平成29年度 廃棄物処理法改正のポイント その2
平成29年6月16日、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律が公布されました。
今回は「廃棄物の不適正処理への対応の強化」に係る主な改正部分を解説します。
【1】許可を取り消された処理業者への行政処分
市町村長、都道府県知事等は、廃棄物処理業の許可を取り消された者等が廃棄物の処理を終了していない場合に、これらの者に対して必要な措置を講ずることを命ずることができる。また、当該事業者から排出事業者に対する通知を義務付ける。
平成28年1月、愛知県の産業廃棄物処理業者が、食品製造業者等から処分委託を受けた食品廃棄物を食品として不正に売却していたことが発覚しました。立入検査等により県内4ヶ所、保管量8,981m3もの不適正保管が確認されました。
同年2月、県は不正を行った処理業者の許可を取り消すことなく、同社に対して、保管量等を適正化するように改善命令を出しました。また、処理業者に対して、排出事業者あてに処理困難通知を出すように指導しました。
なぜ、県はすぐに不正業者の許可を取り消さなかったのでしょうか。
それは、不適正保管されている廃棄物の撤去を優先するためです。
改正前の法律では、「許可を取り消された」処理業者は、改善命令の対象に含まれていませんでした。県は改善命令の状態を維持するために、許可を取り消さなかったのです。
こうした事態に陥らないようにするため、許可を取り消された処理業者に対しても、市町村長・都道府県知事等が必要な措置を命じることができるように改正されました。(第19条の10他)
また、許可を取り消された処理業者や事業の全部または一部を廃止した業者であっても、廃棄物の処理が終了していない場合、排出事業者に書面で通知することが新しく義務付けられました。(第14条の3の2他)
なお、この通知を受けた排出事業者は、生活環境の保全上必要な措置を講ずるとともに、通知を受けてから30日以内に措置内容等報告書を都道府県知事に提出しなければなりません。(第12条の3第8項)
【2】マニフェスト関連の改正
特定の産業廃棄物を多量に排出する事業者に、紙マニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付に代えて、電子マニフェストの使用を義務付ける。また、マニフェストの虚偽記載等に関する罰則を強化する。
前述した不適正処理事案において、処理業者は、受託した食品廃棄物の処分が終了していないにもかかわらず、電子マニフェスト上は処分が終了した旨の虚偽報告を行っていました。
こうしたマニフェスト(紙及び電子)の虚偽記載等を抑止するために、罰則が強化されました。※(第27条の2)
旧:6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
↓
新:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
また、事業活動に伴って特定の産業廃棄物を多量に排出する事業者に、電子マニフェストの使用が義務付けられました。(第12条の5)
なお、今後、電子マニフェストについては、不正検知システムの導入が検討されているようです。今回の一部義務化によって、大規模な不適正事案が発覚した際に、システムによる情報検索がやりやすくなるのではないでしょうか。
【参考資料】
環境省ホームページ
廃棄物処理制度専門委員会報告書
平成29年3月10日 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について」
※紙及び電子マニフェストの虚偽記載(登録)の他、排出事業者がマニフェストを交付しない行為、法定事項を記載しない行為、マニフェストに関する勧告に従わない場合に出される命令違反なども罰則が強化されました。
この記事は
メルテック株式会社
大原 が担当しました