拡大生産者責任制度について その4
〜日本の各種リサイクル法における拡大生産者責任〜
国立研究開発法人 国立環境研究所
資源循環・廃棄物研究センター
循環型社会システム研究室 室長
田崎 智宏(たさき ともひろ)様
「EPR」という言葉をご存知ですか。
EPRは、Extended Producer Responsibilityの略で、日本語では、「拡大生産者責任」と呼ばれています。
2014年は家電リサイクル法、容器包装リサイクル法、自動車リサイクル法等の見直しの年でもあり、その中で、「拡大生産者責任」という言葉を聞く機会もあったと思います。
今回は、家電リサイクル見直しに関する議論が行われていた中央環境審議会 循環型社会部会 家電リサイクル制度評価検討小委員会の委員でもある、国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター循環型社会システム研究室 田崎さまに、「拡大生産者責任」についてインタビューをさせていただきました。
【その4】日本の各種リサイクル法における拡大生産者責任
今回は、日本の各種リサイクル法は、どの様に設計されているのか、拡大生産者責任の視点から説明して頂きます。家電リサイクル法はどのように拡大生産者責任が適用されていますか?
昨年の廃棄物資源循環学会で発表した家電リサイクル法の役割分担を示した図を用いて説明します。家電リサイクル法では、生産者である「メーカーは使用済み家電が「戻ってきたら責任を取る」という仕組みになっています。
使用済み家電を生産者に戻す責任は誰にあるかというと、家電リサイクル法上は小売業者で、廃棄物処理法上は自治体です。
家電リサイクル法では、小売業者に引き取り義務がある条件を2つ定めています。買い替えの場合と過去に販売した製品の場合で、いずれも消費者から求められたら引き取らなければなりません。
これらの条件に合致しない使用済み家電(「義務外品」と呼ばれます。)は家電リサイクル法の適用外になって、家電リサイクル法ではなく、廃棄物処理法が適用されます。
これら廃棄物処理法では家庭から出る廃棄物の収集責任は自治体にあるので、自治体が使用済み家電を集めなくてはいけないことになります。
しかし、もともと家電リサイクル法は自治体が使用済みのテレビや冷蔵庫などの処理に困っていたために制定されたという経緯があるので、自治体は家電リサイクル法ができたことから、自分たちの役割は無くなった、あるいは大幅に減少したと考えかなり手を引いてしまっています。
例えば、自分達は引取をせずに、引き取ってくれる小売業者を紹介するといったことが行われています。自治体が積極的に義務外品を集めてメーカーに引き渡すことはなかなか行われていないといわざるを得ません。
一方、小売業者が義務対象品以外まで引き取るメリットは少ないので、やろうとしませんし、メーカーの法的責任も彼らから集まってきたものをリサイクルすることに限定されていて、収集促進のモチベーションがありません。
消費者との直接の接点を持っている小売業者と自治体が中心になって、メーカーやその他の関係者の協力をあおぎながら消費者から使用済み家電をいかに集められるか、その仕組みをつくれるかが今後の家電リサイクル法の鍵になると思います。
自動車リサイクル法ではどのように拡大生産者責任が適用されていますか?
自動車リサイクル法は、3つの品目だけに限って生産者の責任を課した法律です。
処理あるいは処理費用の確保が難しかったフロン類やエアバッグ、シュレッダーダストだけに生産者の責任を求めています。
新車販売時に消費者からこれらのリサイクル・処理費用を確保しておくということと、これらの処理・リサイクルを実施するという役割が新たに自動車リサイクル法で求められるようになりました。自動車は登録制度により個々の製品が特定できるという固有の特徴があり、これを活かして、一品一品ごとにリサイクル料金を徴収・確保しておくことが比較的やりやすかったという背景もあります。
対象が絞られていて生産者の責任が不十分ということですか?
不十分というわけではありません。既存の仕組みの問題を解決するうえで、既存の仕組みを活かしつつ、必要な部分に生産者の役割を導入したものと考えるべきです。拡大生産者責任としては有能論に近いでしょう。
既存の解体業者やシュレッダー業者は、使用済み自動車の引取り、解体、スクラップ金属や自動車部品等の回収という役割を担っていました。彼らは自動車リサイクル法ができた後も事業を継続したかったですし、彼らの実施している部分について大きな問題とされていたことがあったわけではありませんでした。
家電リサイクル法ができる前は、使用済み家電についてそのような既存のリサイクルシステムは無かったのですか?
家電リサイクル法ができる前は、自治体が使用済み家電を、粗大ごみとして処理をしていました。けれども、自治体では大型のテレビとか大型の冷蔵庫などは処理が難しく、自治体は困っていました。
90年代前半には、いろいろ議論の後にこれらが適正処理困難物に指定され、事業者が自治体に協力して使用済み製品の処理・リサイクルを行おうとなりました。
でも、それには限界があったので、メーカーの関与を増やした家電リサイクル法が2001年にできたわけです。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、引きつづき日本の各種リサイクル法における拡大生産者責任についてお話しをお伺いしています。