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EU新循環経済行動計画のポイント その6
~持続可能な製品政策枠組み2~

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
持続可能な消費と生産領域
主任研究員
粟生木 千佳(あおき ちか)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)

2016年から2017年にかけて、「EUのCE(Circular Economy)政策」について、お伺いしたIGES(Institute for Global Environmental Strategies)の主任研究員 粟生木 千佳 様に、2020年3月11日に発表されたEU新循環経済行動計画(A new Circular Economy Action Plan For a cleaner and more competitive Europe – The European Green Deal)についてお伺いします。

【その6】持続可能な製品政策枠組み2

2.2 消費者と公共調達のエンパワーメント

まず、背景からお伺いします。
エンパワーメントとありますが、「消費者には力がある」という事でしょうか。

そうですね。エンパワー(empower)という単語には、力をあたえる、権限を与えるという意味があります。ここでは、消費者が、適した判断を行えるよう十分な情報を提供するという意図が大きいと思います。また、消費者の判断は、企業の取組に大きな影響を与えることができます。ですので、「消費者強化が持続可能な製品政策枠組みの重要な要素」としているのかと思います。

また、公共部門での購入がEUのGDPの14%を占める非常に大きな規模の購入であるといえます。ですので、公共部門で環境に配慮した製品を積極的に購入することが、企業にとって環境に配慮した製品を製造するというインセンティブになりうると思います。

消費者の力をもっと強めることが、製品政策にとっての重要要素になるというのは、どういう事ですか?

はい、少し繰り返しになりますが、消費者が、環境に配慮した製品を選択することがふえることによって、企業には環境に配慮した製品を製造するというインセンティブが働くことになります。したがって、EUとしても環境に配慮したデザインの製品を促進するということにおいて、消費者がそのような製品を選択できるような環境を整えることは重要だと思います。

所で、製品枠組みって何でしたっけ?(笑)

行動計画のセクション2のタイトルがA SUSTAINABLE PRODUCT POLICY FRAMEWORKといって「持続可能な製品枠組み」となっています。このセクション中では、前回ご説明したエコデザイン指令の改正などに関わる「持続可能な製品政策法制度イニシアティブ」の実施、今回ご説明を始めた「消費者エンパワーメント」、また、これに加えて、「生産プロセスの循環性の拡大」が示されています。「持続可能な製品枠組み」とは、これらの3つの要素を組み合わせた施策実施のための枠組みという解釈ができるのではないかと思います。

持続可能な製品政策法制度イニシアティブ」と「消費者エンパワーメント」については、具体的な内容が徐々に固まりつつあり、両方パブリックコンサルテーションが行われている段階のようです。

方法と施策について

方法として複数挙げられていますが、修理をして長く使う、消費者が分かるようにラベルを整備するという事でしょうか。

「消費者法の改正」として、“消費者に、製品ライフスパンや修理サービス・部品・修理マニュアルに関する情報を販売時に提供する”とされています。

日本で「消費者」とつく法律は、消費者基本法、消費者契約法、消費者安全法等がありますが、ここの「消費者法」とはどういうものですか?

明確な記載はなく、消費者関連法の専門家でないので、明確なお答えはできないのですが、本行動計画のAnnexに、2020年中に「Legislative proposal empowering consumers in the green transition」とあります。グリーン移行における消費者エンパワーメントのための法制度提案を行うということです。

さらに、これの詳細をCE行動計画やEU議会のサイトで確認すると、スライドと重複しますが、

  • 消費者が製品の寿命、修理サービスの利用可能性、スペアパーツ、修理マニュアルなど、製品の販売時点で信頼できる関連情報を確実に受け取ることができるようにするためのEU消費者法の改正を提案
  • 新たな「修理する権利」の確立に取り組み、スペアパーツの利用可能性や修理へのアクセス、ICTや電子機器の場合はアップグレードサービスへのアクセスなど、消費者のための新たな権利を検討
  • グリーン・ウォッシングや早期陳腐化に対する消費者保護のさらなる強化の可能性を探り、持続可能性のラベル、ロゴ、情報ツールの最低要件を設定
  • 2019年の物品販売指令の見直しに関連して、保証の変更の可能性を探る。
  • EUエコラベルの基準に耐久性、リサイクル性、リサイクル含有量をより体系的に盛り込み、製品と組織の環境フットプリントの手法をEUエコラベルに統合する可能性を探る。

とあります。消費者への情報の提供という点が最も重視されているということかと思います。

方針と施策に時期尚早の陳腐化とありますが、これは次々に新製品が出てきて、次々に違う製品への購買欲求を高めるという事ですか?
2020年5月にGUCCIがファッションショーを5回から2回に減らすと発表しました。他にもファッションショーを見直す方針を打ち出したブランドもあります。CE行動計画では、OSの更新で古いスマートフォンやパソコンが使えなくなるというような事を指しているのでしょうか?

