水銀廃棄物ガイドライン解説 その3 「排出事業者にとっての改正ポイント」
~廃水銀等~
2017年6月に環境省から「水銀廃棄物ガイドライン」が公表されました。
今回からは、改正施行令・改正施行規則の改正ポイントとして、水銀廃棄物の処理を委託している排出事業者のみなさんが留意しなければいけない事項を解説します。
【1】ポイント
排出事業者にとってのポイントは、「廃水銀等が特別管理産業廃棄物に指定された」という事です。
廃水銀等は、平成28年4月1日に施行された改正により特別管理産業廃棄物に指定され、平成29年10月1日からは特定施設が追加されました。
何が廃水銀等に該当するのかは、解説その1「水銀廃棄物とは」をご確認ください。
【2】追加事項
水銀が常温で液体であり、揮発するという特性をふまえ、特別管理産業廃棄物に関して必要な一般的な措置に加えて、追加の措置が定められています。
下に、排出事業者の皆さんに関係する項目を挙げます。
a)保管場所
廃水銀等が、揮発や流出しないために、以下の措置を取らなければいけません。
- 飛散、流出、揮発防止のための措置(容器に入れて密封するなど)
- 高温にさらされないための措置
- 腐食防止のための措置
- ガイドラインでは、廃水銀等の保管に適した容器の材質として、合金を生成しない炭素鋼(水銀の純度が99.9%未満の場合は腐食を防ぐコーティング(エポキシ樹脂や電気メッキ)が施されているもの)やステンレス鋼が挙げられています。
b)収集運搬時
飛散、流出、揮発防止のため、密閉でき、収納しやすく、破損しにくい運搬容器に収納しなければいけません。
【3】特別管理産業廃棄物を排出する事業者としての責務
廃水銀等は特別管理産業廃棄物に指定されましたので、特別管理産業廃棄物を排出する事業者としての責務を果たさなければいけません。
- 特別管理産業廃棄物保管基準を遵守する
- 「廃水銀等」の収集運搬、処分の許可を受けた業者に委託する
- 特別管理産業廃棄物委託基準を遵守する
- 処理状況の確認、処理が適正に行われるための必要な措置を実施する
- マニフェストを交付する
- 特別管理産業廃棄物責任者を設置する
- 帳簿を作成し、保存する
特別管理産業廃棄物に関して必要な措置の一部ですが、以下の項目についても、ご注意ください。
- 委託契約書に、「廃水銀等」と記載する
- マニフェストの廃棄物の種類の欄に「廃水銀等」と記載する
- 産業廃棄物保管場所の掲示板にも、「廃水銀等」と記載する
廃水銀等の保管施設の表示の例
出典:水銀廃棄物ガイドライン(環境省)
■さいごに
廃水銀等は特別管理産業廃棄物に指定され、さらに水銀の特性をふまえ、追加措置が定められています。
また、排出事業者に関する事だけでなく、硫化施設が産業廃棄物処理施設に追加されたなど、処理業者に関する改正もありました。
次回は、排出事業者のみなさんも知っておきたい、収集運搬・処分に関する改正点についてまとめます。
水銀廃棄物ガイドラインには、改正点だけでなく、廃棄物処理法にて従来から求められている排出事業者の役割・責務がわかりやすくまとめられています。特別管理産業廃棄物を排出する際に求められる一般事項についても記載がありますので、ご覧になる事をおススメします。
【出典】
環境省ホームページ
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令等の公布(水銀関係)について
水銀廃棄物ガイドライン
廃棄物情報の提供に関するガイドライン
― WDS(Waste Data Sheet)ガイドライン ―
WDS:Waste Data Sheet(廃棄物データシート)
廃棄物処理法施行令等の改正(水銀関係)についての説明会(平成29年6月実施)説明資料(平成29年6月)
【参考資料】
環境省ホームページ
水銀廃棄物適正処理検討専門委員会(第8回)議事次第・配付資料
改正廃棄物処理法施行令(第2段施行分)に係る環境省令等で定める事項(案)
水銀廃棄物の適正処理について、新たな対応が必要になります。
廃棄物情報の提供に関するガイドライン
この記事は
DOWAエコシステム 環境ソリューション室
上田 が担当しました