中国の廃プラ輸入規制(4) ~中国の政策~
これまでの記事では、中国の廃プラスチック輸入規制を受けて、日本の廃プラスチックのリサイクルがどのような影響を受けたのかをご紹介しました。
今回は、このような影響が生じる理由となった、中国の廃プラスチック輸入規制に関する政策の内容をご紹介します。
始まりは、2017年8月に中国環境保護部より公表された「輸入する固形廃棄物の管理目録」の改正でした。
具体的には、
①輸入を禁止する固形廃棄物のリスト
②輸入を制限する固形廃棄物のリスト
がそれぞれ更新されました。
これまで廃プラスチックは、生活由来・工業由来に関わらず、②「輸入を制限する固形廃棄物」のリストに登録されていましたが、この改正により、生活由来の廃プラスチックは輸入を禁止する①のリストへ、工業由来の廃プラスチックは輸入を制限する②のリストに分かれて登録がされました。
発生源により、廃プラスチックの輸入禁止・輸入制限という政策的な規制措置が導入されました。この規制は双方ともに2017年の12月末から施行されています。
図1 輸入を禁止する固形廃棄物のリストの一例(輸出入統計品目番号や廃棄物の名称がリスト化されています。例えば、図1の53番はポリエチレンの廃棄物・スクラップの登録を表しています。)
工業由来の廃プラスチックの輸入「制限」の内容、つまり輸入できる・できないの基準は、2017年12月に中国環境保護部より公表された③「原料として利用可能な輸入固形廃棄物に関する環境保護規制基準(廃プラスチック)」に明記されています。
この基準は2005年の基準を更新したものですが、更新後の基準では夾雑物の対象品目に古紙、廃ゴムや発泡スチロールなどが追加されるとともに、輸入の際の港湾での検査方法が厳しくなり、輸入できる廃プラスチックに求められる品質が高くなりました。
2018年4月には、工業由来の廃プラスチックも2018年12月末から①輸入を禁止する固形廃棄部のリストに登録されることが決定されました。これにより、発生源に関わらず、中国への廃プラスチック輸入が全面的に禁止となりました。
生活由来廃プラスチック | 工業由来廃プラスチック | ||
---|---|---|---|
輸入制限 | 輸入制限 | ||
2017年12月 | 「輸入する固形廃棄物の管理目録」改正 | 輸入禁止 | 輸入制限 |
2017年12月 | 原料として利用可能な輸入固形廃棄物に関する環境保護規制基準(廃プラスチック)改正 | ― | 夾雑物の対象品目が追加される |
2018年12月末 | 「輸入する固形廃棄物の管理目録」改正 | 輸入禁止 | 輸入禁止 |
上述した中国での廃プラスチック輸入規制措置が適用となると、制度上は2019年には日本から中国への廃プラスチックの輸出は0(ゼロ)になると言えますが、2019年1月から3月の貿易統計では、数千トン/月の「プラスチックくず(HS3915)」の輸出実績がありました。中国の地域ごとの税関の判断で少量の廃プラスチックの流通が維持されているものと推察されますが、ピーク時のように10万トン/月もの流通量に戻ることは無いように思えます。
中国が廃プラスチックの輸入規制を公表した直後は、日本・中国の貿易業者やリサイクル業者の中には、「いずれ規制が解除されるかも」という楽観的な意見も聞かれました。しかし、輸入に関する虚偽申請や輸入品への異物混入に対する税関での取り締まりが厳しくなるにつれ、この廃プラスチック輸入禁止の流れは不可逆的であるとの認識が広がってきたと感じています。
中国の廃プラ輸入規制(2)でご紹介したように、日本の廃プラスチックの一部は、中国の輸入規制を受け、東アジア・東南アジアへ輸出されるようになりました。欧州や米国、オーストラリア等も同様に、これらの国に輸出先を振り替えました。
その結果、急激な廃プラの輸入量の増加に各国のリサイクル・処理能力が対応ができず、途上国へのごみ輸出といった問題が生じてしまいました。
この状況が国際的にも問題視されるようになり、2019年5月の有害廃棄物の越境移動を規制するバーゼル条約の締約国会議では、規制の対象品目に汚れた廃プラスチックを追加する条約改正案採択に繋がったといえます。
今後は世界の国々が、廃プラスチックのリサイクルや処理における環境負荷を最小限にしつつ、廃プラスチックの資源循環を確保するような、国際的な政策調和が求められるようになります。
【参考リンク】
IGESホームページ
プラスチックごみ問題の行方:中国輸入規制の影響と今後の見通し
サイエンスポータル(科学技術振興機構)ホームページ
プラスチックごみ、国内で行き場失う恐れ 中国の輸入規制が契機とIGESが分析・提言
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
森田 が担当しました