DOWAエコジャーナル

本サイトは、DOWAエコシステム株式会社が運営・管理する、環境対策に関する情報提供サイトです。毎月1回、メールマガジンの発行と情報を更新しています。

文字サイズ

カタログに載らない話記事一覧 ▶︎

100%リサイクル素材による正極材製造への可能性

2022年11月7日に秋田大学とDOWAエコシステムによるリチウムイオン電池正極材リサイクルに関する新たなリサイクル手法についてのプレスリリースを行いました。
今回は、その「新たなリサイクル手法」についてご紹介します。

参考:DOWAと秋田大学が使用済みリチウムイオン電池からの正極材リサイクルに成功 – ニュースリリース | DOWAエコシステム株式会社

1. 背景

リチウムイオン電池の利用が増えている中で、将来の需要の増加に対応するため、リチウムイオン電池のリサイクルについて取り組みが進められています。

リチウムイオン電池には正極材に、リチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄など複数の元素が使われ、集電体としてアルミニウム箔や銅箔が使われています。

参考:LIB(リチウムイオンバッテリー)とは? その2 LIBに含まれる金属

リチウムイオン電池をリサイクルする過程で得られる「ブラックマス」は、製錬所で元素ごとに分離・精製されます。
ただ、元素ごとに分離・精製するためには精製コストや精製に伴うエネルギーが必要となりますし、製錬所では鉱石由来の原料と合わせて精製されるため、精製後のニッケルやコバルトなどの再生原料比率が低くなるという傾向があります。

図:LIBのサプライチェーンとリサイクル(現状)

2. 新たなリサイクル手法とは

将来の需要増が見込まれる中で持続的にリチウムイオン電池を製造するために、より効率的なリサイクル手法が求められていますが、リサイクルの過程で得られたブラックマスを元素毎に分離・精製せず、ブラックマスからリチウムイオン電池の正極材を製造するという研究は、今までなされてきませんでした。

当社はブラックマスに含まれる不純物を可能な限り取り除くことにより、ブラックマスを分離・精製せずにリチウムイオン電池の正極材の前駆体を作り、その前駆体を用いて正極材を製造することに成功しました。

このリサイクルにより得られた正極材を使用したリチウムイオン電池の性能を、秋田大学電動化システム共同研究センターと同理工学研究科の研究グループが評価した結果、リチウムイオン電池の正極材として使用でき、リチウムイオン電池の放充電を繰り返した際の安定性が市販品と同等程度の性能を有する事が確認されました。

図:LIBのサプライチェーンと効率的なリサイクル

DOWAのリサイクルプロセスでは元素毎にそれぞれ製錬・精製するプロセスが不要となるため、低炭素で経済的なリチウムイオン電池のリサイクルが可能になります。

また、リチウムイオン電池から得られたブラックマスから正極材を製造するため、使用済みの電池から新たな電池を製造する電池の水平リサイクルや、100%リサイクル素材で正極材を製造することも可能になります。さらに製品に使われるリサイクル素材比率の向上にも寄与します。

3. さいごに

DOWAグループと秋田大学は引き続き、リチウムイオン電池リサイクルについての研究開発に取り組んでいきます。今後は、不純物がどの程度リチウムイオン電池の性能に影響するかの調査や、不純物除去プロセスの開発、スケールアップをして実証試験を進めていく予定です。
合わせて、DOWAではリチウムイオン電池から炭酸リチウムを回収する実証実験も実施しています。

リチウムイオン電池の製造や研究開発には複数のサプライヤーが関わっているため、リチウムイオン電池の効率的なリサイクル体制の構築に貢献するためには、複数のサプライヤーとの協業が必要となります。リサイクル材をリチウムイオン電池へリサイクルする実用化を推進するため、リサイクル材のサプライチェーン構築の検討を進めていきます。


この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
後藤 が担当しました

【編集者からのおすすめ記事】

※ご意見・ご感想・ご質問はこちらのリンク先からお送りください。
ご氏名やメールアドレスを公表する事はありません。

▲このページの先頭へ

ページの先頭に戻ります