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その道の人に聞く

EUのCE(Circular Economy)政策 その1
〜CE(Circular Economy)とは〜

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
持続可能な消費と生産領域
主任研究員
粟生木 千佳(あおき ちか)様

公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)

今回は2015年に欧州で発表され、海外で注目されている資源効率(Resource Efficiency)や循環経済(Circular economy:CE)に関する研究をされているIGES(Institute for Global Environmental Strategies)の主任研究員 粟生木 千佳(あおき ちか)様に「EUのCE(Circular Economy)政策」について、お伺いしました。

【その1】CE(Circular Economy)とは

この度はお忙しい中、お時間をいただきまして、ありがとうございます。

エコジャーナルはよく拝見しています。
関心の高いテーマの重要なポイントが、よくまとまっているので非常に勉強になります。

ありがとうございます。エコジャーナルは、企業の環境部門の方に情報提供を目的としていまして、実用的な話を取り上げるようにしています。環境分野を専門に研究されている方にも、役に立つと言っていただけると、すごく嬉しいです。今後も、頑張ります。

循環経済(以下CE)は、EUの政策ですが、「環境」だけに限らず、製造業に関する政策が含まれていることもあり、日本の企業にも関係があるのではないかと注目されています。
早速ですが、CEの概要を教えてください。

はい。
循環経済はCircular Economyの頭文字を取ってCEと呼ばれたりします。その推進のための政策を、EUの循環経済政策パッケージと呼んだりしますが、正式な政策名は、Closing the loop-An EU action plan for the Circular Economyといって、EUの循環経済への移行に向けたEU行動計画のことを指します。

■欧州が目指す将来像とCE

CE導入によって欧州が目指す社会には、その特徴として、以下の4点があげられます。

  1. 製品と資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、
  2. 廃棄物の発生を最小限化する事であり、
  3. 持続可能で低炭素かつ資源効率的で競争力のある経済を開発するためのEUの取り組むに不可欠な貢献であり、
  4. EUの経済を転換させ、欧州の新しく持続可能な競争優位を作り出す。

EUにはもともと今後、資源をどのように持続可能に利用していくか、自分たちの経済をどうしていくかに関する危機意識が高いんです。今後、世界の人口が増加する一方で、天然資源が採掘されて利用(消費)される中で天然資源の品質低下や資源価格の高騰ないしは変動性にどのように対処していくべきか、という危機感を持っています。

CEは、EUの資源効率政策をさらに進め、EUの経済を持続可能で競争優位な形に転換していくために必要な政策と位置づけられています。つまり、製品と資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物発生を最小限化することによって、持続可能で低炭素・資源効率的かつ競争力のある経済とするためのEUの取り組みに不可欠な要素とされています。

持続可能・低炭素・経済競争力がキーワードなのでしょうか。

そうですね。先ほどCEと通じた欧州が目指す社会像の特徴を挙げましたが、CEの実現によって、

  • 資源の枯渇と価格変動からビジネスを保護し、
  • 新しいビジネスの機会を創出、生産と消費のより効率的で革新的な方法の創造を支援し、EUの競争力の引き上げることを目指しています。

つまり、CEを通して、資源の枯渇や価格変動から欧州のビジネスを保護し、さらに循環経済への移行を進め、新しいビジネスや雇用を創出して、経済競争力を高めつつ、生産と消費をより効率的で革新的なものにしていくということになります。

ビジネスと消費者がカギと考えられており、一つの市場(The Single Market)に循環経済発展のための正しい規制枠組みを設置するとされています。
欧州の経済政策には「シングルマーケット:一つの市場」という言葉がよく出てきますが、これはEU市場のことをさしていると考えられ、EU加盟国の中でいかに循環経済、資源を回していくか、このことによってEUの経済の競争力・持続可能性どう維持・向上させていくかを考えている、という事を表しています。

EUの競争優位を作り出す、新しいビジネスを創出する、という視点も含まれているんですね。

そうです。
日本の環境施策は発生した課題に対してどのように解決するかというような、どちらかというと傾向がありますが、EUのCE政策には、新しいビジネスを開発しようとするような、目指す社会像を新たに構築すると経済・産業施策に近いものとして位置づけられているように感じます。

■CEの構成

CEは、実現に向けた行動計画(Closing the loop-An EU action plan for the Circular Economy)と廃棄物法制の改正指令案、という2本立ての構成です。
具体的な取り組み分野としては、

  • エコデザインの推進
  • プラスチックなどの化学物質に関する対策
  • 革新的なプロジェクトへ研究開発資金を投入する
  • 目標を持った行動の個別分野
    • プラスチック
    • 食料
    • 廃棄物
    • 建設廃棄物
    • 重要原材料(クリティカルなローマテリアル)
    • 公共調達

