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廃棄物処理と資源循環の現状と今後 その3

独立行政法人 国立環境研究所
資源循環・廃棄物研究センター
国際資源循環研究室
寺園 淳 博士

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DOWAでは国内はもとより中国、シンガポール、タイ、インドネシアにおいても、廃家電リサイクル、金属リサイクル、廃棄物処理事業を展開し、適正な処理、リサイクルを推進しています。
今回のインタビューは、廃棄物処理と資源循環の現状と今後について、独立行政法人 国立環境研究所で国際資源循環について研究をされている寺園淳博士にお聞きしています。

製品の資源性・有害性物質の適正な管理をめざす
不用品回収と金属スクラップ(雑品)輸出に関する3つの問題


今回は、国際資源循環についてE-WASTE問題を中心にお話いただいています。

【その3】 国際資源循環について ~E-WASTEを中心に~

国際資源循環についてお聞きしたいのですが、国際資源循環の研究はどういうきっかけで始められたのでしょうか?

阪神淡路大震災は1995年1月で、国環研に入ったのはその約1年後の1996年2月です。当時、京大在籍中からアスベストの研究を続けながら、LCA(Life Cycle Assessment)の研究にも携わらせてもらいました。

LCAは、製品などの製造から廃棄に至るライフサイクルの中で環境負荷を下げるための評価ツールですが、「目に見えない段階に環境負荷のつけ回しをしてはいけない」という根本的な考え方に基づいています。隠れたフローとか、環境影響のトレードオフや総合評価なども同じ発想であり、これに共感を得ながら、当時国環研の乙間末広先生(現北九州市立大)や森口祐一先生(現東京大学)などと一緒に研究に携わらせてもらいました。

その後、2000年10月から一年間、ドイツのカールスルーエ大学独仏環境研究所へ客員研究員として行かせてもらい、環境影響の総合評価や政策ツールの研究を学ばせて頂きました。

国環研は2001年4月から独立行政法人になっていて、ドイツから戻ってきた際にやや浦島太郎になっていましたが、循環センターの当時センター長であった酒井伸一先生(現京都大学)から「アジアの廃棄物の研究をやってみないか?」と言われ、その研究に環境省の補助金がついたことから始まります。

最初は国際資源循環やE-WASTE(Electrical and Electronic Waste:廃電気・電子製品)の問題に限らず、アジアの廃棄物処理全体の状況を調べてみようという感じでした。

その頃のアジアの廃棄物処理はどのような様子だったのですか?

当初は、韓国を除いてアジア諸国の廃棄物に関するデータはほとんど得られず、資料を集めることだけで大変でした。
とくに途上国では、処理する以前の収集すら十分にされていない状況で、集めた廃棄物も「サニタリーランドフィル」方式で「覆土していればよい方」という状況でした。

さらに、処分場(埋立地)の残余年数という、日本ではよく使われている概念がアジア各国ではほとんど無いことに驚きました。今使っている処理場が一杯になったらどこか他の場所を探さねばならないのですが、そこまで計画的に管理されていないことが徐々にわかってきました。

そこで、2002年から2003年までアジアの研究者仲間を招待して、「アジアの廃棄物処理と資源循環に関するワークショップ」を国内で主催し、データを持ち寄ってもらった結果、ある程度の現状は分かってきました。
その後、2004年から廃棄物全体の話は同じ循環センターの山田正人主任研究員(現室長)らにお任せして、私たちのグループはE-Wasteに特化してきました。

(平成21~23年度環境研究総合推進費補助金研究事業総合研究報告書/アジア地域における廃電気電子機器の処理技術の類型化と改善策の検討(K2107、K22058、K2347)、平成24年3月、p47)

その頃がE-WASTEの問題があることにアジア各国が気づき始めた時期だったんですね。

そうですね、当時は各国で問題化しはじめた時期でした。しかし、その問題を顕在化させたのはNGOの活動が早かったですし、影響力がありました。
2002年に、BAN: Basel Action Network(バーゼル・アクション・ネットワーク)SVTC: Silicon Valley Toxics Coalition(シリコンバレー有毒物質連合)が共同でリリースした「Exporting Harm: The High-Tech Trashing of Asia(エクスポーティング・ハーム:危害の輸出-アジアで処分されるハイテクごみ)」です。

BAN: Basel Action Network(バーゼル・アクション・ネットワーク)
SVTC: Silicon Valley Toxics Coalition(シリコンバレー有毒物質連合)
「Exporting Harm: The High-Tech Trashing of Asia(エクスポーティング・ハーム:危害の輸出-アジアで処分されるハイテクごみ)」

このレポートでは先進国から輸出されたE-Wasteが中国・インドを中心としたアジアに集まっている現状と現地での処理の実態を写真などとともに公表しました。これが大きな影響を与えました。

