循環型社会とサーキュラーエコノミーと日本 その3
〜世界循環経済フォーラム2018 概要〜
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環境省 環境再生・資源循環局
総務課長
土居 健太郎(どい けんたろう)様
2017年にフィンランド・ヘルシンキで開催された「世界循環経済フォーラム」
2018年は横浜で開催されました。
今回は、その世界循環経済フォーラムの日本側の事務局をされている、環境省 環境再生・資源循環局 総務課長の土居健太郎様にお話を伺います。
世界循環経済フォーラム2018 (World Circular Economy Forum 2018)
- 主催:
- 日本国環境省 及び フィンランド・イノベーション基金(SITRA)
- 日程:
- 平成30年10月22日(月)~23日(火)
- 場所:
- パシフィコ横浜 国際会議場
- 概要:
- 世界約85か国から民間企業、政府関係者その他の循環経済に関わる様々なステークホルダー(1,000名)が参加し、循環経済に関する知見やベストプラクティス等についての共有と議論が行われました。
環境省 世界循環経済フォーラム2018の開催について
【その3】世界循環経済フォーラム2018 概要
2018年10月22日から23日にかけて開催された、世界循環経済フォーラム(World Circular Economy Forum 2018:WCEF2018)の様子を2回に分けてお伺いします。
WCEF2018は、招待制ですがWCEF2018のウェブサイトで当日の様子を動画で見る事ができるんですね!
そうです。WCEF2018のwebサイトのプログラム紹介と共に、動画を掲載しています。
例えば、オープニングの様子は、以下のページから見る事ができます。
WCEF2018 Grand Opening - Sitra
グランドオープニング ‐2050年に向けた循環ビジョン(動画)
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写真左:愛宕陣太鼓連響風組 写真右:モデレーター:高村ゆかりさん(東京大学教授)、ピーター・ウッドワード(プロファシリテーター)
とっても豪華な内容ですね。
安倍総理からのビデオメッセージが始まった時は、多くの人がビデオメッセージをビデオ撮影していました。さすが、総理の影響力は大きいなと思いました。
安倍総理と原田環境大臣の開会あいさつの内容を以下に紹介します。
【安倍総理からのビデオメッセージ】
- 国内の法制度を整え、循環型社会を築いてきた日本において、民間事業者の優れた技術は大きな強みであること
- 2020年の東京オリンピック・パラリンピックですべてのメダルをリサイクル金属100%で制作する、史上初のチャレンジに挑むこと
- 世界における循環経済の確立に向け、イノベーション、社会システムの構築など、あらゆる面からリードして行くこと
- 海洋プラスチックごみについても、アジアをはじめとする各国との連携を強化し、国際的な取組を力強く進めていくこと
などが、盛り込まれていました。
写真:安倍総理のビデオメッセージ
【原田環境大臣の開会あいさつ】
- 現在の大量生産・大量廃棄という経済モデルのままでは限られた天然資源がひっ迫し、世界の持続可能な成長が困難となることが明らか
- 地球温暖化には疑う余地はなく、世界の多くの人がこれまで経験したことのないような、酷暑やハリケーン、台風に直面し、気候変動の影響を実感している
→ 人類の生存基盤である、地球環境が損なわれている - 人類は、大量生産・大量消費の経済から脱却し、資源を繰り返し使い廃棄物を削減する「循環を基調とする文明社会」を築かなければいけない
- 海洋プラスチック汚染の課題に対応するため、優れた取り組みを共有し、賢い消費を含む具体的な行動につなげるために、環境省は、「プラスチック・スマート」という新たな取組を始めた
写真:原田環境大臣の開会あいさつ
安倍総理や原田環境大臣のスピーチの中で、海洋プラスチックごみについて触れられていましたが、フィンランド住宅・エネルギー・環境大臣のスピーチでも海洋プラスチックごみについて触れられており、その後のセッションでも、度々、海洋プラスチックごみの話題は出てきていたのが、印象的でした。
それと、ハイレベルトークの冒頭に、中学生のスピーチも行われました。私は、大学時代ESS(English Speaking Society)に所属していまして、英語でスピーチをする機会もありましたが、中学生のスピーチは素晴らしすぎて聞き惚れました。
写真:中学生による「2050年に向けた希望」
WCEFは、フィンランド政府がフィンランド・イノベーション基金(Sitra)を通じて進めている世界的取組の一つで、世界のビジネスリーダー、政策策定者、専門家が一堂に会して、循環経済に関する世界の知見を発表します。
「どうすれば企業が循環経済を通して新たなビジネスチャンスをつかみ、競争優位性を築けるか」、「循環経済が国連の持続可能な開発目標(SDGs)にどのように貢献できるか」などの課題も検証されます。
22日の午後は、4つのパラレルセッションが行われました。
これらも、すべてではないですが、動画がwebサイトで公開されています。
■パラレルセッション
都市における食品循環システム(動画)
