循環型社会とサーキュラーエコノミーと日本 その7
〜世界循環経済フォーラム2018 スピーチやディスカッションより(2)〜
環境省 環境再生・資源循環局
総務課長
土居 健太郎(どい けんたろう)様
2017年にフィンランド・ヘルシンキで開催された「世界循環経済フォーラム」
2018年は横浜で開催されました。
今回は、その世界循環経済フォーラムの日本側の事務局をされている、環境省 環境再生・資源循環局 総務課長の土居健太郎様にお話を伺います。
世界循環経済フォーラム2018 (World Circular Economy Forum 2018)
- 主催:
- 日本国環境省 及び フィンランド・イノベーション基金(SITRA)
- 日程:
- 平成30年10月22日(月)~23日(火)
- 場所:
- パシフィコ横浜 国際会議場
- 概要:
- 世界約85か国から民間企業、政府関係者その他の循環経済に関わる様々なステークホルダー(1,000名)が参加し、循環経済に関する知見やベストプラクティス等についての共有と議論が行われました。
環境省 世界循環経済フォーラム2018の開催について
【その7】世界循環経済フォーラム2018 スピーチやディスカッションの内容(2)
世界循環経済フォーラム2018では、国際機関やEU委員会などが、様々な提言をしていたのが印象的でした。今回も、引き続き提言の中からご紹介頂けますでしょうか。
今回は、ライフスタイルや消費に関するセッションからご紹介します。
全体会合:循環経済による持続可能なライフスタイルと消費者のための問題解決(動画)
出所:Sitraホームページ:
World Circular Economy
Forum 2018
マーカス・テルホ
Sitra 市民の資源有効利用(Resource-wise Citizen)プロジェクトディレクター
- ものの所有によって幸福の感情を得られるとしながら、消費者が狩猟採集の慣行を引き継ぎ、これを拡大させてきた経緯を辿った。
マーカス・テルホ氏はプレゼンテーションの中で、子供の頃から「他の子は持っている物を自分も持ちたい」と思い、大人になってからも物を持つために働き、家を買い、さらに物を買う、と話されていましたが、北欧は「物を大事にする」イメージがあったので、フィンランドも、日本も同じなんだなと驚きました。
- パリ協定のもとで削減されている排出の大部分は個人や世帯によるものであろう
- 炭素への影響の少ない行動と健康や収入といった主要な動機とを結びつけることが大きな成果につながる
- 持続可能な生活を送っていると自負する人々は、人生に対する満足度も高い
- 私たちの個人の意思決定は、小さなものだが、総体として大きなインパクトとなる。
フィンランドのすべての世帯のうち1人がCO2排出量を20%減らせば、フィンランドのCO2削減目標の37%分が削減でき、1世帯のうちの2人がCO2排出量を20%減らせば、フィンランドのCO2削減目標の73%分が削減できる。
- 私たちの毎日の行動の50%以上は同じ行動なので、生活習慣に環境負荷が低い行動に変えることは、チャレンジであり、機会である。
- 個人に興味を持たせて変えさせるには、健康、幸せ、時間を節約できる、お金を節約できる、楽しい、といった動機と結びつける事が必要。
例えば、「車を使うのを控えましょう」というのではなく、「車ではなく、自転車に乗ったり歩いたりすると、健康にいいよ、とか、楽しいよ」伝えることで、人々に生活習慣を変えた方がいいと納得させられる。
そして、多くの企業に環境負荷の低い製品・サービスを提供してもらう必要があるが、それは、
DESIRABLE(好ましい)
ACCESSIBLE(便利)
BOLD(大胆)
でなければいけない、と締めくっていました。
私は環境に配慮した生活を心がけています。でも、「環境に配慮した行動」は無数にあり、そのうち「自分が実行できること(自分にベネフィットがある事・不便ではない事)」を実行しているだけなんだなと思い直しました。
世界循環経済フォーラムの内容からは離れていますが、日本の状況をご説明るすと、地球温暖化対策計画によると家庭部門からのCO2排出量は増加傾向で、2013年度のCO2排出量は201百万トンでした。
2030年目標は122百万トンであり、2013年度と比べて40%削減しなければ目標は達成できませんので、家庭部門からの排出を減らすための取組を行っています。
出典:地球温暖化対策計画
2030年度の排出量の目安
2030年度の各部門の排出量の目安 | 2013年度(2005年度) | ||
---|---|---|---|
エネルギー起源CO2 | 927 | 1,235(1,219) | |