特にインターネット上で彼らの発表したレポートがPDFとして誰でも見られるようになって、各国、特に中国政府も対応せざるを得なくなったのだとおもいます。広東省グイユの実態は衝撃的でご存じの方も多いと思います。中国政府も調査などを行って「ここでの不適正な輸入やリサイクルはもう禁止しました」というような発表をしていますが、現地の実態が急に変わることはむずかしかったようです。

途上国でのインターネット普及がボトムアップの形で環境問題を顕在化させたということになるのでしょうね。

日本政府が提案した「3Rイニシアチブ」が2005年3月にG8で合意されて以降、環境省も補助金などでアジアの3R研究を支援するようになりました。それらを利用し、アジアの中で越境する循環資源(廃棄物等)の問題を研究しました。

対象国はインド、インドネシア、フィリピン、中国、ベトナム、インドなどですが、どの国へ行っても、中古家電やE-WASTEなどの輸出入については一般的な話は聞けるものの、環境影響に関する資料は乏しかったです。

大変苦労をされてデータ収集されてこられたんですね

中国については、香港バプテスト大学のWong教授のグループが地の利を活かして、環境影響などの詳細なデータを集めていたので、彼らをワークショップに呼び、どんな状況であるかを学んでいったという状況でした。私たちは、E-WASTEに限りませんがアジア諸国での環境影響調査で経験の多い愛媛大学と共同で、中国以外のベトナムやフィリピンなどで2009年頃から本格的な調査を始めました。

(平成18~20年度廃棄物処理等科学研究費補助金総合研究報告書/アジア地域における廃電気電子機器と廃プラスチックの資源循環システムの解析(K1823、K1952、K2064)、平成21年3月、p98)

中国現地でのエピソードのようなことをお話しいただければ・・

「エクスポーティング・ハーム」でレポートされた中国広東省の不適正処理が話題になったグイユという村にも2006年と2009年に行きました。
話題になってからは村へ立ち入ることも簡単ではなくなったので、中国の大学の先生に同行していただき村の政府の方に案内してもらったのですが、おきまりのコースしか行かせてもらえないんですね。

でも私たちは「(今回が初回ではないため、)不法投棄があった場所を知っているのでそこへ行きたいんですが・・」とお願いしたのですが「そこはもう改善されました。」と曖昧な説明をしながら、「まあ、今日はここまでにして、お茶でも飲みましょう。」と文字どおりお茶を濁されてしまいました。2008年に米国CBSの60minutesという番組でも全く同じ言われ方をされていて、驚きました。

CBSの60minutes [THE WASTELAND]

そこで、私たちはその後に、車を借りて、勝手に行く訳なんですが・・・。

そういう場合には、その場にいる人たちに日本人とわかるような行動をしてはいけない、車から降りたり、車内でしゃべってもいけないと言う状態で見に行きました。

さすがに怖いですね。反日運動の最中の渡航者注意事項と同じ・・もっと危険かもしれませんね。

中国では多かれ少なかれ慎重な対応が求められるのは、多くの方が経験されているかと思います。また、私たちよりNGOやメディアの方々の方が現場に迫っている場合も多くあります。
また、2009年にはグイユで銅製錬の場所を見せてもらったのですが、そこに、バグフィルタと称されるバッグがあって、これがバグフィルターか?と思う代物でした。

中国における日本の廃棄物の基準のようなものは無いのですか?

法律も基準も多数ありますが、施行には問題があるといえます。
中国版WEEE法が制定されて、5品目(日本の4品目+PC)については、「このように処理しなければならない」という決まりを作っていますが、ブラウン管のパネルとファンネルガラスの分離もされていない場合も多いようです。

E-WASTEに限らず、日本のように、お金を払って処理業者に出すということはまだ浸透していませんから、不要な残渣はどこかに投棄されてしまうことが多いようです。

中国以外の国の対応と状況はどのようでしたか?

少し話しましたが、フィリピンなど他の国について、現地の研究者に案内してもらいながら、2009年頃から、サンプリングや分析が少しずつできるようになってきました。しかし、収集から処理のプロセス検討はできても、そのプロセスの中でどの様な有害物質が出るか、というようなことはまだこれから調べねばならない状況です。

【参考資料】

BAN: Basel Action Network(バーゼル・アクション・ネットワーク)
SVTC: Silicon Valley Toxics Coalition(シリコンバレー有毒物質連合)
「Exporting Harm: The High-Tech Trashing of Asia(エクスポーティング・ハーム:危害の輸出-アジアで処分されるハイテクごみ)」
CBSの60minutes [THE WASTELAND]

ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は、「国際資源循環について ~金属スクラップを中心に~」についてお聞きしています。

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