持続可能な脱炭素社会実現を目指す企業グループ(JCLP) その1
~気候変動政策に注目した企業連合~
名称 日本気候リーダーズ・パートナーシップ
(Japan Climate Leaders’ Partnership(JCLP))
設立 2009年7月
持続可能な脱炭素社会実現を目指す企業グループをご存知ですか?
脱炭素社会の実現に向け、個別企業の枠を超えた活動に取り組んでいるという「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan Climate Leaders’ Partnership(JCLP))」の事務局である松尾 雄介様に、お話を伺いました。
2019年9月に開催された NY Climate Weekにて小泉環境大臣とJCLP会員が対話した際の写真
今回のインタビューは環境ソリューション室 三戸が担当いたします。
【関連ページ】DOWAエコジャーナル そうだったのか!地球温暖化とその対策(7)
【その1】企業連合って?
DOWAエコシステムは、2014年に「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan Climate Leaders’ Partnership(JCLP))」の正会員になりまして、私(三戸)は去年まで担当としてJCLPの会合に参加していました。
気候変動については、時間がたつにつれ機運が高まってきていると思いますので、今回、色々とお話を伺いたいと思います。
設立の経緯
最初に、JCLPとはどういう組織なのかについて、教えてください。
日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP、以下JCLP)は、持続可能な脱炭素社会の実現には産業界が健全な危機感を持ち、積極的な行動を開始すべきであるという認識の下に設立した、日本独自の企業グループです。
持続可能な脱炭素社会への移行に先陣を切る事を自社にとってのビジネスチャンス、また次なる発展の機会と捉え、政策立案者、産業界、市民などとの対話の場を設け、日本やアジアを中心とした活動の展開を目指しています。JCLPの成り立ちを教えていただけますか。
2005年に設立されたコーポレートリーダーズグループというイギリスの企業連合が、JCLPのお手本といいましょうか、見本になっています。
そのコーポレートリーダーズグループが2008年に日本に来日されて、日本で環境に熱心に取り組んでいらっしゃる企業さんと話し合い、意見交換をする機会がありました。
当時イギリスでは、2008年に気候変動法という、今の流れに続く転換期となった、とても重要な法律が成立しました。その法案の成立に向けて、気候変動対策に前向きな企業が連携をして、企業の側から前向きな政策が必要だと社会に発信した、とコーポレートリーダーズグループから聞いた日本企業が、日本もまさにそうじゃないかということで、日本にも企業連合を立ち上げようとなったそうです。
私は当時事務局ではありませんでしたので伝聞になりますが、それがJCLPのもともとの設立のきっかけです。
気候変動に関する政策を実現しようと思うと、大きなハードルになるのが、産業界が反対するという事というのは、日本だけではなく、世界どこでも同じなんですね。
立ち上げ後、会員企業は4社から10社ぐらいに伸びます。ですが東日本大震災のあとに急激に、日本における企業の注目が気候変動とか温暖化以外のところにいったこともあり、JCLPの会員企業が減ったりしていました。私が事務局として関わり始めたのは、2012年になります。
震災後に会員数が減ったというのは意外です。震災をきっかけに再生可能エネルギーに関心が高まったと思いましたが、そうではなかった。
再エネに関する機運は増加したとおもいますが、気候変動への関心、少なくともJCLPに関しては逆でした。
今も若干そうですけども、当時は、エネルギーと気候変動をダイレクトに結びつける事は少なくて、「温暖化=エコ」、「=こまめに電気を消して、ごみを分別する」というように、家庭のものというイメージが大きかったと思います。そういう中で、温暖化対策について企業はCSR・PRの一環として実施していた面があったのですが、震災後、企業の優先順位が下がったということだと思います。
当時、日本企業にとって温暖化対策はCSR、社会貢献の一部であり、今みたいな形で経営と関連している形ではなかったという事ですよね。それから比べると、企業の中での温暖化に関する位置づけがだいぶ変わってきたなと思います。
企業連合とは
ところで、企業連合というのは、あまり聞かないのですが
JCLPが発足した時には、企業の有志が「自分たちでやろう」ということで、企業ご自身が自発的にネットワークをつくったと聞いています。だから完全に独立した企業ネットワークという事になります。「独立した」っていうのは、例えば、意思決定は完全に企業がします。会費も運営上の活動の費用もすべて企業さんの会費で賄うという事です。
事務局は会員企業の皆さんの意向を形にする役割を担っています。JCLPでは、各社が脱炭素にコミットされており、それぞれ意欲的な、かつ本音の意見が多く出てきます。個性的なメンバーの方も多数いらっしゃいますし(笑)。事務局は、その意欲的なご意見を必死でうけとめる。あまりにたくさんの意欲的なご意見をいただくので、時々事務局はサンドバック状態になることもありますが(笑)。
これからも、よきサンドバックになってください(笑)
そう、サンドバックになって(笑)。でも、多くの本音の議論があってこそ、JCLPとして、脱炭素に必要なことを忖度なく発信できるということですし、あくまで企業連合というのが大事だと思っています。日本で初めて気候変動政策というものに注目した、独自の基本ネットワークができたのが、JCLPではないかと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回は「世界の中の日本」についてお伺いします。