紛争鉱物とCFSプログラム(1)
紛争鉱物とは? ~概要~
米国証券取引所に上場しており「紛争鉱物」を製品に使用する企業は、その調達先を調べ、米国証券取引委員会(SEC)に毎年報告し、内容を公開することが、アメリカの金融規制改革法(ドッド・フランク法)で義務付けられました。
自社の製品を米国上場企業に供給していれば、または、自社の製品が組み込まれた製品が米国上場企業に供給されていれば、この紛争鉱物調査の対象になるため、日本企業にも影響があります。
DOWAグループも金を製錬・精製していますので、第3者の監査を受け、紛争鉱物不使用の製錬・精製業者(コンフリクトフリースメルター/CFS)の認定を取得しました。
ドッド・フランク法の適用は、2013年1月1日~2013年12月31日が初年度となり、初年度の紛争鉱物に関する報告書の提出締め切りは2014年5月31日です。
■紛争鉱物
紛争鉱物とは、アメリカの金融規制改革法(ドッド・フランク法)の定義では、スズ・タンタル・タングステン・金、と、コンゴ民主共和国もしくは周辺国で紛争の資金源となっている鉱物のことです。
■紛争鉱物の定義
「紛争鉱物」は、下記のものを意味する。
- (A)
- コロンバイト‐タンタライト(コルタン)、錫石、金、鉄マンガン重石※1、またはこれらの派生物、
または
- (B)
- コンゴ民主共和国もしくは周辺国において紛争の資金源となっていると国務長官が判断したその他の鉱物またはその派生物
「周辺国」− コンゴ民主共和国に関し「周辺国」は、国際的に認められた国境をコンゴ民主共和国と共有する国を意味する。
ドッド・フランクウォールストリート改革および消費者保護法(金融規制改革法)
(出典:経済産業省ホームページ アメリカ 金融規制改革法 第1502条仮訳)
※1:鉄マンガン重石は、これはタングステンの鉱石鉱物です。
※2:周辺国とは、コンゴ民主共和国と接する国(9カ国)です。
■3TG
スズ(Tin)・タンタル(Tantalum)・タングステン(Tungsten)・金(Gold)の鉱石とその派生品は、英語の頭文字をとって3TGと呼ばれています。
■なぜ「金融」規制改革法で鉱物の情報公開なのか
「OECD 紛争地域及び高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・デリジェンス・ガイダンスにあるように、紛争地域で天然鉱物資源開発が行われており、これらの地域から調達を行っている企業は、紛争に手を貸してしまうリスクがある、と国際的に認識されています。
「OECD 紛争地域及び高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・デリジェンス・ガイダンス」は、鉱物採掘活動を通じて紛争に手を貸してしまう事を回避するためのものですが、強制力はありません。そこで、アメリカでは金融規制改革法(ドッド・フランク法)によって情報公開を義務付けることで、コンゴ民主共和国の武装集団の資金源を絶つことを目的としています。
欧米ではNGOが社会の番犬と言われるように、市民権を得ています。大量虐殺と人道に対する犯罪行為の撲滅をミッションとしたアメリカのNGOのEnough Projectが、電子機器メーカーの紛争鉱物の取組みに関するランキングを発表し、その結果から不買運動や抗議運動にも発展しました。
金融規制改革法によって紛争の資金源となる鉱物の使用は禁止されていませんが、紛争鉱物に関する情報を公開しなければいけないとなると、企業は紛争に関係する鉱物の使用を削減しようとするでしょうし、結果として紛争地域への資金の流入が減少して、紛争に伴う人権侵害を抑制することにつながる、と考えられます。
【参考資料】
経済産業省ホームページ
米国の紛争鉱物開示規制
金融規制改革法第1502条(仮訳)
OECD紛争鉱物ガイダンスに関する関連資料(SEC最終規則にて言及あり)
OECD紛争地域及び高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュ-・ディリジェンス・ガイダンス」(仮訳)
この記事は
エコシステムリサイクリング株式会社
岡田 が担当しました