産業部門 | 401 | 429(457) | |
業務その他部門 | 168 | 279(239) | |
家庭部門 | 122 | 201(180) | |
運輸部門 | 163 | 225(240) | |
エネルギー転換部門 | 73 | 101(104) |
出所:環境省ホームページ:日本の約束草案(2020年以降の新たな温室効果ガス排出削減目標)
家庭部門からのCO2排出量を減らすための取組について、具体的にどのような取組を行っているのか、教えて下さい。
環境省で行っている、様々な取組をご紹介します。
① COOL CHOICE
COOL CHOICEホームページでは、家庭で実践できる様々な活動をご紹介しています。
クールビズやウォームビズを聞いた事がある方は多いと思いますが、それだけでなく車・家電・家などについての活動も行っています。
①−1 低炭素アクション
①−2 COOL CHOICE 推進キャンペーン
② ライフスタイルイノベーション
NEB(Non Energy Benefit)という新たな指標を用いながら、低炭素型社会の実現に向けた新たなライフスタイルをとらえ、促進していこうとする取組みを紹介しています。
ライフスタイルイノベーションは、「低炭素だから」だけではなく、「健康面で」「心理面で」良い事があって、「快適」な生活につながるという内容だったので、しばらく読みふけってしまいました。
価値観は、人によって違いますが、快適な生活をしながら、低炭素で次世代にも優しい生活ができたらいいなと思いました。
③ Re-Style
「限りある資源を未来につなぐ。今、僕らにできること。」を、キーメッセージに「3R」(リデュース(ごみの発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用))の取組を多くの方々に知ってもらい、自分たちの暮らしに取入れてもらうよう、環境の面だけではなく、歌やダンス、アニメや動画などのサブカルチャーなどと連携したコンテンツを発信し、楽しみながら3Rについて知り、循環型社会のライフスタイル「Re-Style」をはじめていただけるような情報をお届けしています。
④ 「プラスチック・スマート」キャンペーン
ポイ捨てなどにより、回収されずに河川などを通じて海に流れ込む「海洋プラスチックごみ」が日々発生しています。
世界全体で日々大量に発生する「海洋プラスチックごみ」は長期にわたり海に残存し、このままでは2050年までに魚の重量を上回ることが予測されるなど、地球規模での環境汚染が懸念されています。
こうした問題の解決に向けては、個人・企業・団体・行政などのあらゆる主体が、それぞれの立場でできる取組を行い、プラスチックと賢く付き合っていくことが重要です。
環境省では、そうした取組を応援し、さらに広げていくため「プラスチック・スマート」キャンペーンを実施しています。
⑤ 3010活動
3010運動は、宴会時の食べ残しを減らすためのキャンペーンで、
<乾杯後30分間>は席を立たずに料理を楽しみましょう、
<お開き10分前>になったら、自分の席に戻って、再度料理を楽しみましょう、
と呼びかけて、食品ロスを削減するものです。
職場や知人との宴会から始めていただき、一人ひとりが「もったいない」を心がけ、楽しく美味しく宴会を楽しみましょう。
⑥ 都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の約5,000個の金・銀・銅メダルを全国各地から集めたリサイクル金属で作る国民参画型プロジェクト。東京2020大会をきっかけに、持続可能社会の仕組みを作る取り組みです。(主催:東京2020組織委員会)
【関連リンク】
環境省ホームページ
地球温暖化対策のための国民運動実施計画について
日本版ナッジ・ユニット(BEST:Behavioral Sciences Team)について
ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)を含む行動科学の知見(行動インサイト)に基づく取組が政策として、また、民間に早期に社会実装され、自立的に普及することを目標に、環境省のイニシアチブの下、2017年4月に発足
たくさんの取組があるんですね! Re-Styleはサポーターにアイドルユニットがいたり、プラスチックスマートは、Instagramをしていたり(#プラスチックスマート)と、若い世代も参加しやすい活動もあるのに、驚きました。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回も、スピーチやディスカッションの内容についてご紹介頂きたいと思います。