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廃棄物処理法解説 はじめの一歩(その10)~排出事業者責任(3)~
不適正処理・不法投棄が行われた際の「支障の除去等の措置命令」対象者

不適正処理や不法投棄が行われ、生活環境保全の観点から支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められる場合、どのような措置を取ることができるのでしょうか?廃棄物処理法の規定を確認していきます。

【1】措置命令対象者(第19条の5)

不適正処理や不法投棄が行われて(条文に則して言えば、処理基準又は保管基準に適合しない保管・収集・運搬・処分が行われて)、「生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められる」場合、このような不適正処理や不法投棄を行った本人、委託基準に適合しない委託をした排出事業者、マニフェストに関する法の定めに違反した処理会社(運搬会社や処分会社)・排出事業者等に対して、必要な限度において支障除去等の措置を命ずる「措置命令」が出されます。

「支障の除去等の措置命令」対象者(廃棄物処理法 第19条の5)

第1号
不適正処理・不法投棄を行った者
第2号
委託基準に反して委託した者
第3号
マニフェストに関する義務違反をした者
  • マニフェストを交付しない者
  • 規定された記載事項を記載せず、又は、虚偽の記載をしてマニフェストを交付した者
  • マニフェストを送付せず、又は、規定された記載事項を記載せず、若しくは、虚偽の記載をしてマニフェストの写しを送付した者
  • マニフェストを回付しなかった者
  • マニフェスト、マニフェストの写しを保存しなかった者
  • マニフェスト確認義務に反し、適切な措置を講じなかった者
第4号
第3号(マニフェスト関連)違反が下請人によるものだった場合の元請人
第5号
第1号から第4号に掲げる者に対して、不適正処理又は違反行為を要求、依頼、そそのかし、助けた者
罰則:
五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金又は併科

不適正処理や不法投棄によって生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがある場合には、まずは、「廃棄物の山」に一定の措置を講じて、「支障」を除去しなければなりません。
そのために、上に示すような対象者(処分者等)に対して、支障の除去等の措置を必要な限度において命ずるのが「措置命令」ということになります。
ただし、不適正処理や不法投棄は計画的なものであることも多く、処分者等の手元には、廃棄物を撤去する費用が残されていない場合がほとんどです。

排出事業者も措置命令の対象となり得ますが、上記のとおり、委託基準に適合し、マニフェストについて法に違反していない排出事業者は、措置命令の対象とはなりません。

措置命令を受けた者が履行しない場合等には、生活環境に悪影響を生じさせている廃棄物を撤去するために、一定の要件の下に、行政代執行が行われることもあります(第19条の8)。
「行政代執行」とは、支障の除去などの措置命令が履行されない場合、行政が一旦支障を除去し、その費用を後で請求するという仕組みなのですが、廃棄物処理法の第19条の8は、行政代執行法の特例として、簡易迅速な手続により代執行を行うことを可能としています(法19条の8では、行政代執行法2条「不履行を放置することが著しく公益に反する」という要件を不要としています。)。
なお、処分者等に費用を請求しても回収することが難しいことも少なくなく、結果として、廃棄物の撤去・処分費用の多くを税金で賄っています。

【2】排出事業者に対する措置命令(第19条の6)

排出事業者が、委託基準等を遵守している場合でも(したがって、第19条の5の措置命令は出せない場合でも)、排出事業者責任の観点から、一定の要件を充足している場合には、排出事業者に対して、措置命令を出せる規定が2000年に追加されました。

1.と2.の両方に該当する場合には、委託契約書やマニフェストの取扱いが適正な排出事業者であっても、支障の除去等の措置命令の対象となります。(廃棄物処理法第19条の6)

  1. 法第19条の5による措置命令対象者の資力その他の事情からみて、支障の除去等の措置を講ずることが困難であるか、または、実施しても不十分な場合
  2. 以下のいずれかに該当する場合
    • 排出事業者が適正な処理料金を負担していないとき
    • 不適正処理が行われることを知っていた、又は知ることができたとき
    • 第12条第7項・第12条の2第7項(排出事業者は産業廃棄物・特別管理産業廃棄物の発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない)の趣旨に照らし、支障除去等の措置を採らせることが適当であるとき

罰則:五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金又は併科

上の【1】で説明した処分者等に措置命令を出しても、諸事情から処分者等のみでは、支障の除去等の措置を履行することが困難か、不十分な場合(1.)で、かつ、廃棄物の排出事業者が、適正な処理料金を負担していないときや最後まで適正処理が行われるための必要な措置を講じていない場合には、「相当な範囲」で措置命令の対象となります。

【3】最後に

第19条の6の排出事業者に対する措置命令の規定は、排出事業者責任が反映された一つの規定と理解されており、「委託基準など廃棄物処理法を順守していても、支障の除去などの措置命令が出される可能性がある」ということになりますので、実務上、注意が必要です。


上田 この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました

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