モデレーター:アシマ・スクデブ、エレン・マッカーサー財団
循環経済ソリューションの実施において、都市は極めて重要な役割を担っている。本セッションでは、都市におけるバイオサイクルの機会を検証し、フードバリューチェーンを完結させる方策を話し合いながら、世界中絵都市化が進む中での食料生産の解決策を探る。
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循環経済形成のためのファイナンスとインパクト投資(動画)
モデレーター:ティモ・マケラ、フィンランド・イノベーション基金(Sitra)シニアアドバイザー
循環経済への移行には大規模な投資や資金が不可欠である。本セッションでは、循環経済を支える国際金融機関の役割、ならびにインパクト投資を活用して循環経済移行への民間投資を呼び込むためのツールやメカニズムについて議論する。
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循環型社会に向けた日本の取組(動画)
モデレーター:竹本和彦、国連大学サステイナビリティ高等研究所 所長
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第4次産業革命の技術活用による循環経済促進
モデレーター:江田麻季子、世界経済フォーラム(WEF)日本代表
電子機器、プラスチック、フード及びバイオ・エコノミーの分野において、循環経済の拡大・加速を妨げている主な課題は何か?
本セッションでは、循環経済移行における緊急課題を解決するために第4次産業革命技術の応用に取り組んでいる循環型経済加速プラットフォーム(PACE)の活動を参考に、電子機器、プラスチック、フード及びバイオ・エコノミーの分野に焦点を当てながら、循環経済移行の障壁を取り除くために必要な枠組みについて考える。
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分科会の動画も、公開されているんですか。英語ですけど、発表スライドも見やすく表示されていて、分かりやすいです!
分科会の後に、
プレナリー(全体会議)として、開発途上国での循環経済による社会的、環境的、経済的便益に関して、循環経済に関する国・地域間の大きなギャップを埋めるための課題・機会の検証がなされました。
こちらも、webサイトから動画で見ることができます。
全体会議:開発途上国での循環経済による社会的、環境的、経済的便益(動画)
モデレーター:高村ゆかり、東京大学 教授、ピーター・ウッドワード、プロファシリテーター
発展途上国では、互いに密接に関連した環境的・社会的・経済的課題を解決するために循環経済をどのように活用すればいいか?
本全体会合の主なテーマは、循環経済に関する国・地域間の大きなギャップを埋めるための課題・機会の検証である。さまざまな社会的・経済的・環境的利益を生み出し、持続可能な開発目標の達成を支援することを目標に、各国の実情に合わせて革新的な循環経済アプローチを適用・拡大するための幅広いオプションを提示する。
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食品循環、ファイナンス、第4次産業革命、日本の取組み紹介と広い分野について、議論されたんですね。2日目のプログラムも教えて下さい。
2日目のプログラムは以下の通りです。
全体会議:循環経済による持続可能なライフスタイルと消費者のための問題解決(動画)
モデレーター:高村ゆかり、東京大学 教授、ピーター・ウッドワード、プロファシリテーター
私たち一人ひとりが循環ライフスタイルに移行するにはどうすればいいのか?また資源の消費や循環経済の達成において個人が下す決断にはどれほど大きな意味があるのか?本セッションでは、循環ライフスタイルや循環経済における個人・企業の役割を深く掘り下げる。
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■パラレルセッション
循環経済に向けた教育(動画)
モデレーター:ピーター・ウッドワード、プロファシリテーター
未来の教育者には循環経済的思考を備えていることが求められている。本セッションでは、先進的な教育制度を確立しているフィンランドと日本が、循環経済に向けた教育について話し合う。
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グローバルバリューチェーンと循環貿易(動画)
モデレーター:ソフィー・ブートレジエ、経済協力開発機構(OECD)資源生産性・廃棄物作業部会(WPRPW)議長
プラスチックや金属などのリサイクル材にはどのような市場があり、循環経済は国際貿易にどのような影響を与えるのだろうか?本セッションでは、国際貿易がどのように循環経済の移行を支援できるかを紹介する。
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プラスチックの循環経済(動画)
モデレーター:ダニエル・カレハ、欧州委員会 環境総局 総局長
プラスチックは経済や日々の生活において重要かつ身近な材料で、社会のさまざまな問題の解決に役立っている。しかし、現在採用されているプラスチックの生産・使用・廃棄方法は環境に有害なだけでなく、より資源効率的な循環アプローチによって経済的利益を享受する機会を奪っている。複雑なバリューチェーンを見直し改善するには、すべての人々による一層の努力と協力が不可欠だ。
