廃棄物処理法解説 はじめの一歩(その6)
特別管理産業廃棄物かどうかの判断 ~汚泥:排出元施設限定~
廃棄物処理法解説 はじめの一歩シリーズその4とその5では、廃油を例に、特別管理産業廃棄物に該当するかどうかを確認する流れについて説明しました。
今回は、「鉛」を含む「汚泥」の場合を例に、どのように確認していくのかについて、説明します。
廃棄物処理法施行令 第2条の4に、特別管理産業廃棄物の定義がされています。
【1】まずは施行令から
廃棄物処理法施行令 第2条の4 第5号ルに「次に掲げる汚泥、廃酸又は廃アルカリ及びこれらの廃棄物を処分するために処理したもの」についての規定があります。
廃棄物処理法施行令 第2条の4 第5号
ル 次に掲げる汚泥、廃酸又は廃アルカリ(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)及びこれらの廃棄物を処分するために処理したもの(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)
条文には(1)から(25)まであり、汚泥について成分と施設をもって限定しています。
原文から成分の限定と施設の限定を抜き出すと、以下の表になります。
成分 | 施設の限定 | |
---|---|---|
1 | 水銀 | 別表第3の23 |
2 | カドミウム | 別表第3の24 |
3 | 鉛 | 別表第3の25 |
4 | 有機燐 | 別表第3の26 |
5 | 六価クロム | 別表第3の27 |
6 | 砒素 | 別表第3の28 |
7 | シアン | 別表第3の29 |
8 | PCB | 別表第3の30 |
9 | トリクロロエチレン | 別表第3の31 |
10 | テトラクロロエチレン | 別表第3の32 |
11 | ジクロロメタン | 別表第3の33 |
12 | 四塩化炭素 | 別表第3の34 |
13 | 1,2-ジクロロエタン | 別表第3の35 |
14 | 1,1-ジクロロエチレン | 別表第3の36 |
15 | シス-1,2-ジクロロエチレン | 別表第3の37 |
16 | 1,1,1-トリクロロエタン | 別表第3の38 |
17 | 1,1,2-トリクロロエタン | 別表第3の39 |
18 | 1,3-ジクロロプロペン | 別表第3の40 |
19 | チウラム | 別表第3の41 |
20 | シマジン | 別表第3の42 |
21 | チオベンカルブ | 別表第3の43 |
22 | ベンゼン | 別表第3の44 |
23 | セレン | 別表第3の45 |
24 | 1,4-ジオキサン | 別表第3の46 |
25 | ダイオキシン類 | 別表第3の47 |
(1)~(25)までの成分によってそれぞれ、施設の限定に関しての規定がされています。
【2】次に施設限定について
施設の限定について確認するために、廃棄物処理法施行令 別表第3を確認します。
例えば、鉛に関しては、廃棄物処理法施行令 第2条の4第5号ル(3)に基づき、施行令別表第3の25の項を確認します。
廃棄物処理法施行令 別表第3の25
別表第五の三の項の中欄に掲げる施設(汚泥、廃酸及び廃アルカリの処理施設を除く。)を有する工場又は事業場
と規定されていますので、別表第5の3の項を確認します。
三 | 水質汚濁防止令別表第一第二十六号イ、ロ及びホ、第二十七号イ、ロ、ヌ及びル、第四十六号イ、ロ及びニ、第四十七号ロからホまで、第四十九号、第五十号、第五十三号、第五十八号(鉛を含有する電気用特殊陶磁器原料又はうわ薬原料の精製業の用に供するものに限る。)、第六十二号ロ(鉛電極又は鉛合金電極を用いて電解を行うものに限る。)、ホ及びヘ、第六十三号ハ及びホ、第六十五号、第六十六号並びに第七十一号の二イに掲げる施設並びに火薬製造業の用に供するトリニトロレゾルシン鉛製造施設並びにこれらの施設を有する工場若しくは事業場から排出される水又はこれらの施設を有する工場若しくは事業場において生じた汚泥、廃酸若しくは廃アルカリの処理施設 | 鉛又はその化合物 |
別表第5には、「水質汚濁防止法施行令別表第一」のうちのいくつかの施設と、火薬製造業の用に供する「トリニトロレゾルシン鉛製造施設」と記載されています。
【3】水質汚濁防止法施行令の別表第1を確認
「水質汚濁防止法施行令の別表第1のうちのいくつかの施設」がどのような施設なのか確認します。
長くなりますが、該当部分を抜き出します。
水質汚濁防止法施行令の別表第1
二十六号イ、ロ及びホ
二十六 無機顔料製造業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
イ 洗浄施設
ロ ろ過施設
ホ 廃ガス洗浄施設
第二十七号イ、ロ、ヌ及びル
二十七 前号に掲げる事業以外の無機化学工業製品製造業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
イ ろ過施設
ロ 遠心分離機
ヌ 廃ガス洗浄施設
ル 湿式集じん施設
第四十六号イ、ロ及びニ
四十六 第二十八号から前号までに掲げる事業以外の有機化学工業製品製造業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
イ 水洗施設
ロ ろ過施設
ニ 廃ガス洗浄施設
第四十七号ロからホまで
四十七 医薬品製造業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
ロ ろ過施設
ハ 分離施設
ニ 混合施設(第二条各号に掲げる物質を含有する物を混合するものに限る。以下同じ。)
ホ 廃ガス洗浄施設
第四十九号
四十九 農薬製造業の用に供する混合施設
第五十号
五十 第二条各号に掲げる物質を含有する試薬の製造業の用に供する試薬製造施設
(※第二条各号に掲げる物質を含有する試薬…今回の場合は鉛を含有する試薬)
第五十三号
五十三 ガラス又はガラス製品の製造業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
イ 研摩洗浄施設
ロ 廃ガス洗浄施設
第五十八号(鉛を含有する電気用特殊陶磁器原料又はうわ薬原料の精製業の用に供するものに限る。)
五十八 窯業原料(うわ薬原料を含む。)の精製業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
イ 水洗式破砕施設
ロ 水洗式分別施設
ハ 酸処理施設
ニ 脱水施設
第六十二号ロ(鉛電極又は鉛合金電極を用いて電解を行うものに限る。)、ホ及びヘ
六十二 非鉄金属製造業の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
ロ 電解施設(溶融塩電解施設を除く。)
ホ 廃ガス洗浄施設
ヘ 湿式集じん施設
第六十三号ハ及びホ
六十三 金属製品製造業又は機械器具製造業(武器製造業を含む。)の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
ハ カドミウム電極又は鉛電極の化成施設
ホ 廃ガス洗浄施設
第六十五号
六十五 酸又はアルカリによる表面処理施設
第六十六号
六十六 電気めつき施設
第七十一号の二イ
七十一の二 科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する研究、試験、検査又は専門教育を行う事業場で環境省令で定めるものに設置されるそれらの業務の用に供する施設であつて、次に掲げるもの
イ 洗浄施設
引用が長くなりましたが、特別管理産業廃棄物かどうかを判断する廃棄物(今回は例として)、鉛を含む汚泥が発生する施設が、これらの施設又はトリニトロレゾルシン鉛製造施設に該当するかどうかを確認します。
次回は、濃度による判定基準について説明します。
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました