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EU新循環経済行動計画のポイント その7
~持続可能な製品政策枠組み3~

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
持続可能な消費と生産領域
主任研究員
粟生木 千佳(あおき ちか)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)

2016年から2017年にかけて、「EUのCE(Circular Economy)政策」について、お伺いしたIGES(Institute for Global Environmental Strategies)の主任研究員 粟生木 千佳 様に、2020年3月11日に発表されたEU新循環経済行動計画(A new Circular Economy Action Plan For a cleaner and more competitive Europe – The European Green Deal)についてお伺いします。

【その7】持続可能な製品政策枠組み3

2.3 生産プロセスの循環性

今回は、「生産プロセスについて」という事で、よろしくお願いします。

1. 背景

まず、背景からご説明します。

背景としては、

  • 循環性は、気候中立性と長期的な競争力に向けた産業の幅広い転換に不可欠な要素
  • 循環性は、バリューチェーンや生産プロセス全体で大幅な物質的節約を実現し、新たな価値を生み出し、経済的な機会を創出
  • EU産業戦略の目的のシナジー

ということが行動計画では挙げられています。

「長期的競争力に向けた産業転換」というのは、EUが世界の中で競争力を付けるためには産業転換しなければならなく、それには「循環性」が不可欠、という事ですか?

競争力を挙げるためには循環性を向上させないといけないという受動的な動きというよりは、能動的に経済を転換・変革し、循環性の促進を通じて競争力を上げていくという戦略性を感じます。

今回の新CE行動計画とほぼ同時期にEU産業戦略という戦略が発表されています。3つめのグリーンディールにも新CE行動計画と。EUの産業戦略のファクトシートに「Europe needs industry to become greener, more circular and more digital while remaining competitive on the global stage.」とあり、競争力を維持しつつ産業のグリーン化・循環・デジタル化を進めるといっています。

また、欧州委員会(CE)委員長の政策原則というものがあるのですが、そこには「To help drive the change we need, I will put forward my plan for a future-ready economy, our new industrial strategy. We will be a world leader in circular economy and clean technologies. We will work to decarbonise energy-intensive industries.」とあって、未来に向けた経済の計画を進め、サーキュラーエコノミーのリーダーとなるという強い意志が表明されています。

「バリューチェーンを通じた」省物質、となっているのは「生産」だけでなく「消費」だけでなく「使用」だけでなく、全体を通して省物質しないといけないという事ですか?

はい。最終的に省資源になるような取組を、バリューチェーンのそれぞれの段階で検討すること、バリューチェーンを通じて、例えば、循環を想定したデザイン、資源を使わないようなビジネスモデルの設計、産業共生を含めた生産工程に見直し、再生資源を扱うプラットフォームの構築などを実施する)ということかと思います。

そして、省物質であることを、付加価値にして、経済機会を創出しようとしているというのは、まさに、「環境と経済の好循環」ですね(笑)

そうですね。それを意図的に作り出そうという観点です。気候変動に対する動きと同様のものだと思います。

「EU産業戦略の目的のシナジー」というのは、全く分からないので(汗)教えてください。というか、産業の戦略と融合されているという事だとしたら、すごいですね。

「産業戦略に掲げられた目標との相乗効果」という意味です。

シナジー・相乗効果ですが、EUの産業戦略では、国際競争力の強化とともに、2050年までに欧州での気候中立を達成すること、欧州のデジタルな未来を形成することが優先事項となっています。

したがって、循環性の向上に当たり、気候変動すなわち化石資源の利用や炭素排出の削減、サーキュラーエコノミーの実現にデジタル技術も積極的に活用するということが想定されていると理解しています。

最近話題のLOOPというビジネス がありますが、これは、ステンレスやビンなどの再使用可能な容器をつかい、消費者が中身を使い終わると容器を返却し、新しく容器に中身が入った商品を配送してくれるサービスです。ちなみに、返却した容器は洗浄後再使用されます。また、消費者が、購入していた商品をもう使わないということであれば、容器を返却してその分の容器デポジット料金が戻ってくる仕組みです。

