環境アセスメント入門 その1
【1】環境アセスメントとは
人が豊かに暮らしてゆくためには、道路、空港、発電所などが必要です。しかし、それらの建設によって、周辺状況は確実に変化し、場合によっては環境に重大な影響を及ぼす可能性もあります。
そのような事態を未然防止するため、日本には環境アセスメント(法・条例での正式名称は「環境影響評価」。以下、アセスという)という制度があります。アセスは、開発事業の内容を決める際に、それが環境にどのような影響を及ぼすのか、事業者が事前に調査・予測・評価を行い、その結果を公表して周辺住民や自治体などから意見を聴きながら、環境保全の観点からより良い事業計画を作ることを目的としています。
【2】アセスの種類と規模要件
アセスは、開発事業の規模や種類によって、法・条例アセス、生活アセス、自主アセスの大きく3つに分けられます。
1. 法アセス、条例アセス(環境影響評価法、環境影響評価法条例(以下、アセス法、アセス条例)に基づくアセス)
法令により、一定規模以上の開発事業がアセスの対象として定められています。表1に、例としてアセス法で対象とされている事業およびその規模要件を示します。
表1 アセス法の対象事業
出典:環境アセスメント制度のあらまし(平成24年、環境省)
法アセス・条例アセスが必要となる要件は、アセス法の他に各自治体の条例でも独自に定められているため、地域によって事業の種類や規模が異なります。
例えば、アセス法では30ha以上の最終処分場は法アセスの対象ですが、焼却施設については法アセスの対象外です。しかし、例えば、秋田県のアセス条例では3ha以上の最終処分場および8t/h以上の焼却能力を持つ焼却施設が条例アセスの対象ですし、また岡山県のアセス条例では5ha以上の最終処分場および4t/h以上の焼却能力を持つ焼却施設が条例アセスの対象と規定されています。
また、アセス法とアセス条例は別個に対応する必要があります。たとえば、秋田県で30ha以上の最終処分場を設置する場合、アセス法・アセス条例のいずれでも対象となるため、国と県両方の審査を受ける必要があります。
なお、アセスの対象とならない上限一杯の規模で施設を設置した1~2年後に、再びアセスの対象とならない上限一杯の規模で増設する計画を立てると、利害関係者からいわゆる「アセス逃れ」と判断され、その後の手順に支障をきたす場合があるため注意が必要です。
2. 生活アセス(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃棄物処理法)に基づくアセス)
廃棄物処理施設に係るアセスについては、アセス法・アセス条例だけでなく、廃棄物処理法でも規定されています。
廃棄物処理法では「廃棄物処理施設=迷惑施設」の汚名返上を目指し、「生活環境影響調査」という名称で、規模に関わらず廃棄物処理法における施設設置の許可が必要となるすべての施設(!)でアセスの実施を義務付けおり、生活アセスと呼ばれています。
生活アセスは事業者の負担軽減のために、アセス法・アセス条例と比較して調査項目は少なく、手続も簡略化されています。このことから、別名ミニアセスとも呼ばれています。
3. 自主アセス
以上のような法令による義務がない場合でも、環境配慮をアピールし周辺住民の信頼や同意を得るために、事業者が自主的にアセスを実施することがあります。
これは自主アセスと呼ばれ、調査項目、調査方法、結果の公表など、その内容は事業者の目的や予算によって様々です。
次回は、アセスの流れ、項目の選定などについて、ご説明します。
【参考資料】
環境省ホームページ
環境アセスメント制度のあらまし(平成24年、環境省)
廃棄物処理施設 生活環境影響調査指針(平成18年、環境省)
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この記事は
イー・アンド・イー ソリューションズ
松崎 が担当しました