過積載の危険性と背景 その4 〜道へのダメージは軸重が影響〜
前回は 過積載の危険性と背景 その3 〜過積載の危険性〜 にて、車体の設計重量以上の重さの荷物を積載する事(過積載)による危険性についてご紹介しました。
今回ご紹介する「軸重」も重量に関するものです。
道路法に基づいて定められている車両制限令、道路運送車両法の保全基準により、軸重は10トン以下、輪荷重は5トン以下と定められています。この規制値を超える車両を通行させるときは、通行しようとする道路の道路管理者に申請し、許可を受けなければなりません。
■軸重とは?
タイヤを支える車軸にかかる重量です。
■なぜ規制するのか?
軸重は道路保全の観点によって規制されています。
ちなみに、運転免許取得の際に勉強するのは、交通安全を目的に規定されている道路交通法です。
荷台に乗せた荷物の重量はタイヤを通して道路に伝わります。
道路を通行する車両の重量を想定して、それに耐えられる仕様で設計されます。
どれ位の重さの車が通るのかによっても道や橋に求められる強度は異なります。
下の図は、大型車両1台が軸重の最高限度よりも2トン超過した12トンで走行した場合の橋の路面への影響試算事例です。
出典:東日本高速道路株式会社(NEXCO 東日本)「ドライブブプラザ」
軸重が最高限度の10トンを2トン超えて12トンで走行した場合、軸重10トン車が9回走行したのと同じ影響を与えます。
軸重の影響は超過重量の12乗に比例しますので、少しの重量オーバーでも路面に大きな影響を与えてしまいます。
路面が大きな影響(ダメージ)を受けると、道路の補修・更新計画よりも早く道路が傷んでしまいますし、補修等の費用も計画より高くなってしまいます。
■取締り
例えば、首都高速道路株式会社 管理レポート2015によると首都高では道路法(車両制限令)違反車両取締業務として、2014年は年間694回の取り締まりを行い、1,256台を取り締まっています。
さらに、首都高の一都三県7箇所の本線料金所、NEXCO 東日本の3箇所の料金所、NEXCO 中日本の2箇所の料金所、国土交通省北首都国道事務所の三郷取締基地で同時取締りを実施し、合計47台の違反車両に対して措置命令又は指導警告を実施しています。
(提供:首都高速道路株式会社)
また、重大な違反者に対しては積荷の軽減措置を命じています。軽減措置を命じられた場合、運送会社は減らした荷物を積むためのトラックとクレーンを手配しなければいけません。
(提供:首都高速道路株式会社)
さらには、自動軸重計カメラの捕捉率向上や軸重計の精度向上により、警告対象車両は10倍に拡大。
反復違反者や悪質違反者に対して、違反講習会を実施し是正指導を行うとともに、是正されない場合には告発を行っています。
(提供:首都高速道路株式会社)
■罰則
軸重の規制値を超える車両を通行させた場合の罰則は、百万円以下の罰金(道路法第104条)です。また、行為者(運転手)だけでなく、法人(運送会社)も罰を受けます。
道路法
第四十七条 | 道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路との関係において必要とされる車両(人が乗車し、又は貨物が積載されている場合にあつてはその状態におけるものをいい、他の車両を牽引している場合にあつては当該牽引されている車両を含む。以下本節及び第八章中同じ。)の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度は、政令で定める。 2 車両でその幅、重量、高さ、長さ又は最小回転半径が前項の政令で定める最高限度をこえるものは、道路を通行させてはならない。 |
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第百四条 | 次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。 一 第四十七条第二項の規定に違反し、又は同条第一項の政令で定める最高限度を超える車両の通行に関し第四十七条の二第一項の規定により道路管理者が付した条件に違反して車両を通行させた者 |
第百七条 | 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第百条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。 |
■首都高速道路
今回の記事は、首都高速道路株式会社にご協力を頂いて制作しました。首都高速道路はご存じのとおり、首都圏の交通・物流を支える高速道路です。環状線、湾岸線、八重洲線、小松川線、晴海線、川口線、横羽線などで、さいたま新都心、川口、八潮、湾岸市川、横浜、用賀、高井戸をカバーする一大交通ネットワークです。
首都高速道路は、他の道路に比べ大型車の交通量が圧倒的に多く、多くの軸重超過車両が観測されています。
出所:首都高速道路株式会社 インフラ長寿命化計画(行動計画)平成26年度~平成32年度
首都高は橋梁が占める比率が高いので、建設コストも維持管理コストも高くなります。
軸重(最高限度10トン)を2トン超えて12トンの車が走行した場合、軸重10トン(最高限度内)の車が9回走行したのと同じ影響を与えるという事は、1台しか通っていないのに9台分のダメージを路面に与えるという事です。計画よりも速いペースで損傷を受けて補修が必要になれば、補修費が計画以上にかさみますし、補修費がかさめば通行料にも影響があると考えられます。
道路保全のためには、重量規制の順守が非常に重要であると言えます。
【参考資料】
首都高ドラーバーズサイト ホームページ
首都高を通行する車両の長さ・高さ・幅・重量等の制限について
首都高速道路ホームページ
管理レポート
車両制限令違反車両が起こした事故(クレーン車を反対車線に落下させた事案)
(事故概要)
首都高の取り組み
首都高速道路株式会社 インフラ長寿命化計画(行動計画)平成26年度~平成32年度
独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構ホームページ
道路法(車両制限令)遵守のお願い
~重量・軸重超過は未然に防ぐことができます~
全国の高速道路情報サイト「ドラぷら E-NEXCOドライブプラザ」ホームページ
道路を大切にして下さい
国土交通省ホームページ
道路運送車両の保安基準
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました