IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書の統合報告書の概要
IPCCは世界気象機関と国連環境計画によって設立された政府間組織です。気候変動に関する最新の科学的知見を世界中の研究者が協力し文献等に基づいて定期的に評価報告書を作成しています。この報告書は国際交渉や各国政府の国内政策の科学的な基礎情報として世界中の政策決定者が引用しています。
2023年3月のIPCCの総会にて第6次評価報告書の統合報告書が採択され、4月に政府より和訳版や解説資料等が発表されました。
統合報告書はそれまでに報告された以下の3つの作業部会の報告書の知見をとりまとめたものです。
- 第1作業部会 自然科学的根拠
- 2021年8月公表
- 第2作業部会 影響・適応・脆弱性
- 2022年2月公表
- 第3作業部会 気候変動の緩和
- 2022年4月公表
今回、統合報告書の概要の主なポイントを以下に抜粋しました。
1.「現状と把握」について
- 人間活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がない。1850〜1900年を基準とした世界平均気温は2011〜2020年に1.1℃の温暖化に達した。
- 大気、海洋、雪氷圏、及び生物圏に広範かつ急速な変化が起こっている。
- 2021年10月までの各国のNDCから示唆される2030年の世界全体のGHG排出量では、温暖化が21世紀の間に1.5℃を超える可能性が高い。
NDC:
温室効果ガス排出削減等のための国際枠組みであるパリ協定において、各国が自らの削減目標として「国が決定する貢献(NDC: Nationally Determined Contribution)」を定め、5年毎に提出・更新することが義務付けられています。日本は2021年10月に新たな削減目標として、2050年カーボンニュートラルに向け、2030年度に46%削減することを目指す(さらに50%に向け挑戦を続ける)という旨のNDCを提出しています。
2.「長期的・短期的応答」について
- 継続的な温室効果ガスの排出は更なる地球温暖化をもたらし、最良の推定値でも2040年までに1.5℃に到達する(多くのシナリオ及び経路では2030年代前半に1.5℃到達)。
- 温暖化を1.5℃又は2℃に抑制できるかは、主にCO2排出正味ゼロを達成する時期までの累積炭素排出量と、この10年の温室効果ガス排出削減の水準によって決まる。
- この10年間に行う選択や実施する対策は、現在から数千年先まで影響を持つ。
- 気候目標が達成されるためには、適応及び緩和の資金はともに何倍にも増加させる必要があるだろう。
3.「緩和の経路」について
- 温暖化を1.5℃又は2℃に抑えるには、この10年間に全ての部門において急速かつ大幅で、ほとんどの場合即時の温室効果ガスの排出削減が必要であると予測される。
4.「緩和・適応オプション」について
- 実現可能で、効果的かつ低コストの緩和と適応のオプションは既に利用可能だが、システム及び地域にわたって差異がある。
- 20米ドル/tCO2-eq 未満のコストで排出削減に大きく寄与するのは、太陽光エネルギーと風力エネルギー、エネルギー効率の改善、及びメタン排出量(石炭鉱山、石油・ガス、廃棄物)の削減である。
詳細については環境省のホームページをご確認ください。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)サイクル
統合報告書の概要(簡易版)
「政策決定者向け要約」文科省、経産省、気象庁、環境省による暫定訳
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
山野 が担当しました