産廃マニフェストの運用解説
排出事業者が委託した産業廃棄物の処理が適正に実施されているかを確認して管理をすることは不法投棄などによる環境汚染を防ぐためにとても大切です。その為、産業廃棄物廃棄物を引き渡す際には産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付が「廃棄物処理法の第12条の3」により定められています。
マニフェストには使用する媒体、委託する運搬経路などにより様々な種類があります。まず、マニフェストには産業廃棄物が処分場所に直接運搬される場合に使用する「直行用」と、処分場所に直接運搬せずに積替え又は保管を経由する場合に使用する「積替え用」と2種類あります。そして、複写式の伝票を使用する紙マニフェストとJWNETの情報処理センターを利用して登録する電子マニフェストがあります。
今回はマニフェストについて排出事業者が気をつけるべきポイントを、「直行用」の紙マニフェストの運用を例に説明します。
1. マニフェストの流れ
紙マニフェストは7枚つづり(積替え保管用は8枚つづり)となっており、下記の通りA票~E票でそれぞれ保管者などが異なります。
マニフェスト 種類 | 対応内容 | 保管者 |
---|---|---|
A票 | 排出時、「運搬の受託」欄記載後にA票を切り取り、排出事業者が保管する | 排出事業者 |
B1票 | 収集・運搬業者が保管する | 収集・運搬業者 |
B2票 | 収集・運搬業者が運搬完了後に排出事業者へ返送する | 排出事業者 |
C1票 | 中間処理業者が保管する | 中間処理業者 |
C2票 | 中間処理業者が中間処理完了後に収集・運搬事業者へ返送する | 収集・運搬業者 |
D票 | 中間処理業者が中間処理完了後に排出事業者へ返送する | 排出事業者 |
E票 | 中間処理業者が最終処分の完了を確認し、排出事業者へ返送する | 排出事業者 |
※中間処理業者は2次マニフェストを発行し、最終処分業者への処分を委託します。
2次マニフェストでの処分完了を確認し、上記E票を発行します。
排出事業者はマニフェストに必要事項を記入し、収集・運搬業者へ廃棄物を引き渡す時点でA票以外を運搬業者に渡し、その後、運搬・中間処理・最終処分が完了した時点でB2票、D票、E票の返送を受け取ります。
図:マニフェストの流れ(直行用マニフェスト)(筆者作成)
2. 産業廃棄物を引き渡すときに排出事業者が記載すること
排出する廃棄物がきちんと処理されているかについての管理と照合は、排出時に交付するマニフェストの記載情報を元に行います。そのため、マニフェストを交付する際には、記載するべきことを、漏れなく、間違えずに、記載をすることが非常に重要です。
- マニフェストを交付する日付(産業廃棄物を引き渡しする日付)
- 必要に応じてマニフェスト管理のための番号を記入
- マニフェストを交付する担当者の氏名を記入
- 排出事業者の会社名・住所・電話番号
- 排出事業者と排出事業場が異なる場合は、事業場名・住所・電話番号
- 委託する産業廃棄物の種類・法分類(普通or特管 該当する法分類にチェックする)
- 委託する産業廃棄物の体積・重量・個数(m3/t/ドラム缶数/フレコン数等)
- 委託する産業廃棄物の具体的な荷姿(ローリー/ダンパー/ドラム缶/斗缶/パレット/コンテナ等)
- 委託する産業廃棄物の具体的な名称
- 委託する廃棄物が特別管理産業廃棄物に該当する場合、特別管理産業廃棄物に該当する有害物質の種類(Pb、Cn等) 無い場合は【無し】
- 契約書に基づき処分方法を記入
- 運搬や処分をする際に注意することがあれば記載。
行政によっては他県から廃棄物を持ち込むときに事前協議が必要な場合があります。事前協議の受理番号、受理日付をこの欄に記入するよう行政から指導を受ける場合もあります。 - 一次マニフェストの場合は記入不要。
- 委託契約書に基づき最終処分業者名・住所・電話番号を記載。
欄内に記載が困難な場合は「委託契約書記載の通り」にチェック。 - 委託契約書に基づき運搬委託業者名・住所・電話番号を記入
- 委託契約書に基づき処分委託事業場名・住所・電話番号を記入
- 委託契約書に基づき処分委託業者名・住所・電話番号を記入
- 照合確認欄に各票の返却期限日を記入して、返却を受けた際に活用しましょう。
マニフェスト記入のポイント
- 記入漏れや誤記載が無いようご注意ください。
(上記図の⑥「種類(普通の産業廃棄物)」、「種類(特別管理産業廃棄物)」欄のチェックなどは見落としがちです) - 搬出前に、収集・運搬業者や処理業者名があっているかご確認ください
(別業者向けに準備したマニフェストと混同しないようご注意ください) - 1台の車両に複数の種類の廃棄物を合い積みする場合には、廃棄物の種類ごとに発行ください
3. マニフェストの返却と保存の義務
排出事業者様が発行した後のマニフェストの写しの送付を受けるまでの期間・保管期限については(表1)のように定められております。
期間内に写しの送付を受けたかをチェックし、返却されたマニフェストを保管することは排出事業者の義務とされています。
表1. マニフェストの管理に関する期間
排出事業者の手元にある票の種類 | 役割 | 写しの送付を受けるまでの期間 | 保存期間 | ||
---|---|---|---|---|---|
交付日から※ | 委託した業務の 終了日から |
受領日から | |||
普通 | 特別管理 | ||||
A票 | 排出事業者控え | − | − | − | 5年間 |
B2票 | 収集運搬終了確認 | 90日以内 | 60日以内 | 終了から10日以内 | |
D票 | 処分終了確認 | ||||
E票 | 最終処分終了確認 | 180日以内 |
※交付日から写しの送付を受けるまでの期間。例えば、普通産業廃棄物で交付から85日目に処理が終了した場合は5日以内に返送を受けなければいけません。
4. 返送を受けたマニフェストを確認するポイント
戻ってきたマニフェストの確認はどのようにしていますか?ここでは委託した廃棄物が適正に処理されたかどうか、マニフェストで確認をするポイントをご説明いたします。
廃棄物の引渡し時に確認すること | マニフェストの必要な箇所に記載したか(漏れ・ミスがないか) |
---|---|
マニフェストを収集運搬委託業者に渡したか | |
“全ての票(A票、B1票、B2票、C1票、C2票、D票、E票)”の「運搬の受託」欄に実際に現場で引取りをした運搬担当者が収集運搬委託会社名・氏名を記載したか確認 | |
A票を切り離して収集運搬委託業者から受け取ったか | |
受け取ったA票をファイルに保管 |
交付後に進捗を確認すること | B2票 | 返送期限を越えていないか(普通産業廃棄物:交付日から90日以内、特別管理産業廃棄物:交付日から60日以内) |
---|---|---|
D票 | 返送期限を越えていないか(普通産業廃棄物:交付日から90日以内、特別管理産業廃棄物:交付日から60日以内) | |
E票 | 返送期限を越えていないか(交付日から180日以内) |
注意
- 返送期限が近づいてもマニフェストが返送されない場合は、控えのA票の記載事項を元に、委託した処理業者に状況を問い合わせましょう。
- 返送期限が過ぎてもマニフェストが戻ってこない場合は速やかに運搬又は処理会社に確認をして状況を把握し、生活環境の保全上の支障の除去又は発生の防止のために必要な処置を講じる必要があります。
返送を受けたら確認すること | B2票 | 収集運搬が委託契約内容どおりに実際に行われたか「運搬の受託」欄を確認 |
---|---|---|
運搬・処分の受託欄に収集運搬・処分受託会社名・担当者氏名が記載されているか。 | ||
「運搬終了年月日」が記載されているか | ||
「運搬終了年月日」から10日以内にマニフェストが返却されているか | ||
D票 | 中間処分が委託契約内容どおりに実際に行われたか「処分の受託」欄を確認 | |
運搬・処分の受託欄に収集運搬・処分受託会社名・担当者氏名が記載されているか。 | ||
「処分終了年月日」が記載されているか | ||
「処分終了年月日」から10日以内にマニフェストが返却されているか | ||
E票 | 最終処分を行った場所が委託契約内容どおりに実際に行われたか「最終処分の場所」欄を確認 | |
収集運搬・処分及び最終処分受託会社名・担当者氏名が記載されているか。 | ||
「最終処分終了年月日」が記載されているか | ||
「最終処分終了年月日」から10日以内にマニフェストが返却されているか |
チェック!
マニフェストの「照合確認欄」を活用していますか? B2表・D票・E票がそれぞれ返送されたらA票の「照合確認」欄に受領日を記入して確認しましょう。期日以内に返送されているかの確認に便利です。
5. マニフェスト交付報告について
紙マニフェストを交付した排出事業者は、4月1日から翌年3月31日までの1年間の全てのマニフェストの交付等の状況に関する報告書を作成して、4月1日から6月30日までに排出事業者の所在地を管轄する都道府県知事又は政令市長に提出する必要があります。
報告書は環境省が作成した書式(様式第3号)がありますが、都道府県等で独自の書式を定めている場合もありますので管轄する都道府県のホームページ等で御確認ください。
※電子マニフェストを運用している場合は、データを入力しておけばJWNETを運営している日本廃棄物処理振興センターがまとめて報告を行いますので報告の必要はありません。
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この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
後藤 が担当しました