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EU新循環経済行動計画のポイント その2
~廃棄物削減と価値創出~

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
持続可能な消費と生産領域
主任研究員
粟生木 千佳(あおき ちか)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)

2016年から2017年にかけて、「EUのCE(Circular Economy)政策」について、お伺いしたIGES(Institute for Global Environmental Strategies)の主任研究員 粟生木 千佳 様に、2020年3月11日に発表されたEU新循環経済行動計画(A new Circular Economy Action Plan For a cleaner and more competitive Europe – The European Green Deal)についてお伺いします。

EU新循環経済行動計画(以下、新CE行動計画)の概要を整理して、主なポイントをまとめた“Fact Sheet”を2020年3月26日に公表しましたので、その内容を引用しながら、説明していきたいと思います。

IGESホームぺージ
新循環経済行動計画 -よりクリーンかつ競争力の高い欧州へ 概説

【その2】廃棄物削減と価値創出

今回から詳細にご説明頂けるという事で、どこから教えて頂こうかと思ったのですが、どうしても、廃棄物に関して一番興味があるのでのチャプターからお伺いしたいと思います。

わかりました(笑)そうですよね。
廃棄物に関しては、チャプター4にまとめられています。

では、「4.1 廃棄物発生抑制と循環を支援する廃棄物政策の拡張」から説明します。

背景として、

  • EUの廃棄物発生量は年間25億トンに達していて、減少していない
  • 廃棄物法制が、循環経済とデジタル時代へ適合する必要性がある
  • 加盟国の半数は、2020年までに一般廃棄物の50%をリサイクルするという目標を達成できない可能性がある

ということが挙げられています。


業種別廃棄物排出量(EU)

(出所)Eurostat Waste Database Waste streams(env_wasst)

こちらは2016年までの産業廃棄物と都市廃棄物を合わせた業種別廃棄物発生量のデータですが、家庭からの廃棄物量も含め確かに廃棄物量は減少傾向にはありません。鉱業および採石業、建設、製造業、家庭、廃棄物処理からの排出が多いようです。


国別の都市ごみ処理方法(EU)

(出所)Eurostat-Waste-related indicators

こちらは都市廃棄物の処理方法別の2017年のデータですが、国ごとの処理方法では、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、オーストリア、スロベニアなどはコンポスト化とリサイクルで50%以上に達しています。もう少しで50%という国も多いですが、東欧の国は、コンポストとリサイクルの割合が低い国も多く見られます。依然として埋立が主体の国も少なくないといえます。

こう見ると、ヨーロッパはコンポスト処理が普及しているのですね。

そうですね。埋立指令(1999/31/EC)において、生分解性のある都市廃棄物の削減目標が定められていますし、有機性の廃棄物の分別・リサイクル強化は、先の行動計画でも明記されていました。その後、改正された廃棄物改正指令においても、有機性廃棄物(bio-waste)の分別を進めることになっています。

リサイクルについては、「これまでは海外にリサイクル目的で輸出していた場合は全量リサイクルカウントされていたものが、中国の禁輸措置などによりリサイクル数量が減る可能性がある」と、イギリスの研究機関が公表していました。EUとしても、そのような恐れはありますか?

あるのではないかと思います。ただ、それを逆手に取るといいますか、今回の行動計画内の廃棄物輸出対策のチャプターにおいても、廃棄物輸出に伴う環境負荷の影響や各国の禁輸措置を念頭に置きつつ域内リサイクルを積極的に進める方針であることが明記されています。さらには「EUリサイクル」を再生リサイクル材市場における一つの付加価値として位置づけようという意図も示されています。

このように、資源効率性の向上や循環経済を通じて、域内に産業を作ることによって雇用・産業振興とする姿勢は、2011年に発表された文書「資源効率的な欧州」から変わっていません。

リサイクルはコストがかかる、という所で止まらず、コストがかかるという事は、域内に産業を作り、産業振興につなげようとするのは、視座が高いと思います。

そうですね。EUでは、域内でのリサイクル材の需要を政策によって創出し、循環産業を付加価値の高い産業にしようという発想だと思います。失業率が日本と比べて高く、域内での雇用創出という命題もあるので、戦略的に政策の方向性を決めていると感じます。あと、もちろんリサイクルのみならず、修理やメンテナンス、アップグレード、再製造といった分野の振興も念頭に置かれていると思います。

