改正水質汚濁防止法(未然防止)のポイント解説(2)
~A基準・B基準~
改正水質汚濁防止法(未然防止)が平成が23年6月に公布され、平成24年6月1日から施行されます。地下水汚染の未然防止のための構造と点検・管理に関するマニュアル(案)が公開されました。
第1回目は改正の背景と概要を説明しました。
第2回目は、構造等に関する基準の遵守義務のなかで、新設の施設に適用されるA基準と既存の施設に対して法の施行後3年以降適用されるB基準について説明します。
■構造等に関する基準の遵守義務
有害物質使用特定施設または有害物質貯蔵指定施設の設置者は、構造等に関する基準を遵守が義務付けられます。構造基準を満たさない場合は、都道府県知事から是正命令等がでる場合があります。
■構造等に関する基準と定期点検の方法
構造等に関する基準と定期点検の方法は、有害物質使用特定施設及び有害物質貯蔵指定施設の施設本体、施設の設置場所の床面及び周囲、施設本体に付帯する配管等、施設本体に付帯する排水溝等に対して定められます。これらの構造等基準と点検方法は別個に規定されておらず、構造等に関する基準とそれに応じた定期点検の組み合わせにより規定されます。
(1)施設の設置場所の床面及び周囲
A基準:以下の1から4のいずれにも適合すること、又は5に適合すること。ただし、施設等の設置場所の床の下の構造が、床面からの漏えいを床の下から目視で容易に確認できるものである場合や、床面から離して設置された配管等には下記1から5は適用されない。
- 床面は、コンクリート、タイルその他の不浸透材料による構造とすること。
- 床面は、有害物質を含む水の種類又は性状に応じ、必要な場合は、耐性(耐薬品性)及び不浸透性を有する材質で被覆が施されていること。
- 周囲は、有害物質を含む水の流出を防止することのできる防液堤、側溝(流出防止溝)、ためます(受槽)若しくはステンレス鋼の受け皿(以下、「防液堤等」という。)、又はこれらと同等以上の機能を有するものを設置すること
- 3.の防液堤等は、想定される流出量分の有害物質を含む水の流出を防止できる容量を確保すること。
- 1.~4.と同等以上の効果を有する措置が講じられていること。
B基準:以下のIまたはIIに適合すること
- 以下のイに掲げる要件のいずれかに該当する場合には、ロに掲げる基準の1及び2または1及び3のいずれかの要件に適合すること。
イの要件
- 有害物質使用特定施設等に係る施設本体が床面に接して設置され、施設本体の下部に点検可能な空間がなく、施設本体の接する床面が「1 床面及び周囲の構造」に規定する基準に適合しない場合
- 施設本体が床面及び壁面に接して設置され、施設本体の下部及び壁面に点検可能な空間がなく、施設本体の接する床面及び壁面が「1 床面及び周囲の構造」に規定する基準に適合しない場合
- 施設本体が地下室に設置され、施設本体の下部に点検可能な空間がなく、施設本体の接する床面が「1 床面及び周囲の構造」に規定する基準に適合しない場合
ロの要件
- 施設本体の底面に接する面以外の床面及び周囲について、「1 床面及び周囲の構造」に規定する基準
- 施設本体からの有害物質を含む水の漏えい等を検知するための設備の適切な配置その他の漏えい等を確認できる構造とすること。
- 2.と同等以上の効果を有する措置が講じられていること。
- 施設本体が、有害物質を含む水の漏えいが目視で確認できるよう床面から離して設置され、施設本体の下部の床面が「1 床面及び周囲の構造」に規定する基準に適合しない場合には、施設本体の下部以外の床面及び周囲について、「1 床面及び周囲の構造」に規定する基準に適合すること。
(2)施設本体(地下貯蔵施設本体を除く)
施設本体の構造等に関する基準は、地下構造に関するものを除き、基本的には規定されない。これは、施設本体からの漏えいは考えにくく、かつ床面や周囲の構造において浸透防止が図られる場合には、点検することで漏えい防止が担保できると判断された為である。
(3)施設本体に付帯する配管等(地上設置)
A基準:以下の1または2のいずれかに適合すること
- 次の3点の要件に適合すること
- 有害物質を含む水の漏えいを防止できる強度を有すること。
- 有害物質により容易に劣化するおそれのないものであること。
- 配管等の外面は、原則として腐食を防止する方法により保護すること(ただし、当該配管等が設置される条件の下で腐食するおそれのないものである場合にあっては、この限りではない)。
- 有害物質を含む水の漏えいが目視で容易に確認できるよう床面から離して設置すること。
B基準:以下のIに適合すること
- 原則として有害物質を含む水の漏えいが目視で確認できるように設置してあること。
(4)施設本体に付帯する配管等(地下設置)(トレンチ構造・地下埋設)
A基準:以下の1、2、2及び3、または4のいずれかに適合すること
- 次の3点の要件に適合すること(※トレンチの場合)。
- トレンチ(細長い溝)の中に設置し、配管等からの有害物質を含む水の漏えいを確認できる構造とすること。
- トレンチの底面及び側面は、コンクリート、タイルその他の不浸透材料によること。
- トレンチの底面の表面は、有害物質を含む水の種類又は性状に応じ、必要な場合は、耐性(耐薬品性)及び不浸透性を有する材質で被覆が施されていること。
- 次の3点の要件に適合すること。(※地下に埋設する場合)
- 有害物質を含む水の漏えいを防止できる強度を有すること。
- 有害物質により容易に劣化するおそれのないものであること。