私自身、醤油屋さんが使い終わった醤油ビンを引き取って、新しい醤油ビンを持ってきてくれたことをかろうじて覚えているのですが、このような容器の入れ替えサービスを、ネットやアプリを使って現代によみがえらせたビジネスといえると思います。また、デジタルがあるからこそ、循環を容易にすること、また循環コスト削減の可能性も出てきたということが言えるかと思います。

2. 方法と施策

方針と施策について以下について、提示されています。

  • 産業排出指令の見直しにおいて、産業プロセスにおける循環性促進
  • 産業界主導による報告・認証システムの開発による産業共生の促進
  • バイオ経済行動計画を通じた持続可能・循環バイオベースセクター支援
  • 資源のトラック・トレース・マッピングのためのデジタル技術促進
  • EU環境技術検証システムへの登録を通じたグリーン技術の採用
  • 新中小企業戦略を通じた循環産業連携:企業欧州ネットワーク、欧州資源効率性ナレッジセンター

産業排出指令の見直しとありますが、「排出」というのは「廃棄物」についてという事ですか?

産業から排出される汚染物は様々にありますが、この指令の目的をみると廃棄物のみならず、大気や水、土地の汚染の原因となる物質の排出、エネルギーの効率的な利用も含まれるようです。

The Industrial Emissions Directive - Environment - European Commission
EUR-Lex - ev0027 - EN - EUR-Lex

産業プロセスにおける循環性の促進というのは、環境デザインみたいな感じですか?

環境配慮型設計も入ると思うのですが、ここは、生産プロセスのセクションなので、生産工程の分野が中心かと思います。
なお、ここでは、産業排出指令の見直しにおいて、利用可能な最善技術参照文書(Best Available Techniques(BAT)reference documents)に、循環経済の取組を組み入れるということが言及されています。

なぜBATかというと、この産業排出指令では、排出限界値を含む許可条件は、最良利用技術(BAT)に基づいていなければならないこと、BATは工場の操業許可の条件設定の際の基準となることが定められているためです。BATの参照文書に循環経済の取組が組み入れられることを通じて、工場における循環を通じた廃棄物を含む汚染物などの排出削減を促進するという意図と考えられます。

したがって、次のポイントにもあるような、生産工程で発生した副産物の原材料活用(産業共生)といったこと等が中心になろうかと思います。

報告認証システムというのは、以前出てきた電子透かしやデジタルパスポートみたいな事ですか?

ちょっとこれ以上の詳細が書いておらず、確固としたことは申し上げられないのですが。電子透かしやデジタルパスポートは製品情報に関わる仕組みですが、この場合は生産プロセスに関する議論なので、少し異なると思います。
また、産業共生を促進するためともかかれているので、産業共生で、どの程度副産物を活用したかを報告するためのシステムの整備や適切な産業共生が行われているかどうかを認証する仕組みを構築するということではないかと想定されます。2022年に立ち上げという予定が組まれています。

EUに「バイオ経済行動計画」というものがあるのですね。
日本で調べると、「バイオマス活用推進基本計画(農林省)」がありました。
タイトルは似ていますが、内容は違いますよね?

そうですね。類似の内容だとは思いますが、2つを見比べていただくとわかるかと思いますが、重点が置かれている分野が異なる印象を受けます。

EUの2018年のバイオ経済行動計画は、どちらかといえば、藻や一部農産物、食品廃棄物などから、化粧品、プラスチック、テキスタイル、薬品、各種油といった加工製品をつくり経済競争力を向上させるという点が強調されていると思います。
一方、日本の基本計画は、石油資源からバイオマス資源への代替を通じた製品製造(バイオマス・リファイナリー)は言及されているのですが、どちらかといえば、廃棄物や未利用資源のバイオマスのエネルギー・燃料としての活用、それを通じた炭素排出削減等が議論の中心となっています。

話をEUに戻しまして、枯渇性の化石資源から、持続可能な管理が行われる限りは非枯渇性のバイオマス資源に製品の原材料を代替すること、そのバイオマス資源の活用においても、循環資源を使う、ないしは、農業・林業残渣・未利用資源などを積極的に活用することが念頭に置かれているといえます。

私がよく活用させていただく企業事例があるのですが、フィンランド化学産業協会に示されている事例で、木材豊富なフィンランドの紙・パルプ産業の副産物から、フィンランドの歯磨き粉で有名なキシリトールを製造するというものがあります。これは、ちなみに、別の国でとうもろこしからキシリトールを製造する場合と比較して、90%カーボンフットプリントが小さい値を示すということです。サーキュラーエコノミーと気候変動が両立する事例としてとても気に入っております。

CircularEconomy_caset_June_2019

余談ですが、日本にもきっとこういった事例がたくさんあると思います。是非、企業の方々には英語でどんどん発信していっていただきたいと思っています。日本の取組みや事業モデル、製品は、十分アピールになると思います。

「資源のトラック・トレース・マッピング」のためのデジタル技術というのは、今度こそ(笑)電子透かしやデジタルパスポートみたいな事ですか?

含まれるかもしれません。

どういった資源がいつどこにあるのか、ということが循環を促すうえで重要になるかと思います。ですので、採掘された製品がどのような製品に使われ、その製品が使用後どこに収集され、再生資源として加工されているのかということがわかれば、循環産業側も循環資源を収集しやすくなるでしょうし、製造側も希望する循環資源の調達先を容易に見つけることが可能になると思います。循環という事業自体のコストが下がると思うのですがいかがでしょうか。なお、それに循環資源の質の情報(含有物質など)が加わることが理想ですが。

いずれにせよ、デジタル技術があることで、そういったトレースの実現可能性が高まってきており、事業化が期待されているのだと思います。ここで、先ほどの産業戦略の柱であるデジタルとサーキュラーエコノミーがつながることになります。

ちなみに、BASFという化学メーカーがカナダでパイロット事業として実施しているreciChainというプロジェクトがあるのですが、それがイメージとして近いかなと思っております。

reciChain | Reducing Plastic Waste

次の、EU環境技術検証システムというのも似た感じに思えますが、環境技術検証システムは、日本でいうNEDOでの技術開発みたいなものですか?

EUのページを確認したところ、日本では、環境省 環境技術実証事業と同様の取組とのことです。

環境省の事業では「信頼できる第三者機関(実証機関)が、環境技術を実際の現場等で実証し、その結果を広く公表することと」されています。なお、Verificationを私は検証と訳したのですが、ここでは実証とされています。実証とは「環境技術の環境保全効果等を試験等に基づき客観的なデータとして示すこと。(中略)一定の判断基準を設けて、この基準に対する適合性を判定する「認証」とは異なる。」と定義されていました。

ホライズン2020などで開発されている技術が環境にどれくらい優しいかを検証して、ラベルとつなげるみたいなものですか?それとも日本のトップランナー方式みたいなものですか?

トップランナー的な観点は先のBATの方が近いかもしれません。

環境省の同事業の目的を見ると、「既に実用化された先進的環境技術の環境保全効果、副次的な環境影響、その他環境の観点から重要な性能(「環境保全効果等」)を第三者が客観的に実証することにより、環境技術の利用者による技術の購入、導入等の際に、環境保全効果等を容易に比較・検討し、適正な選択を可能にし、もって環境技術の普及を促進し、環境保全に寄与し、中小企業の育成も含めた環境産業の発展に資することを目的とした事業です。」とありました。

ただ、EU循環経済行動計画では、さらにEU環境技術検証スキームをEU認証マークとして登録するとあるので、その技術の評価と認証も実施し、認証されたグリーンな技術を普及することが念頭にあるようです。

中小企業戦略を通じた循環産業連携というのは、イノベーター(スタートアップ企業)の応援みたいな感じですか? EUの企業ネットワークを作って、そこで資源効率性についてのナレッジセンターを作ることで、ボトムアップするみたいな事ですか?

すみません。もう少し丁寧に訳すべきでしたが、該当の箇所には、「新しい中小企業戦略では、中小企業間の循環型産業協力を促進するために、研修、欧州企業ネットワークの下でのクラスター協力に関する助言、欧州資源効率知識センターを通じた知識移転などを行う。」とあります。なお、すでに欧州資源効率性ナレッジセンターは設置されています。
したがって、そのセンターも活用しつつ、企業間の連携を促し、かつ各種研修や助言なども行うということと考えられます。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


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