コストと質の観点から日本国内ではリサイクル材の活用は、最近プラスチックの議論もあり広まってきてはいるものの、まだ限定的な印象を持っているのですが、現場におられるDOWAさんの最近の日本の2次資源市場の印象はいかがでしょうか。

同じ廃プラスチックといっても、製造工程から出る量がまとまっていて汚れが付いていない、ロットアウト品や端材と、市中から回収されたプラスチックと、大きくは2種類に層別できます。

前者は、品質を担保しやすいので輸出もされつつ国内でも再利用されているようですが、後者は洗浄したとしてもプラスチック原料としてグレードが落ちてしまいます。そうしたグレードの低い再生材が使われる安い製品が国内では殆ど作られていないので、国内で再生原料の需要がないからだと思いますが再生資源市場としては、限定的だと思います。

なるほど。今後さらにリサイクル率や資源効率性を向上させたいといった場合は、グレードの低いものの需要創出やグレードを改善させるような方法がより今後もとめられているといえますね。

行動計画の議論に戻りますが、方針と施策として挙げられているのは、以下の通りです。

  1. 持続可能な製品政策と関連法の展開
  2. バッテリー・包装・自動車・電子機器中の有害物などの廃棄物法制度強化による発生防止、リサイクル、安全性向上など
  3. 特定の廃棄物に対する削減目標の設定
  4. 拡大生産者責任の要件の実施強化
    リサイクルインセンティブや情報共有の促進
  5. 2030年までにリサイクルされない一般廃棄物を半減
  6. 廃棄物の分別方法、収集地点の配置など調和のとれた収集システム
  7. 消費者関与のため、ビンの色、廃棄物の種別表示の共通化や経済的手法など
  8. リサイクル材、特に食品に接触する材料の品質保証と標準化

5)の「2030年までにリサイクルされない一般廃棄物を半減」というのは、2020年までに一般廃棄物の50%をリサイクルするという目標を達成できない可能性があるので、目標を緩めたという事でしょうか。

そうですね。まず、2018年改正でも、2020年にリサイクル率50%という目標は、条文上も維持されていますし、さらに2025年55%、2030年60%、2035年65%ということになりましたので(注:正確にはthe preparing for re-use and the recycling of municipal wasteの達成率)、緩めたというわけではないかと思います。細かく言うと2020年50%の旧目標と2025年以降の目標の書きぶりが少し異なるのですが、長くなるので割愛します。

次に「リサイクルされない」という言葉ですが、本文中の英語だとnon-recycled(residual)とかかれています。つまり、この目標は中間処理などを経て残る廃棄物を半減しようということと考えられ、廃棄物発生量そのものの削減や世に流通している製品がより循環しやすい製品となることが前提といえます。

本行動計画の最初のトピックが持続可能な製品デザインであるように、単にリサイクル目標を緩めたのではなく、再生リサイクル材の積極的な導入や再使用や修理も含め、製造業(ライフサイクルの上流側)に対する循環を前提とした製品設計の促進を念頭に置いた目標ではないかと私としては見ています。本文にも、拡大生産者責任スキームの実施拡大やインセンティブ付けなどが、この目標達成に貢献するとあります。

なお、EU加盟国の約半数が2020年リサイクル目標を達成できないという分析は、2018年に発表された下記の報告が基になっています。

REPORT FROM THE COMMISSION TO THE EUROPEAN PARLIAMENT, THE COUNCIL, THE EUROPEAN ECONOMIC AND SOCIAL COMMITTEE AND THE COMMITTEE OF THE REGIONS

これを見ると、未達成のリスクが高いとしてあげられている国が「ブルガリア、クロアチア、キプロス、エストニア、フィンランド、ギリシャ、ハンガリー、ラトビア、マルタ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スペイン」なんですが、これは、先のデータの埋立・焼却の割合が大きい国とおおよそ合致します。つまり、各国の廃棄物処理(ライフサイクルの下流側)の制度や体制が循環経済の観点からは整っていない国が存在するということです。こういった国々に対する収集分別体制の支援も当然ながらリサイクルされずに残る廃棄物の削減には必要なので、並行して行うということになります。

8)の「リサイクル材、特に食品に接触する材料の品質保証と標準化」というのは、プラスチックのEnd of Waste(廃棄物から再生原料への境界線)の事でしょうか?それとも、再生原料を使用した製品の品質保証を整えるという位置づけでしょうか。

後者かと思います。また、再生するリサイクルプロセスの整備という面もあるかもしれません。とくに食品に接触する材料は、含有する化学物質についての懸念がこれまでも指摘されているので、懸念される化学物質が食品容器包装といった製品に含まれないようなルールを整備するという考え方かと思います。チャプター3のパッケージング(包装)のセクションでもPET以外の食品に接するプラスチックに安全なリサイクルに関するルールを構築するとあります。

背景に挙げられていた「廃棄物法制が、循環経済とデジタル時代へ適合する必要性がある」というのは、「バッテリー・包装・自動車・電子機器中の有害物などの廃棄物法制度強化による発生防止、リサイクル、安全性向上など」で対応するのでしょうか?

まず、循環経済への適合の観点ですが、廃棄物法制度の強化のみならず持続可能な製品政策の強化といった面があると思います。先ほどの拡大生産者責任スキームにおける環境調節(Eco-modulation)を通じた環境配慮設計やリサイクルシステムの強化や、エコデザイン指令の改正などを通じた物質効率性(リサイクル可能性、再使用可能性、耐久性、再使用可能性、アップグレード可能性等)の向上に向けた施策など循環経済への適合が進むと考えられます。

主要製品バリューチェーンのチャプターに書かれていますが電子機器については「Circular electronics initiative」を2021年に立ち上げるとあります。特にICT機器など電子機器の耐久性、メンテナンス、再使用、リサイクル、修理する権利、早期陳腐化の回避などを念頭に置いているようです。

また、デジタル化への適合ですが、行動計画内においては、持続可能な製品政策のチャプターで書かれているように、製品情報のデジタル化の可能性(タグや電子透かしなどを使用)を模索するとあります。また、EUでは製品中の化学物質の管理を重要視しており、再生リサイクル材の安全性を確保する観点からREACH等との連携をはじめとした製品情報管理の電子化が進められる方向と考えています。

行動計画本文にも持続可能な製品政策のチャプターに、バリューチェーンと製品情報に関するデータに関する共通のEuropean Dataspace for Smart Circular Applicationsを構築するとあります。2020年2月に公表された「データに関する欧州戦略」に少し詳細が書いてあるのですが、サプライチェーンに沿った循環的な価値創造を可能にするための関連データを利用可能にするとあります。

加えて、同戦略には、製品起源、耐久性、構成、再利用、修理、解体、使用後処理に関する情報を載せたデジタル「製品パスポート」の開発や持続可能な製品政策における製品パスポート採用(2021年)資源マッピングと廃棄物貿易追跡(2021年)なども検討中とありました。部品などの再使用や修理、リサイクル容易性向上の観点からも循環経済に資する製品情報を電子的に把握できるとよいということかと思います。

COMMUNICATION FROM THE COMMISSION TO THE EUROPEAN PARLIAMENT, THE COUNCIL, THE EUROPEAN ECONOMIC AND SOCIAL COMMITTEE AND THE COMMITTEE OF THE REGIONS

他にも、今回の行動計画ではあまり触れられていませんでしたが、製品のサービス化(PaaS)、カーシェアリングなどのモビリティーのサービス化(MaaS)では、顧客や販売するサービスの管理・提供にデジタル化が不可欠ということが挙げられると思います。

6)の「廃棄物の分別方法、収集地点の配置など調和のとれた収集システム」は、日本では市町村の特色に合わせて設計するという考え方が主流で、国の大方針として挙げられることは少ないのですが、処理費と運搬費を比べると運搬費の占める割合は高いので、調和のとれたシステムを考える事は大事だと思います。

私も非常に重要だと考えています。収集分別体制をある程度調和するということは、中間処理をへて回収される廃棄物の内容と質の調和につながるのではと考えているためです。下流側の手段が統一されることにより、内容と質がある程度保たれたものが全国で収集できるようになると、製品にリサイクル材を活用するためのコストを下げ、リサイクル材活用に向けたモチベーション、イノベーションの向上にもつながるのではないかと期待しています。
また、製造側からの分別情報の提供もしやすくなり、消費者にとっての分別負担も減るのではないかと思っています。自治体ごとに分別ルールが異なっていることで、消費者の分別意欲減退や混乱を生んでいる可能性もあろうかと。

欧州が統一的なシステムをとっていくことが、国際標準化にもつながることも少なくないので、注視していく必要があります。
日本には様々な優れたリサイクル技術が、各自治体・企業で様々に採用されていますが、これらの優良事例を集めつつ、一定程度、収斂していってもいいのかもしれません。

ちょっと余談になりますが、運搬コストの課題はありますが、戦略的な広域化といった量の確保といった観点からのシステム転換も重要でないかと思います。ただ、そのためには、一廃産廃の区分や自区内処理の原則等、抜本的な転換が必要になるものが出てくるでしょう。

私たちが、この資源循環についてどのような社会を求めるかにもよりますが、これまでの制度や原則が適用された背景を顧みつつ「循環を想定した適正処理」に発想を拡張させた新しい社会システムの設計も検討する価値はあろうかと思います。

3)「特定の廃棄物に対する削減目標の設定」は、具体的にどんな廃棄物が対象になっているのですか?

