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循環型社会とサーキュラーエコノミーと日本 その10
〜世界循環経済フォーラム2018 スピーチやディスカッションより(5)〜

環境省 環境再生・資源循環局
総務課長
土居 健太郎(どい けんたろう)様

2017年にフィンランド・ヘルシンキで開催された「世界循環経済フォーラム」
2018年は横浜で開催されました。
今回は、その世界循環経済フォーラムの日本側の事務局をされている、環境省 環境再生・資源循環局 総務課長の土居健太郎様にお話を伺います。

世界循環経済フォーラム2018 (World Circular Economy Forum 2018)

主催:
日本国環境省 及び フィンランド・イノベーション基金(SITRA)
日程:
平成30年10月22日(月)~23日(火)
場所:
パシフィコ横浜 国際会議場
概要:
世界約85か国から民間企業、政府関係者その他の循環経済に関わる様々なステークホルダー(1,000名)が参加し、循環経済に関する知見やベストプラクティス等についての共有と議論が行われました。
環境省 世界循環経済フォーラム2018の開催について

【その10】世界循環経済フォーラム2018 スピーチやディスカッションの内容(5)

世界循環経済フォーラム2018では、国際機関やEU委員会などが、様々な提言をしていたのが印象的でした。今回も、引き続き提言の中からご紹介頂けますでしょうか。

今回も、International Institute for Sustainable Development(IISD:持続可能な開発に関する国際研究所)のレポートから引用してご紹介します。
IISDのレポートには、ここに紹介した以外にも世界循環経済フォーラム2018について書かれていますので、是非ご覧ください。

■International Institute for Sustainable Developmentホームページ
第2回世界循環経済フォーラム(World Circular Economy Forum)概要

今回は、グローバルバリューチェーンに関するセッションからご紹介します。

グローバルバリューチェーンと循環貿易(動画

出所:Sitraホームページ:
World Circular Economy
Forum 2018

シャドゥール・アグラワラ
OECD 環境局環境経済統合課長

  • 循環経済政策は国内で実施されることが多いことから、2次的なものや原材料の多様な取引の流れという点で貿易と循環経済とをつなげるよう検討する必要を強調

循環経済は、デザインから始まり、調達、製造、物流、販売、使用、使用終了、廃棄という直線の経済活動をループさせるもので、各ステージにおいて「廃棄物を2次原料としてリサイクルする」、「使用されなくなった製品をリファービッシュする」、「中古品としてリユースする」、「修理して使用する」、といったようにループの閉じ方は複数あり、様々な形での貿易がなされている。
と、説明されていました。

国際貿易での取り扱い重量(左)と価値(右)のグラフ。2003年と2016年を比較すると、重量当たりの価値は増加している。

Plastic Packaging – Shedding Light on the UK Data [6th March 2018]

輸出業者は、輸出されるすべての容器包装プラスチックは100%リサイクルされると主張する。これは、リサイクル率の算出の仕方と関連するが、輸出された後どうなっているのか、私たちは知らない。
貿易は相対的に利点はあるが、輸出されたリサイクル可能なものが環境に配慮して処理されているかをどうやって追跡するかにも留意しなければならない。

・1次・2次原材料に対する輸入需要に答える構造変化、インフラストラクチャーの転換に関わる課題、労働力の構造、特に発展途上国におけるデジタル化、サービス取引や循環型調達の増加などの機会といった今後起こり得る影響を概説

循環経済への移行による、貿易への潜在的な影響

  • 循環経済による構造変化により、国際貿易の流れが変化する
    • 一次二次原料への輸入需要が減少
    • 廃棄物やスクラップの輸出減少
  • 潜在的な機会
    • 循環経済への移行は、サービスの分野での貿易に新しい機会を提供する
    • 循環経済調達も、追加的な貿易の機会を提供する
  • 潜在的な挑戦
    • 資源に依存している途上国がインフラや労働力の構造の転換が必要になる
    • 将来のビジネスモデルなどを予見するのが難しい

DOWAエコジャーナル編集部訳

OECDホームページ
International Trade and the Transition to a More Resource Efficient and Circular Economy[18 Oct 2018]

Trends in policy indicators on trade and environment[01 Mar 2019]