- 配管等の外面は、原則として腐食を防止する方法により保護すること(ただし、当該配管等が設置される条件の下で腐食するおそれのないものである場合にあっては、この限りではない)。
- 配管等からの有害物質を含む水の漏えい等を検知するための設備の適切な配置、有害物質を含む水の流量の変動を計測するための設備の適切な配置その他の漏えい等を確認できる設備を設けること。
- その他の1、2、または2及び3のいずれかと同等以上の効果を有する措置を講ずること。
B基準:以下のIまたはIIもしくはIIIに適合すること
- トレンチ中に設置し、漏えいを確認できる構造としてあること。
- 配管等からの有害物質を含む水の漏えい等を検知するための設備の適切な配置、有害物質を含む水の流量の変動を計測するための適切な設備の配置その他の漏えい等を確認できる設備を設けること。
- 4.その他の2または3と同等以上の効果を有する措置を講ずること。
(5)施設本体に付帯する排水溝等
A基準:以下の1、1及び2、もしくは3に適合すること
- 次の3点の要件に適合すること。
- 有害物質を含む水の地下への浸透を防止できる強度を有すること。
- 有害物質により容易に劣化するおそれのないものであること。
- 排水溝等の表面は、有害物質を含む水の種類又は性状に応じ、必要な場合は、耐性(耐薬品性)及び不浸透性を有する材質で被覆が施されていること。
- 排水溝等からの有害物質を含む水の地下への浸透を検知するための設備の適切な配置、有害物質を含む水の流量の変動を計測するための設備の適切な配置など、地下への浸透を確認できる設備を設けること。
- その他の1または1及び2と同等以上の効果を有する措置を講ずること。
B基準:以下のIまたはIIに適合すること
- 排水溝等からの有害物質を含む水の地下への浸透を検知するための設備の適切な配置、有害物質を含む水の流量の変動を計測するための設備の適切な配置など、地下への浸透を確認できる設備を設けること。
- その他の2と同等以上の効果を有する措置を講ずること
(6)地下貯蔵施設
A基準:以下の1及び2、1~3、もしくは4に適合すること
- 地下貯蔵施設本体は、次の2点に適合することにより、有害物質を含む水の漏えい等を防止できる材質及び構造とすること。
- 貯蔵施設本体は、タンク室内に設置する構造、二重殻構造又はその他有害物質を含む水の漏えい等を防止する措置を講じた構造及び材質とすること。
- 貯蔵施設本体の外面は、原則として腐食を防止する方法により保護すること(ただし、設置される条件の下で腐食するおそれのないものである場合にあっては、この限りではない)。
- 地下貯蔵施設の内部の有害物質を含む水の量を表示する装置を設けることその他の有害物質を含む水の量を確認できる措置を講ずること。
- 地下貯蔵施設からの有害物質を含む水の漏えい等を検知するための設備の適切な配置、有害物質を含む水の流量又は貯蔵量の変動を計測するための設備の適切な配置その他の漏えい等を確認できる設備を設けること。
- その他1及び2、または1から3のいずれかと同等以上の効果を有する措置を講ずること。
B基準:以下のI、II、IIIのいずれかに適合すること
- 次の要件に適合すること。
- 地下貯蔵施設の内部の有害物質を含む水の量を表示する装置を設けることその他の有害物質を含む水の量を確認できる措置を講ずること。
- 地下貯蔵施設からの有害物質を含む水の漏えい等を検知するための設備の適切な配置、有害物質を含む水の流量又は貯蔵量の変動を計測するための設備の適切な配置その他の漏えい等を確認できる設備を設けること。
- 次の要件に適合すること。
- 地下貯蔵施設の内部の有害物質を含む水の量を表示する装置を設けることその他の有害物質を含む水の量を確認できる措置を講ずること。
- 有害物質を含む水の漏えい等を防止することを目的として、貯蔵施設の内部にコーティングを行うこと。
- その他の2または3と同等以上の効果を有する措置を講ずること。
(7)使用の方法
A基準およびB基準(共通):以下の1及び2に適合すること
- 有害物質使用特定施設等に係る作業及び運転は、有害物質が地下に浸透したり、周囲に飛散したり、流出したりしないよう、次の方法で行うこと。
- 有害物質を含む水の受け入れ、移し替え、分配等の作業は、有害物質を含む水が地下に浸透したり、周囲に飛散したり、流出したりしないような方法で行うこと。
- 有害物質を含む水の補給状況や設備の作動状況の確認等、施設の適正な運転を行うこと。
- 有害物質を含む水が漏えいした場合には、直ちに漏えいを防止する措置を講ずるとともに、当該漏えいした有害物質を含む水を回収し、再利用するか又は環境保全上支障のないよう適切に処理すること。
- 有害物質使用特定施設等の使用の方法(上記1)に係るものに限る。)に関する管理要領が明確に定められていること。
■関連リンク
環境省ホームページ
水質汚濁防止法の改正について(平成24年6月1日施行)
平成23年3月11日大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令及び水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令の閣議決定について(お知らせ)
改正水質汚濁防止法に係るQ&A集(ver.1)
地下水汚染の未然防止のための構造と点検・管理に関するマニュアル(案)(第1版)
1/2 本文[PDF 4,275KB]
2/2 参考資料[PDF 5,063KB]
この記事は
DOWAエコシステム ジオテック事業部
加藤 が担当しました