本行動計画では、まだ明確にはなっていません。おそらく、行動計画のチャプター3「主要製品バリューチェーン」に指定されている製品群のいずれかではないかと思います。

1)「持続可能な製品政策と関連法の展開」は、どの関連法に展開されるのか、非常に興味があるのですが、2)の電子機器関連の修理可能性とかリサイクル材の採用義務化などなのでしょうか?

持続可能な製品政策の方針を、チャプター3に書かれている個別の製品が対象となる法制度に落とし込んでいくということかと思います。それぞれの製品によって実施される施策は異なります。義務化はちょっと書き方が乱暴だったかもしれませんが、リサイクル材に関するルール・要件などに関する記述が、バッテリーやプラスチックでは見られます。また、使い捨てプラスチック規制では、すでにリサイクル材の活用目標がペットボトルやプラスチックボトル掲げられています。

4)「拡大生産者責任の要件の実施強化 ~リサイクルインセンティブや情報共有の促進~」は、拡大生産者責任の仕組みを使って、リサイクルを促進するという事でしょうか。日本の家電リサイクル法の様に、リサイクル目標を設定してとか。既に、欧州ではリサイクル法を通じたリサイクル促進がなされていると思いますが、さらに強化する、という事なのでしょうか。

強化したかどうかは、これまでの各国の拡大生産者責任スキームの実施状況によるかもしれません。
ただ、環境配慮設計、特にリサイクル可能性などの物質効率性の向上をより製造者に促すスキームだということが明確になったかと思います。

というのも、前回の行動計画を踏まえ、欧州議会の議論を経て、廃棄物指令(2008/98/EC)が2018年5月に改正されました。この際に、拡大生産者責任の定義やEU加盟国が拡大生産者責任スキームを実施する際の最低限の要件(General minimum requirements for extended producer responsibility schemes)が定められ、EU全体でのEPRスキームの共通基盤ができたといえます。

DIRECTIVE (EU) 2018/851 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 30 May 2018amending Directive 2008/98/EC on waste

この中で、EPRスキームの適用を通じて、リサイクル材の活用、リサイクル可能性、耐久性が向上されることが期待されています。各国は、容器包装リサイクル・廃自動車・廃バッテリー・WEEE指令でしめされているように廃棄物管理目標を設定することが定められています。廃棄物目標の設定は、上記4品目以外にもEPRスキームが関連する製品群にも適用されます。
また、製品製造者が支払うべき金銭的負担を、製品の廃棄後にかかる分別収集運搬コストや上記目標の達成に必要な処理に必要なコストなどを考慮して設定することとなっています(注:この点については、廃自動車・廃バッテリー・WEEEは適用外、各指令内での対応)

企業が共同でEPRスキームの要求に対応する場合は、個別の製品の修理可能性や耐久性、リサイクル可能性に応じて、負担を調整することが推奨されています。つまり、製造者が循環を想定した製品を製造することによって、拡大生産者責任スキームでの金銭的負担を減らすことができる環境調節(Eco-modulation)が適用される形となっています。

リサイクルのインセンティブは、7)の「消費者関与のため、ビンの色、廃棄物の種別表示の共通化や経済的手法など」でも手法として挙げられていますね。

そうですね、ビンやペットボトルの色などの共通化、廃棄物の種別表示の共通化は、日本でも業界団体の自主設計ガイドラインや資源有効利用促進法などを通じて実施されてきたところではありますが、EUでも実施が検討されるということですね。

こういったことの標準化や収集廃棄物の質を保証する質管理システムも念頭にあるようです。日本でも同じ製品群でも、容器の素材がバラバラで分別の判断が難しいことがあるので、消費者目線での資源有効利用促進法の対象の拡充や強化などを検討し始める時期なのかもしれません。

経済的手法ですが、消費者対象のものであれば、デポジット制度などは実施されていますが、行動計画には書いていませんが付加価値税の調整などもこれまでにも議論されていたと思います。


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