PCB廃棄物の判別方法 その1
~塗膜くず~
PCB廃棄物については、PCB汚染物に該当するかどうかの基準値、低濃度PCB汚染物に該当するかの基準値があり、また廃棄物の性状によって分析方法が定められています。
どの基準値なのか、どの分析法で分析すべきなのかについてお問い合わせを頂くことがありますので、判別方法の考え方をご説明していきます。
今回は、塗膜についてご説明します。
1. 廃棄物の種類
廃棄物の種類は「PCB汚染物」です。
2. 分析方法
「ポリ塩化ビフェニル汚染物等の該当性判断基準について(通知)」(環循規発第1910112号・環循規発第1910111号)には、PCB汚染物等の該当性の判断基準と分析方法が示されています。
この一覧表の中で塗膜くずは、
- 塗膜くずのみの場合は、「廃プラスチック類」
- 剥離材使用塗膜くずは「汚泥」
- サンドブラスト廃砂は、「汚泥」または「鉱さい」と「廃プラスチック類」の混合物
として含有量を分析するのが一般的です。
- 注1:
- PCBを含む油が自由液としては明らかに存在していない場合に限る。
- 注2:
- 特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法(平成4年厚生省告示第192号)
- 注3:
- 絶縁油中の微量PCBに関する簡易測定法マニュアル(第3版)平成23年5月環境省
- 注4:
- 「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」昭和48年2月環境庁告示第13号
- 注5:
- 低濃度PCB含有廃棄物に関する測定方法(第4版)令和元年10月環境省
出典:ポリ塩化ビフェニル汚染物等の該当性判断基準について(通知) に一部追記
分析方法として示されているのは、「低濃度PCB含有廃棄物測定方法」です。
令和元年に発出された通知では、「低濃度PCB含有廃棄物に関する測定方法(第4版)令和元年10月」と注釈に書かれておりますが、令和2(2020)年10月に第5版が公開されました。
低濃度PCB含有廃棄物に関する測定方法(第5版)(令和2年10月)
3. 塗膜に関する判断基準
「ポリ塩化ビフェニル汚染物等の該当性判断基準について(通知)」(環循規発第1910112号・環循規発第1910111号)では、塗膜についての考え方が示されています。
塗膜くずに代表されるような PCBを含有する廃棄物であり、PCBを含む油が自由液(注)として明らかに存在していない場合については、PCBの含有濃度が0.5mg/kg以下となる場合は、低濃度PCB汚染物に該当しないものと判断するものとする。こうしたPCBを含む油が自由液として明らかに存在していない場合としては、塗膜くず、少量の低濃度PCB汚染油が染み込んだもの(紙くず、木くず又は繊維くず)等とする。
注:PCBを含む油が染み込み又は付着した廃棄物から、PCBを含む油が染み出し又は脱離して、液体状態として確認できるもの。
出典:ポリ塩化ビフェニル汚染物等の該当性判断基準について(通知)
- PCB含有量が、0.5mg/kg以下のものは、普通の産業廃棄物と判断されます。
- 0.5mg/kgを超え、5,000mg/kg以下のものは、特別管理産業廃棄物(低濃度PCB廃棄物)と判断されます。低濃度PCB廃棄物処理の認定や許可を得た処理施設で処理が可能です。
- 5,000mg/kgを超え100,000mg/kg以下のものも、特別管理産業廃棄物(低濃度PCB廃棄物)と判断されます。「5,000mg/kgを超える低濃度PCB廃棄物」の処理認定・許可を受けた処理施設でのみ処理が可能です。
- 100,000mg/kgを超えるものは、特別管理産業廃棄物(高濃度PCB廃棄物)と判断され、JESCOでのみ処理が可能です。
4. その他の留意点
橋梁や木造建造物の塗膜では、PCB以外にも塗料中に含有される鉛、六価クロム、その他重金属類(水銀、ヒ素、セレンなど)や、アスベスト等が含まれる可能性があります。
処理施設によっては、重金属類の濃度によって受入制限がある場合もありますので、ご注意ください。
5. 塗膜の処分をご検討の際には
DOWAエコシステムグループは非鉄金属の製錬業で培った技術を活かし、重金属類を含有する塗膜であっても処理が可能です。
処理をご検討の際は、お声掛けください。
【参考資料】
環境省ホームページ
ポリ塩化ビフェニル含有塗膜 調査実施要領(2020年3月に第2版、2021年5月に第3版に改訂)
ポリ塩化ビフェニル汚染物等の該当性判断基準について(通知)(令和元年10月11日、環循規発第1910112号・環循規発第1910111号)
低濃度PCB含有廃棄物に関する測定方法(第5版)(令和2年10月)
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました