使用済太陽光パネルのリサイクル制度創設に向けた審議報告
(その1)
2024年9月から、環境省の「太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」と経済産業省の「太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ」が合同で開催されています。
今回は、これまでの合同会議の様子をレビューします。
今後の審議状況についても定期的にレポートしていきます。
■趣旨
環境省と経済産業省は合同で、今後排出の増加が見込まれる太陽光パネルをはじめとする再エネ発電設備のリサイクル・適正処理に関する対応の強化に向け、制度的対応も含めた具体的な方策について検討することを目的として、2023年4月に【再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会】を開催しました。
その後、合計7回の合同会議が開催され、2024年1月に中間取りまとめが公表されました。
中間取りまとめでは、ライフサイクル全体の各プレーヤーが、「再エネ発電設備(モノ)」を適切に処理できるよう、必要な「費用(カネ)」と「情報」が円滑に流通する枠組みを構築するべく、各事業段階における課題について整理がなされました。
中間取りまとめの結果を受け、2024年9月からの合同会議では、モノ・費用・情報の3点を中心に制度化に向けた審議が行われています。
■第1回~第3回合同会議の概要
中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ
モノ・費用・情報の3点について事務局案が示されました。委員からは事務局案に対し概ね評価する意見が出されたものの、制度化の具体的な検討において、対象とすべき範囲や費用負担のあり方などについて様々な指摘がありました。一例を以下に示します。
「モノ」の観点
既設パネルや将来導入が見込まれるペロブスカイト型も含め、原則すべての太陽光パネルを制度対象とするべきとの指摘、パネル廃棄等に関わる事業者の登録制度・許可制度の検討、収集運搬時の積替え規制緩和、排出時ピーク(下図)の平準化に資する施策の必要性、パネル放置の可能性が高いシナリオを前提とした制度設計の必要性等
「費用」の観点
解体・撤去から適正処理・再資源化費用にかかる費用を「解体等費用」と「再資源化費用」に分け、前者は発電事業者が、後者は製造業者等がそれぞれ負担する仕組みとしてはどうか、拡大生産者責任を念頭に物理的責任と費用的責任を分けた上で製造業者等が環境配慮設計も果たせる仕組みの必要性、事業終了時に製造業者等が不存在となる可能性を考慮し、太陽光パネルの購入・設置時点で再資源化費用を預託してはどうか、運営維持費を抑えつつ費用確保できる透明性の高い資金管理団体の必要性等
「情報」の観点
放置対策のため非FIT/FIPを含めた処理責任者、設備所有者の情報把握の必要性、今後上市されるパネル情報の一元管理のためのデータベース整備、環境配慮設計の促進のためリサイクル率などの情報が製造事業者に戻る仕組み、送配電事業者や中間処理業者など関係者の協力により情報を確保する制度やマニフェストにより管理する仕組みの必要性等
■第4回、第5回合同会議の概要
中央環境審議会循環型社会部会太陽光発電設備リサイクル制度小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ
第4回、第5回合同会議では関係者へのヒアリングが行われました。
ヒアリング対象者
- 公益社団法人全国解体工事業団体連合会
- 一般社団法人太陽光パネルリユース・リサイクル協会
- AGC株式会社
- 福岡県
- PVCYCLE JAPAN
- 一般社団法人再生可能エネルギー長期安定電源推進協会
- 一般社団法人太陽光発電協会
ヒアリングでは各主体の取り組みや認識課題が紹介されたほか、モノ・費用・情報の各論点に対する業界としての考え方が示されました。また、一度に多量のパネルが廃棄された場合に備え廃掃法の処理期限の緩和や広域的な収集運搬にむけた広域認定制度の創設、中間集積場(積替え保管場所)の整備等の要望が出されました。
■今後の予定
前回までに実施されたヒアリングを踏まえつつ、次回合同会議より制度化に向けた議論が再開される予定です。今後も月1~2回程度で開催し、今冬頃に取りまとめがなされる見込みです。
この記事は
DOWAエコシステム ジオテック事業部
狩野 が担当しました