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持続可能な脱炭素社会実現を目指す企業グループ(JCLP) その2
~世界の中の日本~

名称 日本気候リーダーズ・パートナーシップ
(Japan Climate Leaders’ Partnership(JCLP))

設立 2009年7月

持続可能な脱炭素社会実現を目指す企業グループをご存知ですか?
脱炭素社会の実現に向け、個別企業の枠を超えた活動に取り組んでいるという「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan Climate Leaders’ Partnership(JCLP))」の事務局である松尾 雄介様に、お話を伺いました。

【その2】世界の中の日本

COP

2019年12月2日から13日まで、スペインでCOP25(気候変動枠組条約第25回締約国会議)が開催されました。
ドイツのNGO ジャーマン・ウォッチが “2018年に最も気候変動の影響を受けた国は日本” (「世界気候リスクインデックス2020」)という発表をしたり、1,300の環境NGOのネットワーク団体であるThe Climate Action Networkから、気候変動対策に後ろ向きとして日本が「化石賞」を贈られたなど、報道されていましたね。

今年はチリのサンティアゴで開催の予定だったのですが、反政府デモが激化するなかで開催を断念することになり、スケジュール通りには開催できないかなと思ったのですが、複数の国がCOPを招聘したいと手を挙げて、蓋を開けてみれば予定どおりに開催する事になりました。

今回のCOPはどういう位置づけなのですか?パリ協定の5年毎の見直しはまだですよね?

見直し期限は2020年初頭であり、COP25は期限の前の段階です。来年に向けて各国が目標の引き上げに向けた機運を醸成することが主眼といった感じでしょうか。
パリ協定を受けて、各国は削減目標(NDC:Nationally Determined Contributions)を国連の気候変動枠組条約事務局に提出しています。その見直しの時期に向け、「みんなで頑張ろうぜ!」というのが、2019年9月にニューヨークの国連本部で開催された気候行動サミット、そして今回のCOPの位置づけでもあります。

ニューヨークのサミットとは、スウェーデンの環境活動家のグレタ・トゥンベリさんが若者の代表として「失敗したら我々は許さない」とスピーチしたサミットですね。

そうです。
その気候行動サミットの延長線上に、COP(気候変動枠組条約締約国会議)があります。交渉事としては、市場メカニズムのルールを詰める、などがありますが、大きな流れの中の位置づけとしては、2020年に向け、いかに各国が目標引き上げに頑張れるか、という所が重要だと思います。

NY ClimateWeekでのJCLPとClimate Action+データプロバイダーとの会合

潮目

COPというと、2015年のCOP21で合意されたパリ協定は影響が大きかったですか?

そうですね。パリ協定はすごく大きかったです。と言っても、パリ協定の前から海外ではそういう兆しが出てきていました。

例えばRE100ができたのがパリ協定の前の2014年なのですが、2013年ぐらいから、ちょっとそれまでとは違う動きが出てきていました。契機になったのは2013年に公表されたIPCCの第5次評価報告書かと思います。そこを機に、ちょっとステージが変わった感じがしました。

例えば今、座礁資産と言われ、金融や経済の文脈で気候変動が語られるようになったのも、IPCCの第5次報告書が出て、それを金融の言葉に変換したカーボントラッカーが2013年に「燃やせない炭素2013 資本浪費と座礁資産」という報告書を公表して、それがじわじわと広まって、TCFDなど現在の金融分野の動きにつながっています。

パリ協定は2015年の12月に合意されました。JCLPも初めて視察団としてCOPに参加しました。私も参加しましたが、私自身も驚くことが多々ありました。

私はJCLP事務局として日々国内海外の企業や政府とやり取りする中で、日本では、社会における気候変動の優先順位がその重要性に照らして著しく低いのを肌で感じていました。経営者に気候変動の話をしましょうって言っても、「いや、それは私の仕事じゃない」というのが色濃くあった時期でした。

また、COP21は、パリで同時多発テロが起こった1週間後に開催されました。ですので、日本企業の多くは渡航自粛令を出していた時期です。にもかかわらず、COPに行ってみると、海外の著名なグローバル企業の社長たちが山ほど来てるんですよ。何十人、何百人っていう単位で。それにまず驚きました。

日本人の多くが知っているような大企業の、ほんとに経営トップがずらっとイベントに登壇して、口々に、ビジネスの文脈で気候変動を自分の言葉で語っているというのを、丸四日間ぐらい聞き続けるわけです。

気候変動は今でこそ日本でもだいぶリスクとかチャンスとかっていう面で語られますけども、2015年の頃の日本の企業は「気候変動はCSRの一環」という認識でしたから、やはりそのギャップには驚きました。一緒に行ったJCLPの方も「こんな問題だったんだ、気候変動は」という驚愕と言いましょうか、目が開かれると言いましょうか、衝撃を受けているかたが大半でした。

NY ClimateWeekでのJCLPとClimate Action+データプロバイダーとの会合

熱い思いは伝染しない?

当然、視察された方は熱い思いを持って帰ってこられますし、それを伝え聞いたりして、JCLPへどっと参加したりしませんでしたか?

多少は増えましたが、「どっと」は増えませんでした。残念ながら。
パリ協定の時は、JCLPで視察した人だけが、衝撃を受けた、という感じでした。

COPの熱気と、日本国内の温度差を感じて、まず、とまどって、びっくりして、なんでこんなに日本と海外は違うんだ!という衝撃です。

グローバル企業のほうが、日本が違うという感度が高かったかもしれません。
例えば日本の本社の方が、COPに行って、気候変動はこんなに優先度が高いんだと実感して取り組み始めたら、ヨーロッパのグループ会社ではもう相当進んでいたというような話を聞いたことがあります。RE100にしても、日本の本社が海外支社に問い合わせると、すでに100%再エネ化を達成していたという話もありました。

グローバル企業

グローバル企業さんにも、いろいろあると思うんですけど、ヨーロッパ本社の企業さんの方が気候変動に対する機運が高いというような違いはあるんですか。

そうですね。そういう傾向はあるとは思いますが、今や気候変動はヨーロッパだけで取りざたされているわけではありません。まさに世界的に危機感が高まりつつあります。
そういう中、日本ではその危機感がまだ浸透していないので、特に欧州などを主要マーケットとしグローバル企業のほうが、先に「兆し」や「動き」を感じている部分はあるかと思います。

ただ、パリ協定はアメリカ以外のすべての国が賛成していますので、ヨーロッパだから違う、というのはあまり感じていません。グローバル企業でヨーロッパに拠点持ってる企業は、アメリカにも拠点があるし、アジアにも拠点がありますので、マーケットがヨーロッパやアメリカで、メイン工場がアジアという企業が多いと思います。


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