理するために必要とされる処理料金からみて著しく低廉な料金で委託する場合をいいます。
  • 地域における産業廃棄物の一般的な処理料金の半値程度又はそれを下回るような料金で処理委託を行っている排出事業者については、当該料金に合理性があることを示すことができない場合、適正な対価を負担していないことになります。
  • 適正な料金については、廃棄物の種類や量、処理方法、地域等によって異なりますが、食品リサイクル法の登録再生利用事業者は料金を公示していること、優良産業廃棄物処理業者は料金の提示方法を公表していることが、参考になります。
  • 委託先の選定に当たって、合理的な理由なく、適正な処理料金か否かを把握するための措置(例えば、複数の処理業者の見積もりをとること、委託する産業廃棄物と同種の事業系一般廃棄物の市町村での処理料金の確認)等を講じていない場合にも、措置命令の対象(法第 19条の6)になる可能性があります。

出所:「排出事業者責任に基づく措置に係る指導について(通知)」
環廃産発第1706201号 平成29年6月20日付け環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長通知

ポイント

●適正な処理料金か否かを把握する
(把握する手段)

  • 複数の処理業者の見積もりをとる
  • 食品残渣、廃紙などの自治体の清掃工場でも処理をしているような廃棄物は、自治体の処理料金を確認する

【3】最後まで適正処理が行われるための必要な措置とは?

廃棄物処理法 第12条第7項
産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

「最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置」について、環境省通知に記載があります。

  • 排出事業者が委託した産業廃棄物の処理状況を確認する方法としては、まず、当該処理を委託した産業廃棄物処理業者の事業の用に供する施設を実地に確認する方法が考えられます。
    また、優良産業廃棄物処理業者に処理委託している場合等、委託先の産業廃棄物処理業者がホームページ等で公表している処理の状況や事業の用に供する施設の維持管理の状況により、当該産業廃棄物の処理が適正に行われていることを間接的に確認する方法も考えられます。
  • 排出事業者責任を果たし、適正処理を確保するためには、委託先の施設の外観や情報を単に見るだけといった形式的な確認ではなく、委託した産業廃棄物の保管状況や実際の処理行程等について、処理業者とコミュニケーションをとりながら実地確認を行うことや、公開されている情報について、不明な点や疑問点があった場合には処理業者に回答を求めることなど、法に基づき適正な処理がなされているかを実質的に確認することが重要です。
  • なお、処理状況の確認については、公益社団法人全国産業資源循環連合会が実地確認のためのチェックリスト(建設廃棄物適正処理推進プログラムチェックリスト、産業廃棄物処理業廃棄食品実地確認チェックリスト)を作成しているので、参考にしてください。
    (全産連ホームページ:実地確認チェックリスト
  • 処理状況の確認を行っていない排出事業者については、措置命令(法第 19条の6)の要件である「法第 12条第7項等の規定の趣旨に照らし排出事業者等に支障の除去等の措置を採らせることが適当であるとき」に該当する可能性があるため、留意する必要があります。

出所:「排出事業者責任に基づく措置に係る指導について(通知)」
環廃産発第1706201号 平成29年6月20日付け環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長通知

ポイント

●処理施設の現地確認をする

  • 施設の外観を見るだけでなく、委託した産業廃棄物の保管状況や実際の処理行程等について、処理業者とコミュニケーションをとりながら実地確認を行う

●産業廃棄物処理業者がホームページ等で公表している処理の状況や施設の維持管理の状況で確認する

  • 不明な点や疑問点があった場合には処理業者に回答を求める

【4】最後に

廃棄物処理法に基づく排出事業者責任について説明すると、適正な価格かどうかをどうやって把握するのか分からない、現地確認は実施しているがこれでいいのか不安であるというお話を、多くお伺いしました。

ただ、「排出事業者責任に基づく措置に係る指導について(通知)」においても

廃棄物処理法第3条において、事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならず、また、当該廃棄物の再生利用等を行うことによりその減量に努めなければならないとする排出事業者責任を定めている。
排出事業者は、その廃棄物を適正に処理しなければならないという重要な責任を有しており、その責任は、その廃棄物の処理を他人に委託すれば終了するものではない。

とされており、把握するのが難しいからという理由で排出事業者責任が減免されるものではありません。
平成29年の不適正処理を契機に公表された、「産業廃棄物処理業〔廃棄食品 肥料化〕実地確認チェックリスト」では、廃棄物の受入から再生品の販売等の年間取扱量の数字に整合性はあるかどうかを、確認する際のポイントとして記載されているので、この点も参考になると思います。

参考リンク
「行政処分の指針について(通知)」(平成 30年3月 30日付け環廃産発第 18033028号 環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長通知)を参照してください。


上田 この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました

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