温暖化対策推進法の一部を改正する法律案が閣議決定されました
地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」が2021年3月2日に閣議決定され、第204回通常国会(2021年1月18日召集)に提出されました。
1. 背景
2015年国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)においてパリ協定が採択されました。
パリ協定では、世界共通の長期目標として世界全体の気温上昇を2℃より十分下回るよう、更に1.5℃までに制限する努力を継続することが合意されました。
【関連記事】そうだったのか!地球温暖化とその対策(11)~長期低炭素ビジョン:2℃目標とは~
日本は、2019年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定し、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。
「2050年カーボンニュートラル」とは、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにして脱炭素社会の実現を目指すことです。「排出を全体としてゼロ」とは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引いてゼロを達成することを意味しています。
【参考】2050年カーボンニュートラルの実現に向けて(環境省ホームページ)
2020年10月~12月に「地球温暖化対策の推進に関する制度検討会」が開催され、地球温暖化対策の更なる推進に向けた今後の制度的対応の方向性について取りまとめられました。
その検討会での取りまとめ等を踏まえ、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部が改正されることとなりました。
2. 概要
(1) 基本理念の新設
パリ協定に定める目標を踏まえ、2050年までの脱炭素社会の実現、環境・経済・社会の統合的向上、国民を始めとした関係者の密接な連携等を、地球温暖化対策を推進する上での基本理念が規定されました。
地球温暖化対策の推進に関する法律案
第二条の二 (基本理念)
地球温暖化対策の推進は、パリ協定第二条1(a)において世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏二度高い水準を十分に下回るものに抑えること及び世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏一・五度高い水準までのものに制限するための努力を継続することとされていることを踏まえ、環境の保全と経済及び社会の発展を統合的に推進しつつ、我が国における二千五十年までの脱炭素社会(人の活動に伴って発生する温室効果ガスの排出量と吸収作用の保全及び強化により吸収される温室効果ガスの吸収量との間の均衡が保たれた社会をいう。)の実現を旨として、国民並びに国、地方公共団体、事業者及び民間の団体等の密接な連携の下に行われなければならない。
(2) 地域の再エネを活用した脱炭素化を促進する事業を推進するための計画・認定制度の創設
地方公共団体実行計画に、施策の実施に関する目標が追加され、市町村は、地域の再エネを活用した脱炭素化を促進する事業(地域脱炭素化促進事業)に係る促進区域や環境配慮、地域貢献に関する方針等を定めるよう努めることとされました。
そして、市町村から、地方公共団体実行計画に適合していること等の認定を受けた地域脱炭素化促進事業計画に記載された事業については、関係法令の手続のワンストップ化等の特例※を受けられることとされました。
※ワンストップ特例:自然公園法・温泉法・廃棄物処理法・農地法・森林法・河川法の関係手続のワンストップサービスや、事業計 画の立案段階における環境影響評価法の手続(配慮書)の省略
(3) 脱炭素経営の促進に向けた企業の排出量情報のデジタル化・オープンデータ化の推進等
企業の温室効果ガス排出量に係る算定・報告・公表制度について、電子システムによる報告が原則化され、これまで開示請求の手続を経なければ開示されなかった事業所ごとの排出量情報について開示請求の手続なしで公表される仕組みとなりました。
詳しくは、環境省ホームページをご確認ください。
地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について[令和3年3月2日]
衆議院ホームぺージ
議案審議経過情報 閣法 第204回国会 47 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案
外務省ホームページ
2020年以降の枠組み:パリ協定
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました