中国の廃プラ輸入規制(2) 〜国内の廃プラスチック〜
中国の廃プラ輸入規制(1)では、中国が輸入規制を行った背景などについて説明しました。
今回は、日本で発生する廃プラスチックはどういうシステムで回収・リサイクルされているのか、どうして中国へ輸出されていたのか、について説明します。
■日本のリサイクル法との関連
前回紹介したように、日本国内では2000年代前半から各種リサイクル法の整備が進み、廃棄物の回収システムの構築やリサイクル施設の設置が進みました。つまり、それまでは、ごみとして捨てられていたペットボトルやトレイなどの廃プラスチックが回収され、資源として再利用する仕組みができました。
各種リサイクル法の中で、プラスチックと大きく関係する法律は、容リ法と家電リサイクル法です。
容器包装リサイクル法
容リ法(容器包装リサイクル法:平成7年制定、平成12年4月完全施行)は、ガラスびん、PETボトル、紙製容器包装、プラスチック製容器包装、アルミ缶、スチール缶、紙パック、段ボールのような、「容器」「包装」をリサイクルする制度をつくることにより、ごみを減らし、資源を有効に利用するためにつくられた法律です。
プラスチックに関しては、食品トレイやPETボトルなどの廃プラスチックのリサイクルを進めるために、消費者や事業者が果たすべき役割が定められています。リサイクル業者に対して、回収・処理した廃プラスチックの輸出を禁止したり、国内での利用を義務化してはいませんが、容器包装リサイクル協会が再生されたプラスチックが最終的にリサイクル製品(例えば、パレットや園芸プランターなど)に利用されていることを把握する必要があるため、実質的には国内での利用に利用先が限定されています。そのため、容器包装リサイクル協会を介したリサイクルでは、廃プラスチックのマテリアルリサイクルもしくはケミカルリサイクルの国内循環ルートが確立しているといえます。
ただし、容器包装リサイクル協会が関与しないリサイクルも行われており、その場合は廃プラスチックが海外へ輸出されることもありました。
家電リサイクル法
家電リサイクル法(正式名称:特定家庭用機器再商品化法 平成13年4月施行)は、家庭用のテレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機・衣類乾燥機を対象に、廃家電に含まれる有用な資源の再利用を促進し、廃棄物を減らすためにつくられた法律です。
これらの製品は金属だけでなく多くのプラスチックも含んでいます。家電の品目により異なりますが、廃家電から回収した資源の内約30%がプラスチックというデータもあります(図1)。図1の円グラフの内、「その他有価物」がプラスチックを中心とする有価物を指します。
図1. 素材別再商品化の構成比率(品目別)
出典:一般財団法人 家電製品協会ホームページ 家電リサイクル 年次報告書 平成29年度版
家電リサイクルでは、冷蔵庫内部の仕切り版など、手で取り出しやすいプラスチックは取り外され、プラスチックの種類ごとに分けられて、再生プラスチックの原料として利用されます。
取り出しやすいプラスチックが外された廃家電は破砕され、鉄・アルミ・非鉄・プラスチックなどに選別されます。破砕後に選別されたプラスチックには、様々な種類のプラスチックが混ざっており、そのままでは再生プラスチックの原料にはならないので、選別を行う必要があります。日本国内で選別される場合もありますが、海外へ輸出されるものもあります。
この背景には、廃家電のリサイクル率を高めようとする製造業者の考えがあります。
家電リサイクル法では、製造業者の責務として「達成すべきリサイクル率(再商品化等基準)」の義務値が設けられています。このリサイクル率は、マテリアルリサイクルされた資源の量で算出されますが、熱回収された資源の量は含まれません。
容リ法のケースとは異なり、家電リサイクル法ではリサイクルがどこで行われるかといった「場所」に関する限定はないので、マテリアルリサイクルが進むのであれば廃プラスチックの行き先に特に制限はありません。
中国では、選別などのコストが安く、廃プラスチックの需要が大きかった、家電由来の廃プラスチックも中国に輸出されていました。
■日本の廃プラの行方
中国の廃プラスチック輸入制限により中国向けの輸出が出来なくなり、東南アジアなど別の国へ廃プラスチックが輸出されています。ただ、台湾、ベトナム、タイなども輸入を制限する動きもあります。
図2. 日本からの廃プラ輸出量(国別)
出典:財務省貿易統計より弊社集計
【参考サイト】
日本容器包装リサイクル協会ホームページ
容リ法って何だろう
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
森田 が担当しました