本セッションでは、既存の拡張可能な革新的ソリューションによって循環経済がプラスチックのバリューチェーンにどのような機会をもたらすかを検証する。
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生きていくのが精一杯な地域では、ごみを分別しようという気にはならない。貧困地域でプラスチックごみを買い取り、ソーシャルプラスチックの製造に取りんでいる、プラスチックバンク デイヴィット・カンツ氏
循環経済の企業事例(動画)
モデレーター:カリ・ヘレヴィ、フィンランド・イノベーション基金(Sitra)プロジェクトディレクター
企業は循環ビジネスモデルの構築においてどのような機会と課題に直面しているのか?本セッションでは、循環ビジネスイノベーションの成功事例や、循環ソリューションの構築における中小企業と大企業の協力モデルを紹介する。
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循環経済に関する最先端の知見(動画)
モデレーター:バス・デ・レーウ、世界資源フォーラム マネージングディレクター
現在、循環経済をめぐる興味深いテーマについて、どのような科学研究が行われているのか?また科学の発見は循環経済ソリューションの商品化にどう役立つだろうか?
本セッションでは、循環経済に関する最新の知見を紹介しながら、企業が科学の進歩をどのように活用できるかを考える。
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自動車革命と循環経済実現に向けた未来の輸送(動画)
モデレーター:西村英俊、東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)事務総長
モビリティ革命はどのような原動力によって引き起こされ、輸送部門にはどのような循環経済ソリューションがあるだろうか?本セッションは、クリーン輸送のための新たなソリューションや、モビリティの未来像に関するさまざまな視点を紹介する。
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持続可能な消費:循環経済へのドライバーと気候変動への便益(動画)
モデレーター:ティム・カステン、国連環境計画(UNEP)
本セッションでは、市場の需要と消費者の決断が経済の循環性促進や温室効果ガス排出量削減において果たしている基本的役割について説明する。また循環型消費を促すために現在行われている対策や優良事例を紹介しながら、それらをスケールアップまたは再現するメカニズムの構築をサポートする。
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webサイトから、グループディスカッションの結果を投稿し、それを聴衆と共有
循環経済と地方の活性化(動画)
モデレーター:C.R.C. モハンティ、国連地域開発センター(UNCRD)
循環経済によって水消費が均衡すれば地方創生が促される。また単に天然資源を抽出するだけでなく、精製も行って生産価値が向上すれば、地方の雇用機会を増大させることができる。本セッションでは、これらの機会を地域別に検証する。
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■WCEF2018グランドファイナル
グランドファイナル:循環経済に向けた国際協力(動画)
モデレーター:高村ゆかり、東京大学 教授、ピーター・ウッドワード、プロファシリテーター
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【あきもと環境副大臣による、G20に向けた日本のサマリー】
- 世界的な課題の解決には、資源を廃棄物にするのではなく、長く・繰り返し使い続けるループを作る循環経済への移行が不可欠であり、
- 国、企業、個人等の各主体の具体的な目標設定と共有
- 循環経済の構築に向けたムーブメントの促進
- 官民連携による行動の拡大
の3つの行動についての提言がなされました。
世界循環経済フォーラムは、招待制のハイレベルセッションなのですが、発表している方々の組織を見ると、経済協力開発機構(OECD)、国連環境計画(UNEP)、国連工業開発機関(UNIDO)、エレン・マッカーサー財団、地球環境ファシリティ(GEF)、世界経済フォーラム(WEF)など、様々な国際機関があり、学校で習ったり、ニュースで聞いた事のある様な団体から、初めて聞いた団体もありました。様々な団体が、「循環経済:Circular Economy」に関して知見を発表し、ディスカッションするという意味で、非常にワクワクする場でした。
次回のWCEF2018レポートもお楽しみに!
【関連ホームページ】
環境省ホームページ
世界循環経済フォーラム(WCEF)2018のプログラム発表について(平成30年10月15日)
世界循環経済フォーラム(WCEF)2018 プログラム(詳細版)
ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、もう少し詳しくWCEF2018の内容をご紹介します。