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シンガポールの排水基準について

今回は、シンガポールの排水基準についてのお話しですが、その前に、背景情報として、シンガポールにおける水に関する特別な事情についてお話しします。

シンガポールはマレー半島の南端にある面積707km2の島国で、最高地点の標高は163mです。ちなみに東京23区の面積が621km2なので、それより一回り大きい広さです。
これらから容易に想像できるように、国土に水を涵養できる能力がほとんどないため、国土面積の半分からの雨水を貯水池に貯めて、ここから上水道水量の約2割を確保しているそうです。
また、マレーシアからの供給により上水道の水量の約4割を賄っています。

その他の方法では、高度下水処理水から約3割、海水の淡水化により約1割程度を賄っています。ちなみに、1日当たりの上水道需要は約170万m3で、東京都水道局の1日の平均供給量430万m3の約40%に相当します。

シンガポールの排水基準を示します。

ALLOWABLE LIMITS FOR TRADE EFFLUENT DISCHARGED
INTO A PUBLIC SEWER/WATERCOURSE/CONTROLLED WATERCOURSE

Items Of Analysis Public
Sewer
Watercourse Controlled
Watercourse
Units in milligram per litre or otherwise stated
1 Temperature of discharge45º℃45℃ 
2 Colour-7 Lovibond Units7 Lovibond Units
3 pH Value6-96-96-9
4 BOD (5 days at 20℃)4005020
5 COD60010060
6 Total Suspended Solids4005030
7 Total Dissolved Solids300020001000
8 Chloride (as chloride ion)1000600400
9 Sulphate (as SO4)1000500200
10 Sulphide (as sulphur)10.20.2
11 Cyanide (as CN)20.10.1
12 Detergents (linear alkylate
 sulphonate as methylene blue
 active substances)
30155
13 Grease and Oil
 Grease and Oil (Hydrocarbon)
 Grease and Oil (Non-hydrocarbon)

60
100
10

5

14 Arsenic510.05
15 Barium1055
16 Tin10105
17 Iron (as Fe)50201
18 Beryllium50.50.5
19 Boron550.5
20 Manganese1050.5
21 Phenolic Compounds
 (expressed as phenol)
0.50.2Nil
22 *Cadmium10.10.01
23 *Chromium
 (trivalent and hexavalent)
510.05
24 *Copper50.10.1
25 *Lead50.10.1
26 *Mercury0.50.050.001
27 *Nickel1010.1
28 *Selenium100.50.01
29 *Silver50.10.1
30 *Zinc1010.5
31 *Metals in Total1010.5
32 Chlorine (Free)11
33 Phosphate (as PO4)52
34 Calcium (as Ca)200150
35 Magnesium (as Mg)200150
36 Nitrate (NO3)20

NOTE:
*The concentration of Toxic Metal shall not exceed the limits as shown, individually or intotal.

表をご覧になって分かる通り、排出先によって3段階の基準が設定されています。それぞれの排出先は以下の通りです。

  • “public sewer”は、
    (a)政府所有の下水道、
    (b)下水道および排水路法に基づき設置された下水道、
    (c)私有地内に政府により設置された下水路、
    (d)私有地内に設置された政府により保守が行われている下水路。
  • “watercourse”は、
     貯水池、湖、川、小川、運河、 放水路、泉、井戸、海岸線隣接部、
     その他自然に、人工的にもしくは地下にある水。
  • “controlled watercourse”は、
    ”watercourse”のうちPUB(Singapore's National Water Agency)により飲料水の供給に供されているもの。

なお、表の下のNOTEにあるように、重金属類については、個々が基準を満たすと共に、総量でNo.31のMetals in Totalの基準を満たすことが求められています。

日本の排水基準と比較すると、以下のような特徴が挙げられると思います。

  • “watercourse”に適用される基準が、日本の排水基準とほぼ同レベル。飲料水に供される可能性がある“controlled watercourse”には、更に厳しい基準が定められている。
  • 日本で定められているトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの揮発性有機化合物に関する基準が定められていない。
  • 日本で定められていない、バリウム、ベリリウム、ニッケル、銀、亜鉛などの重金属の基準が定められている。
  • 重金属類の総量規制がある。

工場が立地する地区では“public sewer”が整備されており、集中排水処理施設で集中処理するシステムになっています。集中排水処理施設で異常値が出た場合には、PUBによる各工場の排水の抜き打ち検査があります。原因工場として特定された場合には対応を含めた説明が求められ、説明が不十分な場合には設備の改善命令が出されるようです。

シンガポールの排水基準 ポイント

  • 自社工場の排水の排出先がどのカテゴリーなのかを確認する必要がある(一般的に工場立地地区は“public sewer”が整備されている)
  • 日本とは異なる規制項目に対応した、排水処理設備が必要な場合もある
  • 重金属類の総量規制にも注意が必要

シンガポールで有害廃棄物の処理を行なっているTEC社では、固形廃棄物処理、廃液処理からリサイクルまで、幅広く廃棄物処理・リサイクルを行なっています。
詳しくは、こちらをご覧ください。

シンガポールの生活と廃棄物事情 −その3


吉成 この記事は
TEC、DOWAエコシステムシンガポール
吉成 が担当しました

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