中国の廃プラ輸入規制(3) 海外での廃プラスチックリサイクル
~ベトナムの実例~
中国の廃プラ輸入規制(2)では、昨年度から中国に代わって東アジアや東南アジアの国々へ日本で発生した廃プラスチックが輸出されるようになったことを紹介しました。今回はベトナムでのヒアリング結果をご紹介します。
■ベトナムのリサイクル工場
次の写真はベトナムの廃プラスチックのリサイクル工場を訪問した際のものです。
この工場ではベトナム国内で発生した廃プラスチックと国外から輸入した廃プラスチックを原料として受け入れており、前処理・加工を通じてペレット状の再生プラスチック原料を製造しています。
写真左から:廃プラスチックから異物を手選別で除去する作業 / 廃プラスチックを溶融し、ペレット化する工程 / ペレット状の再生プラスチック(全て筆者撮影)
手選別により取り除かれた異物は廃棄物として適正に処理する必要があります。ペレット化などのために廃プラスチックを溶融するとプラスチック成分やプラスチックに含まれる添加剤などがガス化し、排気ガスに含まれます。また、冷却のための排水も発生します。これらの排ガスや排水には汚染物質が含まれますので環境へ放出するのではなく、適正に管理・処理される必要があります。汚染物質が環境中へ放出され、周囲環境を汚染する危険性があるからです。
2019年3月にベトナム環境省の研究機関に当たるInstitute of Strategy and Policy on Natural Resources and Environmentへヒアリングしたところ、「環境汚染がひどい場合には行政が指導を行うが、ベトナムではこのようなリサイクル業者が2,000社あると推計されており、またその殆どが小規模な家族経営で各家庭の敷地内でリサイクルを実施しているため、管理が十分には行き届かない」のが実情とのことでした。
そのため、ベトナムでも輸入する廃プラスチックの管理強化を通じて、リサイクルに伴う環境汚染を防ごうという政策的な動きが進んでおり、輸入する廃プラスチックに求められる品質基準が厳しくなりました。
■東南アジアの他の国の動向
マレーシアでは業者が廃プラスチックの輸入許可を取得するための条件が厳しくなり、また行政も無許可のリサイクル業者の摘発を行っています。
タイでは中国と同様に廃プラスチックの輸入を全面的に禁止していく方針が示されています。各国での対応に差が見られるのは、廃プラスチックに依存して事業を行っている国内リサイクル業者への配慮の度合いと考えられます。
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
森田 が担当しました