時期尚早の陳腐化というのは、英語でpremature obsolescenceとされます。別の訳では早期陳腐化とされていることもあります。また、前回のCE行動計画では、planned obsolescence(計画的陳腐化)という言葉が使われていました。

私も、初めてこの用語を見た際に確認しましたが、購買欲求の面のみならず、ご指摘の製品中のシステムの更新などで使用に不都合が生じることも含まれると思います。
Premature(未成熟な)という用語が今回の行動計画では使われていますが、製品が完全に使用不可の状態になったわけでもないにもかかわらず、使用が継続できない状況が生じるといったこと全般を指すものかと思います。

修理や保証期間、アップグレードサービスへのアクセスなどについて言及されていることも、陳腐化への対応の観点も含まれていると思います。

消費者への情報提供は、ラベルという手法も使うのですね。

そうですね、持続可能性ラベル・ロゴや情報ツールに対して、最低限の要件を設定する。関連して、企業が製品および組織の環境フットプリント(PEF/OEF)法を用いて環境主張を立証することを提案する。また、これらをEUエコラベルに組み込むことをテストし、耐久性、リサイクル性、リサイクル率をより体系的にEUエコラベルの基準に盛り込むとありますね。

ラベル等消費者へ情報を伝達するためのツールに循環経済の促進につながる情報を盛り込んでいくということかと思います。また、陳腐化のみならず、グリーンウォッシュからも消費者を保護すると計画内にありますので、適切な正しい情報を記載するための要件を整備していくということかと思います。計画のスケジュールをみると、2020年中にグリーンクレイム(green claimグリーン主張)に関する法提案を行うとあります。

PEF/OEFとは何ですか?

製品エコロジカルフットプリントおよび組織フットプリント(Product Environmental Footprint(PEF) and Organisation Environmental Footprint(OEF))です。製品や組織のライフサイクル全体に関する環境パフォーマンスに関する指標の事です。

方法論の開発と検証が長く行われてきていますが、この指標を製品の環境情報を示すものとして、企業間、企業消費者間で提供できるようにしようという検討がなされているようです。英語では、substantiating environmental claims through PEF/OEFとして、PEF/OEFを通じた環境主張の立証という表現が使われています。

そして、長く使うためにも修理できる環境を整える、という事ですか?

そうです。
以前にも、2019年に採択された改正エコデザイン指令実施規則において、冷蔵庫、食洗機等について、「資源効率性要件resource efficiency requirements」として、スペアパーツを確保する期間、修理業者からスペアパーツ提供の依頼があった場合の提供に要する期間、修理に寄与する製品情報(製品の分解図、配線図、接続図等)の登録修理業者への提供などが定められたことをお話ししました。

今回の行動計画にも、新たな「修理する権利」の確立に向けて、例えばスペアパーツの入手や修理へのアクセス、ICTや電子機器の場合はサービスのアップグレードなど、消費者のための新たな水平的な物質的権利(horizontal material rights)を検討する予定とされています。より消費者の観点に立った取り組みがされるということかと思います。
また、先の陳腐化の議論とも関連します。なお、新「修理権」を新設する立法・非立法措置を2021年に行うと予定にはあります。

また、修理の実施に重要な保証期間についても、前回の計画に引き続き言及されています。消費者保護・物品販売の契約に関連する指令(Directive 2019/771)の見直しあたり、循環型の製品を提供する上で保証が果たす役割について変更の可能性を模索するということです。

グリーン公共調達についても施策にあがっています。

公共部門の購買力がEUのGDPの14%を占めますので、その購買力をCE推進に活かしていく、という事だと思います。行動計画では、以下の2つがGPPを促進する主な施策として挙げられています。

まず、グリーン公共調達(GPP)の最低義務基準と目標をセクター別の法律に提案し、グリーン公共調達(GPP)の導入状況を監視するための義務的な報告を段階的に実施、これは2021年に実施と予定されています。

さらに、ガイダンス、研修、優良事例の普及を通じた能力開発の支援を継続するとともに、GPPの実施にコミットしているバイヤー間の交流を促進する「気候と環境のための公共調達者(公的バイヤー)」イニシアティブへの参加を公的バイヤーに奨励するとあり、ステイクホルダー間の連携促進も念頭にあるようです。


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