土壌汚染調査技術管理者試験問題の解説(4)
■平成23年度土壌汚染調査技術管理者試験の解答及び解説(その4)
前回に引き続き、平成23年度土壌汚染調査技術管理者試験の解説を示します。
今回は、解説のリクエストがあった問題、及び要措置区域に指定された場合に指示される措置内容に関する問題を解説させていただきます。是非、ご参照ください。
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【問題4】
法第3条の調査(使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地の調査)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 特定有害物質を使用していても水質汚濁防止法の特定施設でなければ、当該特定有害物質の使用をやめても法第3条の調査義務は発生しない。
- 事業所内にある複数の有害物質使用特定施設の一つを廃止し、その跡地に事務所を建設する場合、土地の形質の変更面積が3000m2以上であっても、都道府県知事の確認を受ければ法第3条の調査義務が一時的に免除される。
- 特定有害物質を製造、使用、処理または貯蔵している有害物質使用特定施設を廃止すると、その土地の所有者等に法第3条の調査義務が発生する。
- 添加剤として特定有害物質を3 %以上含む物質を製造する有害物質使用特定施設を廃止した場合、その土地の所有者等に法第3条の調査義務が発生しない。
- 都道府県知事の確認により法第3条の調査義務が一時的免除になった土地において、土地の利用方法の変更を行う場合は、変更を行う30日前までに届出を行わなければならない。
【解答】
- (1)
【解説】
-
法第3条の調査義務は、水質汚濁防止法第2条第2項に規定する特定施設の内、特定有害物質を使用等する施設の廃止時に発生します。そのため、特定施設に該当しない施設(例えば、ガソリンスタンド)を廃止するに場合には、法3条の調査義務は発生しません。従って、本問題の解答は選択肢(1)となります。
選択肢(3)についても正解のように思えますが、法における「使用等」の定義は貯蔵が含まれないため、不正解でとなります。
選択肢(2)については、形質変更の面積が3,000m2未満の場合であり、かつ土地利用の方法に変更がない場合には、調査義務が免除されることがあります。ただし、形質変更の面積が3,000m2以上の場合、法第4条第2項の命令の該当要件となるため、その場合は3条調査の調査義務が発生します。
選択肢(4)については、特定有害物質を1%以上含む物質を使用等する特定施設であれば法第3条の調査義務が発生します。
また、選択肢(5)については、土地の利用方法の変更する場合には、法3条の調査義務が発生します。そのため、届出をすればよいということではありません。30日前までの届出については、法4条に該当する形質変更の場合が相当します。
【補足】
-
法第3条の調査対象物質は特定施設で使用していた物質とは限らない
旧法では、廃止した特定施設において使用等されていた物質のみが調査の対象とされていました。ただし、法改正後は、特定施設に関らず、対象地において使用等されていた使用等されていた物質についても調査を実施する必要があります。
従って、法第3条の調査義務が発生する際に地歴調査を実施する場合は、特定施設の状況のみならず、対象地における全ての特定有害物質使用状況を確認することに留意してください。
【問題9】
法における第一種特定有害物質により汚染された地下水の摂取等のリスクに対する措置に関して、◎ 指示措置、○ 指示措置と同等以上の効果を有すると認められる措置、× 指示措置とは認められない措置に区分して示した次の5つの表のうち、正しいものはどれか。
措置の種類 | 第二溶出基準 | |
---|---|---|
適合 | 不適合 | |
原位置封じ込め | ◎ | ◎※ |
遮水工封じ込め | ◎ | ◎※ |
地下水汚染の拡大の防止 | ○ | × |
措置の種類 | 第二溶出基準 | |
---|---|---|
適合 | 不適合 | |
原位置封じ込め | ◎ | ◎※ |
遮水工封じ込め | ○ | ◎※ |
地下水汚染の拡大の防止 | ○ | × |
措置の種類 | 第二溶出基準 | |
---|---|---|
適合 | 不適合 | |
原位置封じ込め | ◎ | ◎※ |
遮水工封じ込め | ○ | ◎※ |
地下水汚染の拡大の防止 | ○ | ◎ |
措置の種類 | 第二溶出基準 | |
---|---|---|
適合 | 不適合 | |
原位置封じ込め | ◎ | ◎※ |
遮水工封じ込め | ◎ | ◎※ |
地下水汚染の拡大の防止 | ○ | ○ |
措置の種類 | 第二溶出基準 | |
---|---|---|
適合 | 不適合 | |
原位置封じ込め | ◎ | ◎※ |
遮水工封じ込め | ○ | ◎※ |
地下水汚染の拡大の防止 | ○ | ○ |
※汚染土壌の汚染状態を第二溶出量基準に適合させた上で行うことが必要
【解答】
- (4)
【解説】
-
要措置区域において指示される措置内容一覧を以下に示します。
表 汚染の除去等の措置一覧 措置の種類 第一種特定有害物質
(揮発性勇気化合物)第二種特定有害物質
(重金属等)第三種特定有害物質
(農薬等)第二溶出基準 第二溶出基準 第二溶出基準 適合 不適合 適合 不適合 適合 不適合 原位置封じ込め ◎ ◎※ ◎ ◎※ ◎ × 遮水工封じ込め ◎ ◎※ ◎ ◎※ ◎ × 地下水汚染の拡大の防止 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 土壌汚染の除去 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 遮断工封じ込め × × ○ ○ ○ ◎ 不溶化 × × ○ × × × ※汚染土壌の汚染状態を第二溶出量基準に適合させた上で行うことが必要
上表より、第一種特定有害物質の基準不適合土壌に対して指示される措置内容は、原位置封じ込め及び遮水工封じ込めの2種類になります。また、上記2種類の措置内容と同等の効力のある措置として地下水汚染の拡大の防止、土壌汚染の除去が該当します。
以上より、本問題の解答は選択肢(4)となります。
【補足】
-
土壌汚染の措置を講ずるときは、状況に応じて選択することが望ましい
基本的に、要措置区域に該当する土地における措置内容は、行政より指示された内容を満たせば、法律上は問題ありません。ただし、今後の土地利用内容が砂場等の汚染が接触する危険性が高い用途の場合は、土壌汚染を完全除去する必要があります。また、土地売買を予定している場合でも、土壌汚染が残存している場合は、現実的に土地の利用が制限を受けることや、土地の価値自体が下がるため、土壌汚染を除去する必要が生じる場合もあります。さらに、土壌汚染の対策土量が少ない場合、措置費用が原位置封じ込め等の指示内容よりも全量除去した方が措置費用が安い場合も考えられます。
一方、土地利用の内容やコスト的に全量除去ができないが、汚染の拡散を防止したいという場合に、地下水汚染の拡大の防止は有効な措置と考えられます。
このように、措置を行う際は、今後の土地利用・運用状況や汚染状況を考慮した上で、措置内容を決定することをお勧めします。
この記事は
ジオテクノス株式会社
四戸 が担当しました