進化するスイスのごみリサイクル その2
〜ごみ処理・リサイクル施設〜
■廃棄物埋め立て禁止までの歴史
スイス連邦は、廃棄物を回収して環境に無害化するために、1986年に「廃棄物管理ガイドライン」を発表しました。そして1992年に「廃棄物処理施設計画」がスタート、地方自治体の廃棄物処理の責任は州に委ねられることになりました。様々な検討を経た後、1996年に連邦議会は、可燃性廃棄物の埋立を禁止する、廃棄物処理条例を改正しました。したがってスイスでは、2000年1月1日より、可燃性廃棄物の埋立は禁止となりました。これには一切の例外は認められていません。
出典:スイス連邦環境省 Plus de déchets combustibles en décharge après le 1er janvier 2000
それでは、可燃性廃棄物の処理・リサイクル施設をご紹介します。
焼却・熱リサイクル施設(ジュネーブ州:CheneviersⅢ;シュヌビエⅢ)
ジュネーブ州は、1966年に最初の焼却施設であるシュヌビエⅠをローヌ河沿いに建設しました。現在は三代目のシュヌビエⅢが稼働しており、1993年よりエネルギーリサイクルを開始しています。ジュネーブ州の公的機関、SIG(Services Industriels de Genève)がシュヌビエを運営しています。
スイスで焼却される廃棄物は年間400万トンです。2019年、シュヌビエⅢはその中の29万トンの都市・農業・産業・特殊廃棄物を処理しました。そして、102,992MWHの電気、102,992M3のバイオ・ガス(BioGaz)、267,799MWHの熱を生成しました。
出典:シュヌビエⅢレポート(2019)SIG RAPPORT D'EXPLOITATION VALORISATION DES DÉCHETS 2020
写真:シュヌビエⅢ
出典:Cheneviers – Informations déchets encombrants et documents confidentiels | SIG
ごみ収集車で集められた都市の可燃ごみは、トラック稼働を減らしてCO2削減に貢献するために、途中からリサイクル燃料を使った船に移し替え、シュヌビエⅢに運びます。
ジュネーブ市のごみの分別表:「可燃ごみ」のマークは右上。
シュヌビエⅢは「排煙浄化システム」の導入により、大気汚染の問題を解決し、焼却によって生じる熱を利用して電気や暖房用水に変え、一般家庭に供給することを始めました。暖房ネットワークはシュヌビエから地下のパイプで顧客とつながり、ポンプで循環しています。
シュヌビエⅢの暖房ネットワーク
CADIOM
※CADIOM社はSIGが51%出資する、電気・暖房ネットワークを運用する会社。
また焼却後、さらに金属を分別して回収することも行っています。
シュヌビエⅢとⅣ
Sites et patrimoine : l’usine des Cheneviers | SIG
現在、シュヌビエⅢは通常業務を行いながら、シュヌビエⅣに建て替え中です。これは政府の要求によって、2023年までに最新世代に切り替えることを義務づけられたからです。
シュヌビエⅣが稼働すれば、16万トン以内の廃棄物で、現在と同じ量のエネルギーを生産する予定です。
現在は22万トンの可燃物を焼却していますが、16万トンに減らすということは、もっと可燃物ごみを分別してリサイクルしようと考えているからです。
現在、可燃物ごみをさらに減らすための方法が検討されています。
PETのリサイクル工場(グラールス州:Poly Recycling社)
プラスチックメーカーからなる、製造事業者団体「プラスチックヨーロッパ」の2016年の報告によると、スイスのプラスチックごみは75%が焼却されていました。つまり、リサイクル率は25%で、EUの平均41%に比べると、リサイクル率はあまり進んでいないと言えます。しかし、PETのリサイクル率は82%と高水準でした。
プラスチック排出削減の取り組みは、スイス連邦レベルではなく、州政府単位になっています。プラスチックごみの処分は、州政府が自治体に委任して、民間業者が回収に当たっています。
出典:JETRO プラスチック排出削減における、官民の取り組み[2019年10月2日]
グラールス州にあるポーリー・リサイクリング社は、2019年から稼働したリサイクル工場で、スイス初の技術を使い、少ない材料で、薄くて、軽い再生ペットボトルを生産します。また、この再生ペットからフリースジャケットのような繊維、チョコレートトレイ、シャンプーや飲料ボトルなども生産しています。
さらに、PETは耐薬品性が高いことから、化粧品や洗剤の包装にも再利用されています。自動車産業関連では、エアバッグ、シートベルト、断熱マット、エアフィルターなどにも利用されています。
このように、スイスはプラスチックごみのリサイクル率を上げる課題は残っていますが、PETに関するリサイクルは、技術的に先端を走っていると言えるでしょう。
次の最終回は「稼働しているリサイクルプロジェクトと将来の展望」について、ご説明いたします。
この記事は
エコジャーナルサポーター
Mika が担当しました