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そうだったのか!マイクロプラスチック問題とは?(3)
〜マイクロプラスチックの問題と国際動向について〜

【6】マイクロプラスチックの影響

この海洋を漂うマイクロプラスチックがなぜ環境問題となるのでしょうか?

最大の要因は海洋生物がマイクロプラスチックを摂取してしまうことです。

海洋中の魚類、貝類、甲殻類などがマイクロプラスチックを誤飲した事例が報告されています。マイクロプラスチックは体内で消化されないため、粒子経が非常に細かい場合はそのまま体外へ放出されますが、粒子経がある程度大きい場合には消化器官の閉塞などの問題を引き起こし、最悪の場合は個体が死んでしまいます。

また、影響を受けるのは、魚介類だけではありません。「動物プランクトンによるマイクロプラスチック摂取」(Environmental Science & Technology誌)によれば、動物プランクトンもマイクロプラスチックを摂取することが報告がされています。マイクロプラスチックの誤食により脂質代謝に障害が起きるなどの影響が確認されています。

【図5】マイクロプラスチックを摂取した動物プランクトン
緑色に蛍光発光するポリスチレンビーズ(1.7μm-30.6μm)を観察

【出典】Matthew Cole et al., “Microplastic Ingestion by Zooplankton,” Environ. Sci. Technol., 2013, 47 (12), pp 6646–6655, DOI: 10.1021/es400663f

さらにマイクロプラスチックはその表面にPCBs(ポリ塩化ビフェニル)などの残留性有機汚染物質(POPs)を吸着させやすいという性質があります。実際に、日本の沖合海域で採取されたマイクロプラスチックから、海水中の濃度よりも高濃度のPCBsやDDE(ジクロロジフェニルジクロロエチレン)などの有害物質が検出されたという事例も報告されています。有害物が付着したマイクロプラスックを生物が食べてしまうことが起きているのです。

マイクロプラスチックを介した有害物資の生体への移行については、未だ詳細が明らかとはなっておりませんが、食物連鎖を通じて、有害物質がプランクトンから魚類、そして我々人間への蓄積する可能性も指摘されています。

【7】海洋プラスチック・マイクロプラスチックの発生防止へ向けた取組み

1970年代からプラスチックを中心とした海洋ゴミの調査は行われていました(【1】海洋ごみとは?参照)。
しかし、広大な海洋に漂流しているゴミは、誰のゴミか?それを誰がどうやって回収し処理するのか?その費用負担は誰がするの?という点が難題になっています。

その中で大量に存在し、かつ耐久性があり、生態系への被害もあるプラスチック(マイクロプラスチック)に関する国際的な議論が活発となったのは2015年以降です。
2015年のG7エルマウ・サミットにおいて、海洋ごみ問題が初めて首脳宣言に取り上げられました。
海洋ごみの発生予防や回収・処理のための行動を開始すること、マイクロプラスチック汚染の元となるマイクロビーズの自発的な廃止を目指すこと等が合意されました。

その後も、G7サミットや国連環境総会(UNEA)で、海洋プラスチックやマイクロプラスチックの発生防止へ向けた議論が行われてきました。

2018年のG7シャルルボワ・サミットで、カナダ及び欧州各国が自国でのプラスチック規制強化を進める「海洋プラスチック憲章」に署名しました。「海洋プラスチック憲章」には、プラスチックのリユース・リサイクル目標やプラスチック製品への再生プラスチック材の使用率の増加などが盛り込まれています。
またプラスチック製品のデザイン変革や適切なプラスチックごみの回収・リサイクルを通じて、海洋プラスチックごみ防止に向けた国際的な取組みを推進するものです。

日本は「海洋プラスチック憲章」には署名をしませんでした。プラスチック使用削減の実現には、市民・産業界との調整が必要であり、その準備が足りないため参加を見送ったことが理由として挙げられております。

日本国内では、2018年6月に閣議決定した第4次循環型社会形成推進基本計画の中で、プラスチックの資源循環を総合的に推進するための戦略(「プラスチック資源循環戦略」)を策定し、これに基づく施策を進めていくことが明記され、プラスチック使用の削減、プラスチックごみの回収・再生利用、バイオプラスチックの実用性向上と化石燃料由来プラスチックの代替促進などに取り組むとしています。

現在は、「プラスチック資源循環戦略」の作成へ向けて、中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環戦略小委員会が開催されています。「プラスチック資源循環戦略」は海洋プラスチック憲章の内容をカバーしつつ、2019年のG20までに策定するとしています。

マイクロプラスチックに関する取り組みもあります。
2016年3月、日本化粧品工業連合会は会員企業に対して、洗い流しのスクラブ製品(研磨剤入の洗顔料など)におけるマイクロプラスチックビーズの使用中止に向けた対応を図ることを要請しています。
また2018年6月には、海岸漂着物処理推進法が改正され、製造メーカーに対してマイクロプラスチックの使用抑制を求めています。

アメリカでは、2015年にアメリカ連邦議会で「Microbead-Free Waters Act of 2015」が可決されており、プラスチック製のマイクロビーズを含んだ、洗い流して使用する化粧品の販売・商取引が禁止されました。最近ではカナダ、オーストラリア、イギリスなどでも、アメリカと同様に国レベルでマイクロビーズの使用を禁止する動きが見られます。

このようにプラスチック・マイクロプラスチックの海洋への流出防止を目的として、その使用を規制・抑制するため各国で具体的な対策が始まっています。

【参考ホームページ】

外務省ホームページ
G7シャルルボワ・サミット 成果文書 健全な海洋及び強じんな沿岸コミュニティのためのシャルルボワ・ブループリント(仮訳)

G7 2018 Official Documents
Charlevoix Blueprint for Healthy Oceans, Seas and Resilient Coastal Communities


森田 この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
森田 が担当しました

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