DOWAエコジャーナル

本サイトは、DOWAエコシステム株式会社が運営・管理する、環境対策に関する情報提供サイトです。毎月1回、メールマガジンの発行と情報を更新しています。

文字サイズ

DOWAエコジャーナル > 環境便利帳 記事一覧 > 土壌汚染調査技術管理者試験問題の解説(3)

環境便利帳記事一覧 ▶︎

土壌汚染調査技術管理者試験問題の解説(3)

■平成23年度土壌汚染調査技術管理者試験の解答及び解説(その3)

前回に引き続き、平成23年度土壌汚染調査技術管理者試験の解説を示します。
今回は、土壌汚染状況調査の結果、土壌汚染が確認された土地において、当該汚染の対策を実施する際に必要な詳細調査に関する問題についてです。汚染対策の対象土壌の数量、工期、費用を策定する際に重要で、土壌汚染の対策を考えている方にも有効な情報です。是非、ご参照ください。

【関連リンク】

環境省ホームページ: 平成23年度土壌汚染調査技術管理者試験の結果について

【問題3】

法における詳細調査の目的に関する次の記述のうち、もっとも適当なものはどれか。

  1. 土壌汚染状況調査を実施後、土地の所有者等が自主的に地下水濃度とその分布を調べるために行う。
  2. 要措置区域等に指定する範囲を規定することを目的として実施する。
  3. 土壌汚染が存在するおそれがないと認められる土地土壌汚染状況調査を法第14条に基づいて省略した場合に、その後の形質変更時に実施する。
  4. 掘削除去を行う場合において、掘削された土壌に汚染がないことを確認する。
  5. 措置に応じて事前に行われるものであり、基準不適合土壌の存在範囲を確認したり、原位置封じ込めにおいて不透水層を確認するため等を目的として行う。

【問題4】

法における詳細調査を実施して、汚染の存在する範囲及び深さを確定する必要のあ  る措置として次に掲げるA~Fのうち、正しいものはいくつあるか。

A 地下水の水質の測定 (1)1つ
B 原位置不溶化 (2)2つ
C 遮水工封じ込め (3)3つ
D 盛土 (4)4つ
E 立入禁止 (5)5つ
F 区域内土壌入れ替え

【問題3 解答】

(5)

【問第4 解答】

(3)

【解説】

問題3及び4は関連性のある事項のため、同時に解説することとします。

土壌汚染対策法では、基本的には概況調査(平面的な汚染範囲把握の調査)までの実施が義務付けられています。
一方、詳細調査は、汚染の措置を講ずる際に、土壌汚染の3次元的な分布(平面及び深度範囲)を把握するために実施する必要があります。特に、区域の種類の変更(要措置区域→形質変更時要届出区域)や区域解除を目的とした措置の場合は、汚染の分布状況の把握は必要となる場合が多く、概況調査で汚染が確認された場合で、その後、何らかの措置を行う場合は、詳細調査に移行するケースがほとんどです。
下表に、汚染の措置の種類と詳細調査の必要性についてまとめます。

措置名 措置内容 詳細調査の必要性
(基準不適合土壌の
存在範囲の把握)
土壌溶出基準不適合により実施される措置 地下水の水質測定 地下水のモニタリング ×
原位置不溶化 地下水の汚染溶出の抑制措置
不溶化埋め戻し
原位置封じ込め 汚染地下水の拡散防止措置 ×
(不透水層の確認)
遮水封じ込め
遮断工封じ込め
地下水汚染の拡大 ×
土壌含有量基準不適合により実施される措置 盛土 汚染土壌の飛散防止措置
舗装
立入禁止 汚染土壌の人体への暴露を防止する措置
区域内土壌入換え
区域外土壌入換え
共通 汚染土壌の除去 土壌汚染を全量除去する措置

以上より、問題3及び4の解答が、それぞれ(5)、(3)となります。

【補足】

仮に汚染措置を講じなくても詳細調査まで実施することが望ましい

詳細調査では、汚染深度範囲の確定や地下水汚染の有無の確認を行います。そのため、汚染土壌の対策費については、詳細調査後でなければ分からないということになります。土地売買の際に土壌汚染を残したまま取引を進めることもあります。しかし、このような場合でも、土地購入者に対して、土壌汚染の対策コストや期間を把握した上で交渉しなければ、売買契約まで至らないでしょう。

このため、仮に自身は汚染を対策する意志が無くても、土地売買時に支障が生じないようするために、詳細調査まで実施することをお勧めします。

▲このページの先頭へ


【問題2】

法の要措置区域に指定されている単位区画のうち、深度調査が実施されていない単位区画(1)~(5)について汚染の到達深度を求めることにした。
下の図の(1)~(5)の汚染の到達深度の設定として次に掲げるもののうち、もっとも不適当なものはどれか。

(1) 3m
(2) 2m
(3) 2m
(4) 3m
(5) 3m


【解答】

(3)

【解説】

詳細調査では汚染深度の確認を行いますが、移動性の高い第一種特定有害物質や第二溶出基準を超過した第二種特定有害物質に関しては、単位格子(10m格子)毎にボーリング調査を実施することになります。一方、移動性の低い第二種特定有害物質による土壌汚染であり、かつ第二溶出量基準未満の指定区域に関しては、各30m格子内で最高濃度が検出された単位格子での詳細調査で評価することがあります。

この場合に、調査を実施していない単位区画の汚染深度範囲は、当該単位区画の中心から最も近い地点における調査結果を反映させることが可能です。仮に、最も近い地点が複数存在する場合は、汚染の到達深度が最も深い値を反映させます。

問いの図面を確認すると、(3)区画の中心から最も近い地点の汚染到達深度は深度1mと3mです。上記方針に従えば、(3)区画の汚染到達深度は3mとなるため、不適当な選択肢は(3)となります。

【補足】

汚染対策コストは詳細調査の地点密度に反比例することもある

土壌汚染の除去措置を講ずる場合に、詳細調査を省略した単位区画については、改めて調査地点を設定し深度範囲を把握するか、若しくは、近接する区画の汚染到達深度まで掘削し、掘削底面の土壌に汚染が存在しないことを確認する必要があります。

後者を採用して措置を講じた場合は、調査に係る費用は削減することができます。ただし、詳細調査を省略した単位区画においては、近接する区画の汚染到達深度より潜在的に浅い可能性も考えられます。また、詳細調査を省略した区画については、その後の掘削除去措置時に底面管理が必要になり、工期の延長や追記工事の必要が発生する場合があります。

このため、土壌汚染の除去措置を講ずる際には、基準超過が確認された全ての単位区画において詳細調査を実施することをお勧めします。


四戸 この記事は
ジオテクノス株式会社
四戸 が担当しました

※ご意見・ご感想・ご質問はこちらのリンク先からお送りください。
ご氏名やメールアドレスを公表する事はありません。

▲このページの先頭へ

ページの先頭に戻る