などに加えて、肥料と水の再使用という分野も含まれています。

広い分野がカバーされているんですね。

そうです。
さらにイノベーションや投資などの横断的手法も取り入れることや、製品のデザイン・生産から・消費・廃棄・循環というサプライチェーン・バリューチェーンの各ステップで明確にどういう事をしなければいけないかが明示されているところが特徴的だと思います。
EUの循環経済(CE)政策パッケージは、あくまでも「コミュニケーション」という位置づけなので、廃棄物法制の改正指令案以外は拘束力のあるものではありません。

「コミュニケーション」は、法制提案の草案や意見(opinion)・勧告(recommendation)などを含む政策文書(1)です。今回の循環経済政策パッケージの場合は、欧州委員会として「EU経済のあり方を循環経済に移行していきましょう」と将来像を提示した文書という印象です。
その将来像を実現するために、加盟国には、「CEのような政策・アプローチをとってください」と促し、また欧州委員会として将来像実現のための環境を整備に向け各種取組を実施すること(行動計画)を宣言している文書と言えます。

【参考資料】

The European Union: a guide to terminology, procedures and sources - House of Commons Background Paper

加えて、CEに関しては、EUとして「SDGのゴール12」(*)を達成するためには、こういう事をやっていきたいという考えが、背景にあります。
(*)SDGs:持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)

廃棄物法制に関する改正指令案について、具体的に教えていただけますか?

これは各国の廃棄物法制を直接一律に改正するものではないのですが、「指令」ですので、各国には指令に提示された目的を達することが求められます。

改正指令案が採択されると、その指令の目的を達成するために各国の国内法を制定または改正、つまりそのための手段と方法を各国が決めることとなります。改正指令案の具体的な内容は以下のようなものです。

  • 各種廃棄物に関する定義を調整する
  • 市町村の廃棄物の再使用のための準備を進めて、市町村の廃棄物のリサイクル目標を2030年までに65%に増やす
  • 容器包装廃棄物の再使用のための準備を進め、リサイクル目標を増強する
  • 市町村の廃棄物の埋め立て率を2030年までに10%と徐々に制限する
  • 副産物や廃棄物の終了(end-of-waste)に関する法的枠組みの調和と単純化
  • 食品廃棄物の再使用を含む発生抑制の促進のための新たな手段を導入する
  • 拡大生産者責任に関する、最適限の操業条件を導入する
  • リサイクル目標に関する測定遵守のための早期警告システムを導入する
  • 報告義務の単純化・合理化
  • 権限委譲法と実施法におけるTFEU(Treaty on the Functioning of the European Union)290、291条の調整

目標値の設定だけでなく、目標を実現するための環境を整備する、という意思も感じます。再使用という言葉が出てきますが、「リサイクル」とは違うのですか?

違います。欧州廃棄物枠組み指令には、廃棄物ヒエラルキーという廃棄物(使用済み製品)の管理・処理の優先順位が定められていますが、そこで、reuse とrecycleは異なるものとして扱われています。

以下のEUによる図に示したとおり、発生抑制(prevention)が優先順位第1位にきますが、再使用はその中の一部です。上記指令に示された定義を見ますと、『「再使用」は、廃棄物でない製品や部品や当初想定された目的と同じ目的でもう一度使用されること』です。
リサイクルは、製品や材料・物質に、廃棄物質が当初の目的もしくは別の目的で再加工されること(ただし、燃料・エネルギーへの再加工は含まない)とされています。

ちなみに、再使用のための準備‘preparing for re-use’というのもありますが、これは、リサイクルよりも優先される取組みであり、定義は、廃棄物となった製品や部品が、特に前処理なしで再使用されるよう確認・洗浄・修理することとなっています。


出典:欧州委員会ホームページ「廃棄物に関する指令2008/98 / EC(廃棄物枠組み指令)」

市町村の廃棄物とは、日本の一般廃棄物、と同じと考えてもいいのでしょうか?

簡単なようで難しいご質問です。各国によって市町村の廃棄物の定義の細部は変わってきますが、市町村の廃棄物はmunicipal wasteといい、主に家庭・商業施設・オフィス・公共施設などからでは廃棄物で、自治体・ないしは自治体にかわって民間セクターがあつめた廃棄物のことを指します。これだけをみると日本の一般廃棄物とほぼ同義です。

しかし、欧州では、「廃棄物」は所有者が廃棄した・または廃棄するつもり、あるいは廃棄を求められた物質やモノのことをいいます。日本における「廃棄物」とは、Dowaエコジャーナルさんにおいても解説(2)されているとおり、所有者が、不要で、かつ、値段がつかず、引き取りにお金がかかる物質やモノことをさしますので、欧州の廃棄物のうち、日本の廃棄物には当たらないものが出てくるといえます。
つまり「廃棄物」の定義そのものが異なると言えます。

【参考記事】

法規と条例:「廃棄物とは何か」について


ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回からは、CEの具体的な内容について教えていただきます。


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