出所:Sitraホームページ:
World Circular Economy
Forum 2018

ジェーン・コリネック
OECD 貿易農業局エコノミスト兼貿易政策アナリスト

  • 国際貿易体制が経済成長と天然資源利用のつながりを断ち切る方向に動く必要性を強調廃棄物や金属ごみを例にあげ、金属ごみの再資源化は競争力を持たないことが現状であると指摘

2次原料の国際貿易が、経済成長と天然資源利用をデカップリングさせていくために必要な理由として、以下の理由が考えられる。

  • 貿易によって、リサイクラーは物量を確保でき経済的なスケールで操業できる。
  • リサイクル施設や製錬所が、金属スクラップが発生するすべての国にある必要はない。
  • 金属をリサイクルしていくと品質が落ちていくが、OECDのいくつかの国でアルミスクラップの需要が既に飽和しているので、他の地域に輸出されて利用される。

輸出を制限すると、自国内での価格が下がるので、回収やリサイクルが進まなくなり、世界市場に出回る廃棄物やスクラップも減少し、リサイクルできるものの量も少なくなる。
とおっしゃっていたのが印象的でした。

出所:Sitraホームページ:
World Circular Economy
Forum 2018

小島道一
ERIAシニアエコノミスト

  • 貿易の負の影響がもっと取り上げられなければならないと強調
  • 廃棄物において適切な貿易規制を見出すことで、企業に便益があり得る

アジアのリサイクル施設、リユースショップ、リペアショップを数多く訪問した中で、良い施設もあるけれども、ある種の汚染を引き起こしている施設もあるので、リサイクル可能な廃棄物や2次原料の国際的な貿易の有益性だけでなく、貿易によるネガティブな面にも注意を払わなければならない。最近出版した「リサイクルと世界経済」でも強調したが、厳しすぎる規制は、善良なリサイクル業者やリユースショップを潰してしまうが、規制が弱くても、そうした善良な事業者を潰してしまうので、良いあんばいの規制レベルを見つけるように試みないといけない。と仰っていたのが、私も印象的でした。

最後に、グランドファイナルでのスピーチを紹介します。

今回の連載「その3〜世界循環経済フォーラム2018 概要〜」でも、グランドファイナルでのあきもと環境副大臣によるサマリーを紹介していますので、合わせてご確認ください。

閉会挨拶(動画

出所:Sitraホームページ:
World Circular Economy
Forum 2018

マリ・パンツァー
Sitraディレクター

  • WCEF2018は、経済の再生モデルへの移行がすでに始まっていることを浮彫りにしたと述べ、「地球の限界を超えることなく生きることが成功の唯一の道」であると宣言
  • 「気候変動」、「生物多様性の消失」、「天然資源の乱用」から成る世界規模の持続可能性危機の、第4の側面として「社会的不平等」が危機的状況にあることをあげた。
  • 最新のIPCC報告書では、地球温暖化による1.5℃効果に着目しているが、その提言では鍵となる解決策として循環経済を見過ごしていると指摘。経済の転換によって、より明るい可能性が生まれるとし、循環経済はそもそも持続可能性に大いに関わりがあると述べた。
  • 前進する歩みはどれも大切であり、地球の自然環境において私たちが守ることができる生物種はどれも大切であり、排出せずに済むCO2は1トンでも大切であると述べた。さらに、循環経済は福利と経済成長をもたらすこともできるとし、後世に引き継ぐ世界に配慮することも重要であると強調した。
  • 地球の限界を認識しながらも、包括的な開発は可能であると強く述べた。
  • 人間福利は消費量によって決まるものではなく、消費者は物質や製品でなくサービスに関心を置く世界となるであろうと述べた。

ここまでで、今回の連載は終了です。私も、ご紹介いただいたスピーチについて、動画を見ました。世界循環経済フォーラムに関しては、オープニングからグランドファイナルまで動画で公開されていて、動画を一時停止して単語の意味を確認したり、再生速度を落として視聴したり、字幕付きにすることもできて、とても便利でした。

便利なツールの力を借りながら、フォーラムでどんな議論がなされたのかを知ることができ、循環経済についてより俯瞰して捉えることができた気がします。


ここまでお読みいただきありがとうございました。


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