循環型社会とサーキュラーエコノミーと日本 その9
〜世界循環経済フォーラム2018 スピーチやディスカッションより(4)〜
環境省 環境再生・資源循環局
総務課長
土居 健太郎(どい けんたろう)様
2017年にフィンランド・ヘルシンキで開催された「世界循環経済フォーラム」
2018年は横浜で開催されました。
今回は、その世界循環経済フォーラムの日本側の事務局をされている、環境省 環境再生・資源循環局 総務課長の土居健太郎様にお話を伺います。
世界循環経済フォーラム2018 (World Circular Economy Forum 2018)
- 主催:
- 日本国環境省 及び フィンランド・イノベーション基金(SITRA)
- 日程:
- 平成30年10月22日(月)~23日(火)
- 場所:
- パシフィコ横浜 国際会議場
- 概要:
- 世界約85か国から民間企業、政府関係者その他の循環経済に関わる様々なステークホルダー(1,000名)が参加し、循環経済に関する知見やベストプラクティス等についての共有と議論が行われました。
環境省 世界循環経済フォーラム2018の開催について
【その9】世界循環経済フォーラム2018 スピーチやディスカッションの内容(4)
世界循環経済フォーラム2018では、国際機関やEU委員会などが、様々な提言をしていたのが印象的でした。今回も、引き続き提言の中からご紹介頂けますでしょうか。
今回も、International Institute for Sustainable Development(IISD:持続可能な開発に関する国際研究所)のレポートから引用してご紹介します。
IISDのレポートには、ここに紹介した以外にも世界循環経済フォーラム2018について書かれていますので、是非ご覧ください。
■International Institute for Sustainable Developmentホームページ
第2回世界循環経済フォーラム(World Circular Economy Forum)概要
全体会合:循環経済による持続可能なライフスタイルと消費者のための問題解決(動画)
出所:Sitraホームページ:
World Circular Economy
Forum 2018
アニュ・マンティ
Sitra シニアリード
- 環境へのインパクトに「我々の行動は全て影響する」
■ライフスタイルテスト
- Sitra が立ち上げ、フィンランドではすでに国民の1割が使用している持続可能な「ライフスタイルテスト」の概要を説明
私もライフスタイルテストをしてみました。
ショッピングの質問で、「買い物の習慣」についての設問があり、正直に「買い物大好き!」を選びましたが、全体の結果は、フィンランド人の平均よりもCO2排出量が少ない、という結果になりました。環境先進国なイメージのあるフィンランド人の平均よりも少ない結果で、かなり嬉しかったです。
私は、家が狭く、別荘を持っていないので、住宅に関しては平均よりもCO2排出量(フットプリント)が少なくなったと思われます。移動についても、週末に遠出をあまりしないし、平日は公共交通機関を使っているので、平均よりも少なくなったようです。
食事は、フィンランド人平均よりもCO2排出量がかなり多いのですが、これは「毎日赤肉(牛豚等)・鶏肉や魚を食べている」と答えたためと思われます。もっと野菜を食べましょう、とコメントされました(笑)「ショッピング大好き!」と答えたからか、ショッピングは平均よりも少し排出量が多い結果になりました。
フィンランドのどこに住んでいますか?という質問があるので、フィンランドに住んでいない私の結果は正確ではないとは思いますが、CO2排出量を計算するだけでなく、あなたの行動は良いわよ!と褒められたり、もっと野菜を食べましょう!とアドバイスをもらえたりするので、おもしろかったです。
■日本の取組
参考に日本での取組を紹介しますと、家庭部門の温室効果ガス排出削減を進めるため、環境省では地球温暖化や省エネ家電などに関する幅広い知識を持った診断士が、各家庭の実情に合わせて実行性の高い省CO2・省エネ提案・アドバイスを行う「うちエコ診断」を推進しています。
CHOOL CHOICEの取組として、省エネ家電への買換えによるCO2削減効果やランニングコスト削減効果等が簡単に分かる「しんきゅうさん」というサイトも開設しています。
東京都地球温暖化防止活動推進センターは、地球温暖化防止を目的に、家庭で消費する電気・ガス・水道などのエネルギーのCO2排出量を算出できる「環境家計簿」を提供しています。毎月、家庭でどのくらいCO2を排出しているか、データを積み重ねることにより、ムダなエネルギー消費やCO2の削減につなげることができます。
また、IGES(地球環境戦略研究機関)と国立環境研究所が、長期低炭素社会シナリオの検討を行うための分析ツール「2050 低炭素ナビ」を共同開発しています。
「2050低炭素ナビ」では、運輸部門、家庭部門、業務部門、産業部門でどの様な取組がなされて、電源構成がどう変わると、費用と排出削減がどうなるのか、あれこれ試してみる事ができるんですね。
「2050低炭素ナビ」では、「将来どのようなエネルギー構造を構築すべきか」、「エネルギー安全保障を確保しつつ、2050年へ向けた野心的な温室効果ガス(GHG)排出削減目標を達成するには、どのような低炭素技術を選択すべきか」といった、気候・エネルギー政策に関する様々な問いに答えを出す一助となると考えています。
■100 SMART WAYS
アニュ・マンティさんの講演に戻りますと、
- 変化を起こすのに何から始めると良いかがわからない人もいるため、Sitraが広めている「環境配慮型・持続可能型になる100の方法」の紹介もありました。
あなたの炭素排出量を半分に減らし、生活の質を上げることは可能でしょうか?
答えはYESです。
あなたの選択 ~どのように暮らし、食べ、移動するか~ は環境影響に直結しています。大きなことか小さなことかにはかかわらず、あなたが行うすべては寄与します。
100WAYS TO BE SMART & SUSTAINABLE
DOWAエコジャーナル編集部訳
フィンランドのおよそ70%の温室効果ガスは、個人としての私たち、そして、私たちの生活スタイルに起因しています。温室効果ガスは、私たちがどのように暮らし、旅をして、食べて、何を買ったのかの結果です。日常生活や毎日の選択によっても、私たちは排出量を削減することが可能になります。このWEBサイトでは、地球の許容範囲内でよく生きるための100の方法を提供しています。それらの選択は、生活の質を向上させられるだけでなく、日常生活による環境負荷を下げることができるのです。
100WAYS TO BE SMART & SUSTAINABLE
DOWAエコジャーナル編集部訳
この100WAYSは、移動・旅行・暮らし・食・サービス・善い行い、という分野別のカテゴリ分けと、環境影響が大きい、中くらい・小さいという切り口でも選ぶことができますね。
実際に100WAYSとして提案されている方法は、循環型社会とサーキュラーエコノミーと日本 その7 で紹介いただいた、日本での「CHOOL CHOICE」:クールビズ、ウォームビズ、エコドライブ、スマートムーブ、明かり未来計画、5つ星家電買替えキャンペーン、エコ住キャンペーン、チョイス!エコカーキャンペーン、できるだけ1回で受け取りませんかキャンペーン、や、ライフスタイルイノベーション、Re-Style、プラスチックスマート、3010運動、などによる取り組みと同様のものもあれば、野菜中心の生活をお勧めするようなものもあり、面白いと思いました。
【関連ホームページ】
IGESホームページ
2050日本低炭素ナビ 概要と排出削減の経路の設定(2015年3月)
国立環境研究所ホームページ
日本版2050パスウェイ・カリキュレーター(通称:2050低炭素ナビ)の開発について
~手軽に操作可能な長期低炭素社会シナリオ分析ツール:気候安定化への議論への利用を期待~(2014年5月)
ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回も、スピーチやディスカッションの内容についてご紹介頂きたいと思います。